合魂‼
阿弥陀乃トンマージ
第1章
第0話 どうしてこうなった
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ある春の日の夕暮れ。一人の少年がとある学校の体育館倉庫に身を隠している。
「はあ、はあ……んだよ、全然わけわかんねえっての……」
短すぎず、長すぎない無造作ヘアーをさらにボサボサと搔きむしりながら、体育座りをした眼鏡の少年はうなだれる。
「そもそもどうしてこうなったんだっけ……?」
少年は自らに問いかけるように呟く。4月だというのに汗がどっと噴き出す。
「ああ、そうだ、ああいうふざけた噂、いや、都市伝説の類か? とにかくそんなくだらないものにまんまと釣られちまって……!」
物音がしたため、少年は体をすくめる。おろしたての高校の制服ももうしわくちゃだ。しかしそんなことを今、この眼鏡の少年は気にしてはいられない。少年は声を抑えて呟く。
「何故釣られた俺? 答えは簡単だ。高校で彼女を作り、充実したハイスクールライフをめいっぱい送りたかったんだ……」
少年はズレた眼鏡を直し、少し落ち着きが出てきたのか、自嘲気味に振り返る。
「……ある意味あの都市伝説は本当だった……のか? この馬鹿デカい学園都市の高等部には『合コン』を容認するという先進的な風潮があると……」
少年は声のトーンをさらに抑えながら、振り返りを続ける。
「確かにあの時、午後の部活説明会で、紅髪美人の女性はそのようなことを口走っていた。正直あまりに電波な内容の話で美人の補正がかかってもなかなか厳しいものがあったな……周囲の連中はあっけにとられるか、苦笑するかの二択だった……俺もそうするつもりだったが、気が付いたら説明会会場まで足を運んできてしまった……現状把握終了」
いくらか落ち着きを取り戻したが、どうやら謎解きゲームの類いでもない。これでゲームクリアもしくはゲームからの解放ということはなさそうであることを少年は理解する。少年は再びうなだれて呟く。
「大体……『合コン部』ってなんだよ……? なんで集合場所が午後5時過ぎの人気のない体育館? 駅前のカラオケ館に午後6時集合とかの間違いじゃないのかよ? ――⁉」
次の瞬間、体育館倉庫の壁が粉々に砕かれる。あまりの衝撃に少年は愕然とするしかなかった。壊れた壁の先には、ゴリラもとい、筋骨隆々な女子生徒らしき人物が棒のようなものを持って立っている。少年はかろうじて見覚えのある制服姿によって、壁を破壊した人物がこの女子生徒だということをなんとか認識する。しかし、認識したからといって、事態は分からない。少年は間の抜けた声を発することしか出来なかった。
「あ……あ……」
女子生徒は綺麗な歯並びを見せつけるかのようにニカッと笑い、意外と可愛い声で告ぐ。
「さあ、そんな所に隠れてないで『合コン』の続きをしようよ?」
「ええっ⁉ ……俺の思っていた合コンと違う!」
少年は女子に雁首を掴まれ、引きずり出されながら心の底からどうにか声を絞り出した。
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