第39話 



*赤に溶ける為に*



「獣人の弔い方が羨ましい」

 と、フローゼがぽつり。


 随分前にちょうど魔の森を抜け、今、その一帯を見渡せる丘に竜を休ませて二人も座って景色を眺めていた。

 その帰り際。


 アナスタシアがそちらに顔を向けた。


––––獣人の村に行った時たまたまだが彼らの葬式を目にしたんだ

 多分人とは違うだろうし

 そりゃ、そうなるよな


 と、思いながら続きを待つ。少し言いにくそうに、「天人はどうなるのでしょう?」


「知らないのか?」

と、アナスタシアが、質問を質問で返す。


「ええ…

 実は水の席の方はもう何千年も就いてますし、

 いつの間にか居なくなっている方もいらっしゃるのです」


 と、フローゼが

「??」となっているアナスタシアに、

 

 魔法を魔石無しで使えるフローゼや、天人たち。それを制したり、世界の魔石管理の為、魔法基礎四元素にちなんだ四聖剣が選出されていた。

 イザベラはその知識や海で渡り歩いて人望もまあまあある事と人たらしな性格により抜擢。

 その風の席に。



「エリザ…

 イザベラが体内の魔石を除去できる薬を開発したらしい」


「血の魔法…でしたか?」


「ああ、知らなかったみたいだ

他の獣人たちも自分の得意な魔法、使えない魔法…

それがわかるのは個人差あるらしいが


エリザは俺よりわかったのが遅かっただけだ」


「ある意味、よかったのでは?」


「まあ、そうだな

あいつも好きな旅ができてよかっただろ」と、アナスタシアが嬉しそうにする。


「不幸中の幸いというやつですね」

と、彼女も微笑んだ。





 話が終わり黒い竜に乗る。

 しばらく飛んでいると、

「ああ、あそこが…」とフローゼ。


 陽に照らされて輝くクリスタルの木々の向こう。

 青い炎が燃え盛り、こちらも緑の草木は失せ、痩せた地しかなくなった。

 人々の呼称は炎狼山脈––––昔の人と獣人の古戦場。

 もう何千何万年くらいらしいが、火は絶えず燃え盛っていた。


 時折見る同じ青の炎を纏った狼がいるらしい。

 そのため、そのような名の山だという。


「まるで、そういう戦いがあったということを忘れないでと、言って下さっているみたいで

だから私、考古学者や獣人や魔物たちとも関わっているのです」

 と、少し寂しそうにする。


「だから

 アナスタシア様やイザベラ様が人じゃ無いと知り

 その方たちが教会に入って…って」

 と、フローゼが嬉しそうに少し目を輝かせてアナスタシアを見てから、


「何か変わるのではないかとずっと考えてました

父もそうです」


「変わるだろ」と特に確信も無くアナスタシアが呟く。


「どうか」

と、フローゼが未来を願いながら彼らは橙の光に溶けていった。

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