第14話
「シェン、ではまた」
否定の言葉も発さずアナスタシアは、
周辺の島々に用があるから。
この島は大昔から蓄積された火山岩から成り立っている。穴から噴き出る熱波と黒煙を交わしていく。そうして目的の島の一つに降り立った。
島々には今までいた竜たちの祠が幾つもある。先に火竜から場所は聞いていたので足許が危ういこと以外は難はない。
別の島はまだ存命の竜の社があるらしい。竜信仰のある者たちはそこに詣りに行くという。祠……耳障りは良いが、要は竜の墓場。
しかし火竜の本拠地が火山なためか鬱蒼とはしていない。
「まあまあいいところだな」
赤い紅葉も火山から降る灰もなく綺麗な石畳の所にぽつぽつと建てられていた。
整えられているのは火竜のところの管轄で管理しているのだろう。
その目的の祠に立った。
ちょうどここから火竜の殿も人が住んでいる島も見渡せていい眺めの場所だった。
ここにアナスタシアが訪れたのは初めてだった。
しかし邪竜を食らったせいで記憶が受け継がれていてアナスタシアの中ではよく見た光景だった。
――また来てしまったというべきか?
この祠の竜は記憶の通りには出てきてはくれないんだな。
残念がっていると「どうだ?」と声がかかった。
その声の主を見ると先ほど会ったばかりの火竜がいた。
「会えたか?」
そう聞いてくる竜。あった時とは服装も違い、汚れてもよい簡素な着物だった。
竹ぼうきを持っているので彼の配下が掃除しているわけでないのか。
自分と同じ竜という種族をこの竜なりに敬意と愛情があるんだろうなと思いながら首を振る。もしかしたらこの祠の主はいつものように別のものに転生しているかもしれないからだ。
「仕方ない。狙って会えるものでもないであろうからな」
「蝶や鳥などさまざまな生物に成り代わっていたので、また気長に待ちます」
「いつでも待っておるぞ」
邪竜を取り込んでから安定してきたので最近はほぼ毎日のようにアナスタシアはここに来ていた。この調子じゃあここに住めばいいと言い出しそうな火竜。
シェンのようにちゃんと会いたいと思ったが既に近くにいるのではと思っていた。今日は教わった通り、手を合わせてその祠を後にした。竜と会えることと弟がまだ生きていることも願って。
自分たちの支配から解放してやったら人間もまた昔のように共存、契約をしてくれるのではという竜たちの願いを聞く前に弟の顔を見てからと思った。
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