第29話
どっか行く、二人で。
「ぼくの夢で見たところいこ!」
そう言って、滅んだという土地を巡り始めた。どちらも飛んでいく。地面が玻璃色に輝く場。「雨の上がった夜とかが綺麗なんだって」とイザベラが言う。更に本の中の情報も踏まえて伝えていく。
「ここは元々獣人と人間が共存してたところだったんだって。でも、周りが紛争し始めたりちょっとした格差とかでいざこざが起こってここにいた玻璃の竜じゃなくって別の竜と契約者が滅ぼしたみたいだよ。……これはぼくの夢だけど。
歴史書では疫病が蔓延したから滅亡しちゃったって書いてあったよ」
「フーン、夢で見たのか」
「綺麗だから、たまに小説の舞台になったりしてるって書いてあったよ。映画とかもあるみたいだけど、ぼくは見たことないんだよね……」
「小説今度貸してくれ。たまに寝込んだ時にちょうどいい」
「わかった! あ、ぼく読み聞かせしようか?」
「それはいい」
ふざけながらそこを歩く。元王宮だった辺りは盗賊が住み着いていた。前に騎士団の任務で来たところだ。
「でも、転生とか前世とかなら面白いし、ナーシャとなら嬉しいなぁ。そうだそういう夢みたんだった」
「そうなのか」
「まあ夢の中身は忘れちゃったけど……」
「そうだと思って聞かなかったんだが本当に忘れたのか」
「うーーん」
忘れてなさそうな表情で言うイザベラ。それを察知して言い詰めてみるが言ってくれなかったのでアナスタシアはそれ以上詮索をやめた。言えないことなら自分もあるからだ。それと困ったり慌てたりにやけたりと表情をころころ変える弟が面白くて弄ったのもある。
仕切り直して、その町を歩きだす。
イザベラの任務の後、土地改革のようなものがあったようで簡易な建物や建造途中のものが数多く見て取れた。綺麗な地面に合う建物が建てられるらしい。また、完成イメージを見たイザベラによるとガラス張りが多いらしく完成が楽しみだとイザベラが兄の横で喋る。
「……すぐそこの国でも任務したんだけど……。あれはちょっと怖かったなあ。だって獣人を実験台にしてたんだよ? なんとか者って名乗ってた元騎士団の者たちって言ってたけど、お姉さんがいなかったら絶対できなかったなあ。でもそこの周りも重力無視した建物ばっかりで楽しかったんだよね」
陽が傾きかけてきても、ボロボロの城壁付近に腰かけて腰かけてずっと喋るイザベラ。
「よく喋るようになったな」
「だってあまり会えなかったし……昔冒険したいってことが意外と叶ったから共有したいんだよ」
「じゃあもっと話してもらわなきゃな」
「分かった! じゃあ夢の話なんだけど、ナーシャがよく変身する竜ーーによく会うんだ。でもナーシャじゃないみたいだった。ぼくが海に落ちたきっかけの竜なはずなのに憎めなくて……それに楽しく冒険できたからいいかなって」
「それが言いづらかった夢の話か?」
「うん。悲しそうにしていたし。撫でてあげたら朝目覚めてたってことが多いかな」
「俺は悲しくないからな?」
頭にはてなを掲げた弟を無視して他の話を促した。その夢の中の竜が自分かもしれないから。
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