第9話
貰った羽衣で海底を飛ぶ。
周りに揺蕩う透明な
星々の様に煌めきイザベラの周りを浮上していく。
流石のイザベラも海中で呼吸する事はできないので、酸素はポシェット型のボンベから供給。そこからチューブで繋がっている呼吸器で賄っていた。それに「その辺の泡じゃ駄目なの?」「イザベラは大丈夫なのに……」と不便さをポツポツ呟く。人魚から貰った魔道具である羽衣がヒレの役割をしており優雅に揺蕩う。
そして振り向きその光景に不機嫌が吹っ飛んだようで、目が煌めき今度は感嘆の息を漏らす。
「……わぁ」
時折振り向き泡の中の、街並みを眺める。
不満も感嘆も素直に吐き出していく。
そして自分から出た泡を覆って上に行かないようにして遊び、たまに並走する小魚と戯れながらイザベラが後ろからついていく。
人魚は透明な呼吸器の中口々に漏らす彼の言葉がまるで言葉覚えたての赤子のようで微笑む。「ほら、早く」と水泡で遊ぶイザベラを急かす。
「これ……見たことある」
「ん?」
「こうして、泳いだこともある」
「ぇ……? でも」
あなたは空から落ちてきたから泳いだ事はない筈、そんな言葉を話そうとしたが人魚は飲み込んだ。空は飛んだ事はないがもしかしたら同じなのではないかと考えたから。
海底の国々はあまり開けてはいないが、この海底都市のみ日にちを決めて外部――陸の者達との交流をしていた。
陸の者達が泡の中に入り、ここまで下がってくる仕組みになっており、彼らが過ごせる様に泡で包まれた場が作られていた。大抵獣人が多く、次にどこから噂を聞いたのか冒険者の船などが停留する。
彼らをこっそり見るために。あわよくば今日にでも一緒に上に上げれてもらおうと期待してここに来ていた。
また、イザベラをとりあえず海中から復帰させたいという気持ちもあった、あの空中都市まで行けなくとも海中にいるよりは機会に恵まれるのではと人魚は思っていた。
案の定隣のイザベラは彼らに興味を示したようで「あれは? 何?」とキラリと光る瞳。それを見てにこりとほほ笑んで「あれは海上から来た船よ。たまにこうして陸上にいる獣人とか人間とかと交流しているのよ」と手を引いて案内する。
船が多く停留する泡に訪れる。そして「えい」とイザベラを押してその泡の中へ入らせる。
「わ……わあ……!」
船が止まっている付近では、物物交換をしていた。水陸いける魚人たちが主に対応しており、それ以外の者は海中から楽しんでいた。時に一緒に酒を嗜んだり、人間側も海中を見れるレストランや小さな宿泊施設に興奮していた。イザベラも隣で並走して泳ぐ人魚と一緒に歩き楽しんでいた。
「どう? 海上気になる?」
「うん……いつか行かなきゃでしょ? いっぱい冒険したいな」といつか言葉の勉強をするために呼んだ冒険譚が余程気にいったのか意外と前向きな返事をする。
「珍しいな。人魚が構うなんて」と銀の髪を後ろで束ねたいかつい男が近寄り喋りかけてきた。「おちょくるつもりはないが気になったのでな」と弁解する。
人魚は警戒したが、見たところギルドの人間の様で敢えて説明はせずに「迷子になっていたので、ギルドの人でしょう? 良かったら連れて行ってくれません?」と伝え、「え!? え」とイザベラが慌てる内に「この子よろしくお願いしますね」といって別れが寂しいこともあり波が逃げるように泳いでいった。
ぽかんとしているイザベラに「とりあえず行くか? 迷子だろ」と伝える。イザベラは淋しさ半分冒険できるかもと言う期待半分で男についていった。
一度だけ振り返り、「またね」と
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