第48話


 今は夜明けだろうか?

 それとも陽が沈みかけているのだろうか


 ふと我に返ったアナスタシアは時間間隔がわからないくらい戦闘していた。

 ここは教会本部。

 昔弟が戴冠式で来たことがある。

 後ろを見ると誰もおらず代わりに恐らく敵であろう聖騎士たちの血ともしかしたら自分のであろう血溜まりが出来上がっていた。

 ――やけに静かなのはそのためか。

 ふと真鍮に映った自分の姿、背中が翼のように結晶化していた。いつの間にか左腕もないようだ。こちらも傷口は結晶化していて、それが止血してくれた形になっている。

 ――もう少しだ。

 アナスタシアは自らを奮い立たせた。 

 夕暮れか夜明けかはわからないが片割れの瞳を見ている様。

 その空で飛び交う竜たちが見えた。

 生きて欲しい反面、次世代に託そうと言う彼らに申し訳立たない。

 貰った蒼色の宝石に触れる。

 聖王はこの扉の先。

 うまく立ち回らないとな。その前に立ちはだかる血で剣を作り手前の扉を守る騎士が数人。

 

「覚悟!!」と言ってきたその一人を倒す。

 数名は倒す前にアナスタシアの血の瘴気に当てられ血を吐いて倒れていた。


 彼らが守っていたその大きい扉を開ける。

 無駄にクリスタルが散りばめられていた。

 無色の輝きがない。使用済みの魔石。

 趣味が悪いと思いながら周りを見渡す。

 その空間には中央に赤のカーペットが敷かれ、大きな柱が均一に立っている。


 その奥に王座があった。

 壁はなく吹き曝し。

 空でも空中戦をしていて何度か閃光が見えた。恐らく竜に魔道砲を打っているようだった。

 それももう数基だけ…

 あとは竜たちに任せよう

 そう思い、アナスタシアは目の前の人間たちに目を向けた。彼の容姿と鬼気迫る様子に少し引いたのか後ずさり、王冠を付けたものはとうとう王座を盾のようにして構え、その前に騎士がいた。眺めていると二柱の片割れが攻撃をしかけてきた。

 「竜よ、覚悟せよ」

 その声と同時に、アナスタシアを土壁が覆う。

 土で壁を作り、火で炙る。

 炉のような感じか…

 てっきり近距離来るかと思ったとぼんやり考えていると、やはり土から熱を発し始めたので血で大剣を作り壊しにかかる。

 ――趣味の邪魔にしかならなかった邪竜の特性腐食がここで役に立つのか……

 と、土はドロドロと水のように溶けていった。その穴から出たあたりで慌てて壁を作り、また箱に閉じ込められ、穴を開けて…の繰り返しをしていた。

 「――……っ!!まだ!!まだよ」

 「はあああ!! 土よ隆起せよ」

 指示の声が聞こえてくるがアナスタシアはそれより早く土から出ようとするが、

 土壁を作るスピードが速くアナスタシアも中々彼らとの距離を詰められない。

 アナスタシアが血による魔法を使用するため、長期戦に持ち込んで自滅を狙っているのだろう。

 「また壁か」

 「――……っっ!!」

 アナスタシアは滴り落ち血を操って矢のように飛ばした。しかしそれは届かず、代わりに相手の土の矢と炎が迫ってきていた。

 これで終わりか……。

 深紅の爆発がおこり、視界は血汐となった。

 騎士団側の二人は防壁を施し生き延びた。

 アナスタシアが立っていた場所にはその中でも目立つ薔薇の茎のような棘。彼岸花のようにも薔薇のようにも見える形をした花弁。しかし、色は付いておらず、まるでそこだけガラスで作った様。そこ以外は全体が真っ赤な変わった花。

 そんな美しい赤い花があるだけだった。

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