第36話
*次元の彼方*
あああ、
ミスった……
冷たい牢屋の床にぺたり。
アナスタシアが自分の手錠を見やりため息をつく。
見渡せるかぎり見てみると獣人や魔物、人間までいた。それぞれ身なりが粗末なものでアナスタシアも腰布だけになっていた。
そして皆、柵の中。
―――これは…
多分俺も商品かあ
と、肩を落とす。竜族の作ったカクテル、ワインを商品として出そうと町に赴いていた。
普段は付き人か飛んで帰っていた。
その日酒を飲んだため、気分が良く歩いて帰った。それに帝国の中だからと、警戒もしていない。
―――ああああ‼
と、今更ながら後悔していた。
先ほどから奴隷市場の事務所の辺りから「いい物が手に入った」だの「竜か?それとも鬼人か?…大丈夫か?バチ当たらんか」「鬼人共なら分かるだろ……こりゃ竜人だろ!」など聞こえてきた。
余程興奮しているのだろう。
ここまで聞こえるくらいには大声だった。
俺のことか?と、腹を括る。
購入者が
変態じゃないように…
と、変に祈っていた。
やる事も無いので、仕方なくアナスタシアは寝ようとしていた。すると、
『あれれ?出る気ないのかな?』と、『身売り?竜王様が?』という声が聞こえてきた。
振り向いても檻の灰色しかない。
そもそも商人達の言う特別品のアナスタシアの周りには空の檻しか置かれていなかった。
『…ここだよ』
「そう言われてもな…」と、周りには何もないとわかっていても
多分竜王とか言っていたし、竜なのは確か……
もしかしたらめちゃくちゃ小さい竜なのか
と目を凝らして見る。
しかし、見えるのは空からの檻ばかり。
あとは草と土だけ。
『僕、シュレディンガー
どこにでもいてどこにもいない竜だよ
かっこいいでしょ?
この言い方』
と、その竜が。
「じゃあ、透明とか?それとも噂に聞く概念とか言う竜か」と、アナスタシアが、
–––どこにいる
とキョロキョロしながら聞く。
『そう、空間を司る竜だよ
だから竜王様、助けてあげるよ?
えっと……変態さんに買われたいならほっとくよ』
と、シュレディンガー。
「どうやってこっから逃げるんだ」と、聞く前に穴を開ける。「??」と、していると、
「ほら、君の天使族の空中都市まで繋がってる」と、囁く。
ドアを開ける音が聞こえ、「監視いない⁉︎さっさと行け!」と、そのあとにガヤガヤと声が聞こえてきた。
——行こう
と、穴を潜り抜けていく。彼の言った通りの場所なのか、少し不安を覚えながら。
***
「ありがとう助かる」と、ちゃんと着いた事と逃げられた事に安心しながらアナスタシア。
子供と話しているみたいで、
敬語外してしまったな……
と、思いながら感謝を言う。
潜り抜けたらまた、気配が待っていた。
それを察してか、
「まあ、気にしなくていいよ
フランクにいこ
あ、ぼくらも参加するから
あの火の墓守さんが頑張ってくれるから後は大丈夫でしょ!
あ、何もできないと思ったでしょ
戦争のサポート、ちゃんとするからね」
「そこは気にしないで」と虹竜。「じゃあ、またね」
と、気配が消えた。その前に、
「あ、」と、聞きたい事があったアナスタシアがひき止めようとした。
「遅かった……」と、もう日が沈みきった空を見上げた。
——『次元』の竜がいるならこれから起こることが分かる
『予知』か『未来』か見てくれるやつに会えるか聞いてみたかったが……
「仕方ない」と、一人呟き、
–––昏くなる空を照らすのは自分
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