第25話
*夕焼けに桜舞う*
鬼人たちを迫害や未だにオーガという種族として、ギルド依頼を出している地域があった。だから彼らを避難するため、たまたま無人島であったこの島ーーー桜島が役に立っていた。
その空に見える竜と見えないが近くを飛んでいるだろう兄アナスタシアをイザベラは地上から見ていた。
…この人達を診察したら、ナーシャたちと一緒にぼくも飛んでみようかな
元々の目的は鬼人達を診察するためにイザベラはここに来ていた。
アナスタシアは「せっかくだから……」とついてきた。イザベラは飛んでいる一体と一人を羨ましそうに眺めてから、また診察に戻った。
「うむ、たまには空を飛ぶのも悪くない」
「ふ、そうでしょう」
そう会話しながら、その島の上空を飛ぶアナスタシアと、桜の花びらを散らしながら飛ぶ竜。この島は他の外敵からこの竜――桜竜によってバリアが張られて守られている。
普段は地に根を這っているが、時たまこうして空を飛んでいるようだ。
ほぼ見た目が桜の木のせいか、アナスタシアも「飛べるのか?」と、訝しんだが、枝と枝とに膜を張っているようで、また一部土に埋もれているせいか豪快に飛んでいった。花びらを舞う姿はやはり絶景で、その時はアナスタシアも感嘆の声をあげた。
ここは空。誰もいないのが都合良い……と、アナスタシアは思い「今ヤバい鬼人は?」と聞く。
「いるぞ。見てほしい……頼む」と、一言。
「見るに絶えず、皆も、世話が辛い様でな。
もう己が何であったかもわからないようだから…」と、竜が続けた。
「構わん。供養してやる。俺は忘れないでいてやろう」と、アナスタシアが腕を組みながら下の島を見る。
その様にふうと息を吐き、
「……我の花びらの散る様、儚く美しいという者もいるが、人のそれも中々美しいな…
いやいや話題を変えよう」
と、竜が思い、口を開く。
「暗い話はやめだ。
……そうだな。ああ、そうそう他の竜たちとも会っているのだろう?
我はこう見えて若い方なのだ。だから、君が聞きたい邪竜とやらもすまないが認知してないのだ…
……良かったら、変わりに教えてくれ」
「………若いのですか」
「ああ。君たちと同じくらいなはずだ。だから敬語なぞ。……いらんよ」
「そ……そう、か」
「そう見えぬとはレディーに失礼ではないかな? アナスタシア」
「うう………、すまん」とたじたじになってきたアナスタシア。
「ふふ、」と、桜竜が笑うと同じくらいに、「にーーーーーさーーん!!」と、下から声がした。
アナスタシアと桜竜がそちらを向くと、イザベラが飛んできているのが見えた。診察終わってからくるということは聞いていた。
終わったのかやけに早かったなと、アナスタシアは思った。
イザベラは羽を失ったが、形を変えられる羽衣をある人魚から貰っていた。今もそれを使って翼に変化させて飛んでいた。
自分の体から生えているものではない事、腰に巻いているせいか腰だけが先に上がり前屈状態になっている。
その少し間抜けな姿に竜とアナスタシアは目を合わせてくすりと笑った。
「エリザ、お疲れだったな。
ただその体制どうにかならないのか? ……笑うぞ」
「診察今日そこまでいなかったから。ひどいな…ナーシャ
笑わないでよー」と、むくれる。
「っ……ふふ…
行く前に自慢げにこれで飛ぶもん!!とかいってたじゃないか。てっきりうまく使えると思ってたからな」
「笑わないでよ」
「ふ…っははは
そんな体制で言わないでくれ…っ」
「もーーーー、ナーシャ!
……
………でもすごいね、花びら」
「……っ…あ、ああ、今度酒持って、お花見でもしに来よう」と、花びらを掴む。
「え………!
かっこいい…花びら掴めるの? ナーシャ」
「は? エリザ、おまえ掴めないのか?」と、ドヤりながらまた掴んでみる。
「掴めるもん!! ……ぁ」
と、イザベラが、掴もうとするも空振りに終わる。
「ふふっ、下手くそ」
桜の竜は二人がきゃっきゃ戯れ合うのを眺めながら、
――あのイザベラが我を拾った子かな……しかし、なんの因果か我を拾った子たちとまた会えるとは……
と、思っていた。
そして「そういう出会いも、中々乙なものだな」と、人知れず呟いた。
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