第33話
*円環の彼方*
海中旅行から海岸沿いの白い家に帰ってから船酔いのようになって寝込み中のアナスタシア。
特に何の症状もないイザベラを
――そういえばこいつしばらく海生活だったっけ…?
と納得。
それから潮騒。
たまに鳥の鳴く声と、イザベラが本を
アナスタシアは竜の襲撃があった前後はイザベラを喪ったと思っていた事と竜の力を取り込んだということもあって記憶が曖昧。
そこで休憩しているイザベラに声をかけた。
「エリザ。
竜のこと覚えてるか?」
「え?」と、丸机に教科書や資料の間からイザベラが反応。
「急にびっくりだけど…
ナーシャの方が覚えてるんじゃない?」
「うーーーん」
***
傷から血剣を取って、尻尾の攻撃を受け流して、今度はアナスタシアが抗戦して――…
その繰り返しの戦いであった。
しかし軍配は竜のほう。
既にアナスタシアの方が息切れしていた。
黒い竜とアナスタシアが空中戦になっても、
攻撃方法もないエリザベートはそこに座ってみているしかなかった。
――歯痒い
一緒に戦える何かあったら…!
と、漸く足腰のふわふわ感がなくなってきたので、家を探す。
とりあえず、農作業の桑や料理包丁を担いで外に出る。
「にいさん…!」
大声で言ったつもりが、不安と恐怖で声が裏返る。
エリザベートは急ぎ飛んでそこまで行った。
時折来る黒い竜の咆哮を避ける。
なんで周りの竜は来ないんだ?
むしろあの竜の犠牲になってたような
と、必死ではあるが冷静に周りの竜が未だに襲ってこないことを訝しむ。
「にいさーーーん!!」
とエリザベートが今日何度目かの兄を呼びながら、武器を竜に向けて投げる。
その声に両者が反応。
こちらから狩れば良い
と、竜が解釈したのか。竜の方がそちらに攻撃を仕掛ける。
アナスタシアの方は疲労。
そして尻尾の攻撃の為、一歩遅れてしまう。
「――…っぅぐ‼︎」
と吹き飛ばされる。
次に目を開けた時には血を滴らせながら堕ちていく弟らしき姿があった
***
––––そういえばそうだった
ブチギレてから後は覚えてないな
と、アナスタシアが思い出すと同時に、
「そういうのやめてくれ
心臓に悪すぎる」とアナスタシアが怒る。
「だって~」とイザベラが反発。
「なんかしないとって思うじゃん
力ない分さー
ナーシャもぼくみたいな状況だったら
きっとそう思うって!
それに意外と痛くなかったって言うか」
ね?と、同意を促す。
「ね?じゃない。かわい子ぶるなよ」と共に頭を叩く。続けて、
「痛くないって死にかけてるじゃないか…
たまたま、がなかったら死んでたぞ」
「えへへ、まあまあ」と、叩かれた所を撫でる。
––––そういえばあれは、竜は俺と対峙した時
何と言っていたっけ
と、「で、思い出せた?」とまた本たちに向かいながら聞くイザベラに「ああ」と相槌を打ってから、「そうだ」と一人呟く。
––––「ここは我が物…」知性のないと思っていた竜が口を開いた。
「今からここを支配する
我が名は――――……」
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