第12話 カノジョが水着にきがえたら(2)
「お腹空いてきちゃったね」
「メシにすっか!」
テントに戻って、おふくろが作ってくれたサンドイッチを頬張る。
「お母さんが作るサンドイッチ、美味しい」
「そうだな」
「思い出すなぁ。パパとママ、あとグランマとピクニックに行ったこと」
「グランマ……あ、おばあちゃんのことか」
「うん。グランマが作ってくれたサンドイッチ、すごくおいしかった!」
スコットランドからの移民二世だそうで。
料理を作るのが得意だったらしい。
「パパとママは来月日本に来るけど、グランマは来られないから」
「そっか……早く、会いに行けるといいな」
サンドイッチを食べおわってから。
海岸近くの駐車場で、かき氷を売っているキッチンカーがあると知った。
「かき氷、買ってくるよ。何がいい?」
SNSに上げてるメニューをみて、
「この、いちごフローズンってのが、なんかおいしそう」
「じゃ、それ買ってくるから。留守番頼んだわ」
「いってらっしゃーい!」
かわいいカノジョに見送られ、ビーチサンダルでかき氷を買いに行く。
「いちごフローズンと、このマンゴーかき氷ってやつくださーい!」
「あいよー!」
気立てのいい兄ちゃんが、かき氷を二つ作ってくれた。
いちごのソースと、マンゴーのソースをそれぞれかけてもらって。
できたてのスイーツを、テントに持って帰ってみると。
「ねーねー、俺たちと遊ぼうよー」
「や、やめてくださいッ」
例によって、カノジョにどこぞの悪い虫どもが絡んでた。
「あのー、俺のカノジョになんか用っすか?」
「あん? コイツ、どうみても中坊じゃね?」
「ガキのくせに高校生と付き合ってんの? ナマイキーw」
ゲラゲラ笑ってやんの。
頭のねじのゆるい連中だなぁ。
「はい、かき氷買ってきたから。ちょっと持ってて」
かき氷を二つ、
アホの四人組にガン飛ばしてやった。
「あぁん? コイツ、ケンカ売ろうってか」
「人のカノジョに手を出さねーなら、なんもしねーっすよ。帰ってください」
「
ひとりが張り上げた手をたやすく振り払った。
「コイツ……生意気なんだよッ」
「あぁん!? ヤンのかゴラァ!」
腹の底から声を出して、凄む。
考えなしに殴りかかってきたヤツの足に、ローキック一発。
「い、いってぇぇぇぇ!!!」
打たれた足を抱えてもんどりうっている。そりゃそうだ。
昔からビール瓶を蹴って、威力を高めてきたんだからな。
これでも手加減してる。本気でやれば骨折っちまうから。
大山館長やフィリォに比べりゃ、足元にも及ばねえけど。
「あー、ごめんなさい。つい癖で足が出ちゃいました」
ぜんぜん嘘だけどなー。
真っ青になった三人が、泣きそうな顔してるヤツを引きずっていく。
「お、覚えてろよぉ……ッ!!!」
(おとといきやがれ馬鹿野郎)
はぁ、かき氷が
後ろを振り向く。
「またこわい思いさせちまった。ごめんな」
「……うん、大丈夫。これ、早く食べよッ」
頭がキーンと痛くならなかったのはいいけれど。
薄まってしまった。せっかくの甘いシロップが。
***
それからしばらくして、少し風が強まり始めた。
俺はテントを畳んで、撤収作業を始めた。
どこか心残りがあるみたいな、カノジョの横顔。
近くの銭湯で身体を洗い、帰途についた。
赤い電車と地下鉄を乗り継いで、地元に帰ったのは夕方。
「お疲れッ」
「うん、ありがとう」
なんだろう。ずっと可奈の様子が変だ。
「うちで麦茶飲んでいって」
「いいよ。
帰ろうとして、手を握られる。
「……かえっちゃ、やだ……」
きれいすぎる瞳で訴えられて、俺は何も言えなかった。
居間に通されて、麦茶と茶菓子を振舞われる。
「ちょっと、着替えてくるから」
部屋着のほうがラクだもんな。
麦茶をゴクゴク飲んで待っていると、足音が階段を下りてくる。
「……お待たせ」
「ブッ――ッ!!!」
今度こそ、盛大に麦茶を吹きそうになった。
「な、な、な、な……なんでそんなカッコしてるんだよ!」
「だって……
てっきり、
恥ずかしそうに、黄色ビキニを身につけていたんだから。
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