第22話 お風呂場でイチャイチャ(1)

「いいよ、青葉あおばくん」


 お風呂場から声がかかる。

 俺はそそくさと服を脱ぎ、カゴに放り込んだ。


「……お邪魔しまーす」


 浴室に入ると、髪を結い上げ、背中を見せる可奈の姿が映った。


「背中、洗ってくれる?」

「うん」


 ボディーソープを塗りたくって、ゴシゴシ。

 痛くない程度に優しく、背中を垢すりでこすった。

 丸みのある肩も、生え際が金色に光ったうなじも。

 そのうちに、甘ったるい吐息が聞こえた。

 シャワーで泡をきれいに洗い流したら、ターン・エンド。


「じゃ、俺もお願い」

「うん、いいよ」


 回れ右したら、今度は可奈が俺の背中を洗ってくれる。

 使った垢すりを一回きれいにして、ボディーソープを塗る。


「青葉くんのカラダ、ゴツゴツしてる」

「そりゃあ、鍛えてるから。いちおう」


 ただ、最近は勉強に時間割くのが増えたので、以前ほど筋トレしなくなった。


「どんなトレーニングしたら、こうなるの?」

「腕立て伏せ百回。上体起こし百回。スクワット百回」

「……」

「そしてランニング十キロ。これを毎日やる!!!」

「そんなの絶対無理だからっ」


 まあ、勉強しながらじゃ無理だよな。


「勉強時間確保しないといけなくなったから、半分に減らした」

「それでも……半分続けてるんだ」


 背中の向こう側、可奈かながクスクス笑ってた。


可奈かな……さ」

「……なに?」

「そろそろ、アレ……やってくれない?」


 カノジョが絶句する。

 むちゃくちゃ恥ずかしい顔をしてるはず。

 無理もないだろうけど。


「……青葉あおばくん、勉強頑張ってくれたから。ご褒美で」

「おっしゃ!」


 可奈が胸にタオルを巻く。

 ボディーソープのポンプを押す音が一回、二回、三回。

 ため息の後に、俺の背中にタオルが当たった。


「おおっ!!」

「こんなコト、何が気持ちいいんだか」

「これが気持ちよくねー男なんか、いるわけねーだろォ!」

青葉あおばくん、ホントバカだよね」

「バカでけっこう!」


 ぎこちなくも一所懸命洗ってくれる。

 泡立てたタオルがむずかゆい刺激だった。

 そして、そうやってるうちに可奈かなにも変化が。


「吐息が甘ったるくなってきた」

「うるさいからだまって」

「はーい」


 口が嫌だと言っても、体は正直なものだ。

 どっかの国の大使館だかなんだか忘れたけど。

 そんなツイートをしてプチ祭りになってたな。


「ねぇ、いつまで続ければいい」

「いつまで続けたい?」

「ちょっと、疲れてきちゃった」

「んじゃ、このへんで」


 可奈かながカラダを離して、泡を洗い流してくれた後に。

 自分についた泡を洗い流そうとした、シャワーヘッドを奪い取った。


「え、え!?」

「今度は、俺が洗ってあげる」

「ちょ、ちょっと!?」


 カノジョを椅子に座らせて、背中からそっと抱きしめた。

 タオルをボディーソープで泡立て、華奢なカラダに添える。


「いっぱいきれいにしてあげよう」

「や、やだぁ……じぶんでやるぅ」


 わきの下とか、胸の真下のあたりとか、汗でかぶれやすいらしい。

 痛くないように、なるべく力を入れないで、マッサージするように。

 ボディーソープをなじませたタオルで、軽くゴシゴシ。


「く、くすぐったいんだけど」

「でも、あんまり嫌な気分じゃないでしょ」


 後ろから抱きしめたまま、唇を奪い取った。


「あむ……ちゅっ」


 唇を食みながら、腹回りにボディーソープをなじませて。

 染められていない、金色の毛のうえを、丁寧に泡立てる。


「ああ……もう、わたし、お嫁にいけない」

「……それ。いつの時代の話だよ」

「え。日本語だとそう言うんじゃないの?」


 忘れてた。コイツ、帰国子女だった。

 日本語のボキャブラリーが、ちょっとばかり古いのか。


「ま。俺がもらうから。そこは心配すんな」

「もう。さりげなく恥ずかしいこと言うし」


 そして、俺の手は鼠径部から太ももの内側まで。

 ちゃっかり、きれいに磨き上げていたのだった。

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