第10話 カノジョが水着をえらんだら
電車で数駅行った先。
降りた駅前のショッピングモールに入った二人。
顔で体温を測るヤツと、手の消毒を済ませたら。
恋人つなぎでウィンドウショッピングに興じる――つもりだった。
「マジで広いな……ここ」
「うん……」
ショッピングモールという場所に、俺はあまり縁がない。
花屋の休みは平日だしな。
親父とおふくろは仕事が別々だし、休みが合わないんだ。
そんなもんで、俺は家族で来たことがない。
「どこ……回ればいいんだろ」
無理もねーよな。親と離れてひとり暮らしなんだ。
ついこの間まで、「
決して「リア充」ではないよな。
「こういう時はだなぁ……」
知ってるヤツに聞くのが一番!
サービスカウンターのお姉さんに聞いたショップを回ることにした。
そのうち、何店舗か回った先で、俺の足が止まった。
「あっ、黄色ビキニだ」
流行りのソシャゲで人気の水着キャラ。
最近、SNSでよく流れてる、あの子の水着を思わせる三角ビキニ。
それを身につけたマネキンがまぶしい。
俺が目をキラキラさせて眺めてると、
「こういうのが好きなの?
「うん」
即答。
渋い顔をされた。
「たしかにかわいいんだけど……でもね、この首の後ろで支えるタイプの水着だと。首の後ろにね、胸の重みがぜんぶかかっちゃうの」
そっか、洋梨二つ分だもんな。
バルンバルンッとふるえるの、見てる側はいいけど。
重たいかたまりを胸につけた
「……でも、一応フィッティングしてもらお」
俺がじーっと水着を見ていたせいだろう。
その三角ビキニのほかに、気になった水着を何点か選んで、
店員さんと試着室に入ったカノジョを見送って、俺は男性用水着を選んでた。
俺が水着を買い終わったあとも、カノジョが試着室から出てくる様子は無い。
(意外と時間かかってるな)
胸が大きいと、体形に合う下着を探すのが大変。
俺も、そんな話を聞いたことがある。
(でも、「かわいくてセクシーな」水着を選んでもらうためだしなッ)
時間をかけてもらおうじゃねーか。いくらでも。
そう思っていたところ、
「あのぅ……お客様が見てほしいと」
綺麗なお姉さんの店員に呼び止められた。どうやら決まったようだ。
試着室の前に連れてゆかれ、その扉が開かれた。
「お待たせ、
言葉を失った。
「店員さんが薦めてくれたんだけど、
綺麗な花柄のショルダービキニ。
肩ひもというより、帯みたいに広い面積になっている。
アンダーも同様の広めで、重量感のあるたわわな胸を支えていた。
「フィッティングしてもらったから、着心地いいんだけど。派手過ぎない?」
「めっちゃいい! よく似合ってる!」
ワンピースとか、地味系を選ぶのかと思いきや、意外と攻めてる。
開放的な胸の谷間も、華やかな花柄が目立つせいか、いやらしくない。
ボトムスもおそろいの花柄。
ブラジリアンって言われる、布面積が小さめのタイプ。
アメリカ人の母譲りの、
店員さんのセンスに、俺は心で親指を立てた。
「ちょっと、恥ずかしいんだけど」
「恥ずかしかったら、パレオ巻けばいいんじゃないかな? 何かあります?」
「こんなこともあろうかと! 柄物の水着に合いそうな、無地のパレオを
お姉さん。用意していたパレオをしれっと差し出す。
こんなこともあろうかと!? なかなかのやり手だな。
水着の地色に合わせた、シースルーのパレオを腰に巻き。
カノジョがくるりと一回転。
「うん! 最高!」
「上品な
シースルーで透けるボトムスのセクシーさはそのままに。
パレオが気品を添えていた。
俺と店員さん、二人がかりでカノジョをその気にさせる。
「そう? それじゃ、これにします!」
「お買い上げありがとうございます!」
ヨシッ!
かわいくてセクシーな水着――ゲット!
今日のメインミッションを達成したッ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます