第20話 勝利の女神は下着をちらつかせているぞ(2)

「シャワー終わったよ。何やってるの?」

「オンライン自習スペースだけど」


 ガウン姿の可奈かな

 その真っ青な瞳が見開かれた。


青葉あおばくん、やっと……やる気になったんだねッ」

「ここじゃあ、暇をつぶすモノが他にねーからな」


 そうなんだ。家に帰れば、娯楽の数々。

 でも、可奈かなには、それがないんだ。

 期末試験の時もそうだが、ここは俺の集中力を削ぐモノがない。

 だから、ここは俺が勉強する環境として、とても理想的だった。


「『不良』とか、『劣等生』とか、青葉あおばくんのこと悪くいう人いるけど。この夏休みで見返してやりましょ!」

「おうよ! じゃ、シャワー借りるから」


 脱衣所で服を脱ぎ、まだ湿気が残る浴室に入った。

 シャンプーで頭皮をゴシゴシ洗って、全身きれいさっぱり。


「……ん?」


 シャワーを止めた時、何かが視界に入った。

 ひざまずいて手に取る。縮れた金色の体毛。


(――可奈かなのアンダーヘアかよッ!?)


 そういえば、聞いたことがある。

 女性の陰毛いんもうには神妙なる力があるんだ――とか。

 出征する日本兵が、お守りに持っていったとか。

 受験にも、何か「ご利益りやく」があるかもしれない。


(くれって言ったら、絶対にひっぱたかれるよな)


 わかってる。ヘンタイの所業だって。

 でも、これも――受験に勝つためだ。

 俺はこっそり、それをティッシュで包み、回収。

 カノジョの目を盗み、カバンの中へとしまった。


可奈かな、おまたせ」

「時間あったから、パジャマに着替えてきちゃった」


 胸以外、触らせる気はないぞ。という意志表示である。

 ま、俺は十分に満足なんだけどな。おっぱい触れたら。

 ガウンのままソファに腰かけ、横から可奈かなの肩を抱く。


「……ッ!」

可奈かな、いま、びくっとした」

「……な、なんでもないんだから」

「ふふん、可奈かなも期待してたんだ。ふぅ~」


 耳に息を吹き込んでから、耳たぶを甘噛み。


「ひゃぁん!」

「あー、やっぱかわいい」


 耳まで真っ赤に染まるカノジョ。

 空いたもう一方の手で、顎をくいとこちらに向ける。

 真っ青な瞳が、もうとろけていた。

 吸い寄せられるように唇を食むうちに、舌が絡まる。

 息苦しくなって、唇を離したら。

 まじりあった唾が崩れたつり橋のように落ちてゆく。


「最後までしたくなっちゃうな、これ」

「そ、それはダメだからッ」

「じゃあさ、夏期講習が終わったらで」

「……」


 沈黙は肯定の意味か。

 今度は軽く、可奈かなをじらすようなキスを繰り返す。


「……もっと、キスしたいよぉ」


 今度は深く、舌を絡めつつ。

 ずっと触らずにいた、パジャマの上をくすぐるように。

 触るか、触らないかくらい、じれったく胸の上で指先を躍らせた。


「……」

「どうした、可奈かな

「もっと、触って」


 じらし作戦、大成功!

 いつの間にか、脚をもぞもぞさせてる。

 でも、今日はおっぱいしか触らないと宣言した手前。

 じっくり、おっぱいだけを責めていく。


「ボタン、外してもいい」

「……うん」


 同意を得て、フロントのボタンをひとつずつ外していく。

 見覚えのある、レモンイエローのブラジャー。


「これ、LINEに貼ってたやつ?」

「うん。前に水着買ったところの店員さんが、薦めてくれたの」


 ノンワイヤーのフロントホックブラ。

 サイトで読んだ。日々のバストケアにいいらしい。

 あの店員さん、ホントいい仕事してるな!


可奈かなのおっぱいが、もっときれいになるのかぁ……いいなぁ」


 キスを繰り返しつつ。

 ブラの上から洋梨を撫でまわして。

 俺は、三日がかりのじらし大作戦――その一日目を終わらせた。

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