第5話 俺、ホント困るんですけどッ
「ごちそうさまでした。朝ごはん、本当においしかったです」
「あら~、嬉しいわぁ~。こんど卵焼きの作り方教えちゃおうかしら」
朝ごはんと今後の打ち合わせが終わり、
「帰り、送ろうか」
「ううん、大丈夫」
「わかった。
「ありがとう。それじゃね、
玄関先で
姿が見えなくなったところで、玄関の戸を閉めた。
「さぁて、あおちゃん。
「……何も、って?」
「やだもぉ〜! お母さんに言わせる気ぃ~?」
「えーっと……キスはした。何回も」
「それから?」
目をらんらんと輝かせるおふくろ。
「ゴムもってなかったから、ヤッてない……イチャイチャしてただけ」
「偉いわぁ、あおちゃん。本当に、
おふくろが俺を優しく抱きしめた。
「正直にいうとね、
「……」
「でも、あおちゃんは努力の天才だから。目的さえ見つかれば、人並み以上にすごい努力できちゃう子だから。通知表見て、改めてそう思ったの」
俺が期末試験で頑張れたのは、可奈のおかげだ。
アイツは、俺を奮い立たせるため、文字通りカラダを張った。
まぁ、そんな可奈を、俺もカラダを張って守ったわけだけど。
「それで決めたの。お母さん、あなたたち二人を応援するって」
「ありがとう、おふくろ」
「可奈ちゃんのご両親にも、今朝うちの息子が迎えにいって、うちに朝ごはん食べに来ましたよってお話ししておくから」
ウィンクを残して、おふくろがお店に降りていった。
(口裏を合わせろ、ってことか)
可奈にLINEでメッセージを送り、その旨伝える。
おはようフェルプス君。
おふくろさんの食事はおいしかったかね?
そのおふくろさんから伝言だ。
ご両親には、今朝自分の息子が君を迎えにゆき、ご飯を食べに来た。
そう、ご報告する。
君と自分の息子の昨晩の行動には一切関知しないからそのつもりで。
伝言は以上だ。
なお、このメッセージは自動的に消滅する。
無事を祈る。
芝居がかった文面についた「了解」のかわいいスタンプ。
それを待ってから、俺はメッセージの送信を取り消した。
「これで任務完了、っと」
白のワイシャツを洗面所のカゴに投げ込む。
部屋に戻り、制服のズボンを脱いだ。紺色のズボンを逆さまにズボンハンガーに掛けて、半袖とハーフパンツの部屋着に着替える。
何気なく見渡した部屋が、散らかっていた。
「……俺も、部屋片付けるかぁ」
その日、俺にしては珍しく。
部屋のお片づけに没頭して、一日が終わった。
***
翌朝。
可奈を迎えに、彼女の家まで行った。
インターホンを押すと、返事がある。
『鍵開けたから。中へどうぞ』
言われるがまま、玄関に行くと起床して間もない
「おはよう。頭、まだ寝癖ついて――」
唇をふさがれた。
有無を言わさぬ、小悪魔の微笑み。
「――おはよ、
「――おはよう、
寝起きの小悪魔ちゃんに、俺はお返しのキスを見舞った。
「ちょうど今、起きたばっかりなの」
「わりぃ。ちょっと、早すぎた?」
「大丈夫。麦茶でも飲んで待ってて。冷蔵庫にあるから」
家の中では髪をほどいているし、メガネもかけていない。
つくろわず、元のままの
クラスメイトの中で、俺だけがそれを知っている。
麦茶を飲みながら、素直な欲求が口をついて出た。
「あー、大天使様のおっぱい触りてぇ〜」
「――お待たせッ、
「ブッ――!」
ゲホッゲホッ! あやうく盛大に麦茶吹くところだったぞ!
「女子ってもっと準備に時間かかるだろ、って油断してた」
「油断ってなんのこと?」
「なんでもねー。ちょっと、いかがわしい想像してただけ」
「ふーん――誰で、想像してた?」
なんだよ! その妙に冷たいというか、おっかない顔は!?
隠したってしょうがねー、とビンタされるつもりで言った。
「――朝っぱらからチューした女で、ムラムラしてるに決まってんだろ」
「ふーん――」
不敵な笑み。右手が動いた瞬間、デコピンを食らった。
「これからお母さんの朝ごはん食べに行くのに、欲情しちゃだぁめッ」
髪をおろして、メガネを掛けない。
そして美乳のカノジョに優しく叱られたら。
何か、新しい性癖に目覚めてしまいそうで。
俺、ホント困るんですけどッ。
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