図書室の隅っこでイジメられてた、おさげのメガネっ子を助けたら告られたんだけど、実はすげー巨乳の美少女だった

有馬美樹

中学3年次・夏休み

夏休みのはじまり、俺とカノジョのラブラブはこれからだ

第1話 灰かぶり姫の「魔法」は、零時をすぎても解けない

 図書室の隅っこに、メガネの女の子が追いつめられていた。

 俺はその子をイジめてるブスどもを追い払ったついでに、ありとあらゆるイジメの証拠を集めて「停学」にしてやった。

 最初、その子に興味があったわけじゃない。俺自身の名誉の問題クエスチョン・オブ・オナーってヤツだ。

 弱きを助け、強きを挫く「ヒーロー」でありたかった。それだけだったのに。


『私と、付き合ってください!』


 ふたつ分けにした黒のおさげ髪。

 丸い縁のメガネ。凹凸のない胸。

 学校では成績上位の優等生だが、いまひとつパッとしない存在。

 地味な外見と、「じみ」と誤読されやすい「字見あざみ」という珍しい名字。

 いつしか「地味子じみこ」と呼ばれるようになったその子から、告白された。


 そんな俺は、「学校一の不良」と恐れられ、先公センコーからも疎まれた「一匹狼」。

 その子は自分を助けた俺に「好きだ」「付き合ってくれ」と引き下がらない。

 とうとう根負けした俺は、地味子じみこと「恋人ごっこ」を始めたんだけども――。


 地味な割に、実は芯の強い女の子。

 俺だけが、その秘密を知っている。


『いつまで私に気を遣ってるつもりなのッ!? この、いくじなしッ!』


 性的暴行未遂に遭った地味子じみこを気遣って、ずっと手を出さずにいた俺に。

 業を煮やした彼女が手を掴んで、たわわな洋梨おっぱいに押しつけてきたその日。

 俺は、地味子じみこ――字見あざみ可奈子かなこと初めてキスをした。

 それが、夏休みの前日――一学期の終業式が終わった、帰りの出来事だ。


 ***


 その日、俺は可奈かなと裸で抱き合ったまま、一緒に深夜零時の鐘を聞いた。


「十二時になっちゃったね」

「……そうだな」

「本当に、帰らなくていいの」

「大丈夫。おふくろには言ってある」

「――そうなんだ」


 生まれたままの姿の可奈かながはにかむ。

 時計の長針が零時二分を指していた。

 灰かぶり姫シンデレラを美しく飾り立てる、仮初めの「魔法」が解けることはない。

 理由は単純かつ明快だ。

 世を忍ぶ仮の姿として、灰をかぶっているに過ぎない「美少女」だから。

 胸にサラシを巻かない、丸縁の伊達メガネを掛けない、ありのままの姿。

 俺を魅了してしまうほど、綺麗な容姿。それ自体が、本来の可奈かなだから。

 カボチャの馬車も、ガラスの靴も、何ひとつ、本来の可奈かなには必要ない。


「ま、俺という恋人兼最強のシークレットサービス・エージェントを除いてな」

「……なにそれ。恋人兼ボディーガードじゃないの?」

「ただのボディーガードは、諜報活動なんてしねーよ」

「ちょ、諜報活動って……ただの盗撮、盗聴じゃない」


 俺は怪しいグッズをいっぱい持っている。

 隠しカメラや盗聴器、ボイスレコーダーにGPS発信器まで。

 誰かをおとしめるためじゃない。俺自身と可奈かなの身を守るために。


「あとは、命を懸けて政府要人を守るってところもな」

「私、ただの一般人なんですけど」

「俺にとっちゃ、世界セカイでたった一人のお姫様だからさ」


 ぼんっ! と顔が真っ赤になった。

 俺の溺愛っぷりに、可奈かなが負けた。


「もうわかった。わかりましたッ」


 軽口をたたき合って、キスをする。


「ふたりでイケないことしてるみたい」

「恐いか?」


 可奈かなが首を横に振った。


「違うけど。胸が、ドキドキしてるの」


 洋梨の谷間に顔をうずめて、耳を澄ます。

 ドクッ、ドクッ、と脈打つ音が聞こえた。


「ねぇ、青葉あおばくん」

「どうした?」

「本当に……しないの?」


 俺は、ずっと馬っ気を出したまま。

 吐き出せないオスの欲望が先走るばかり。

 それが可奈の脚にこすりつけられていた。


「ゴム持ってないから。今日はこれでガマンする」

「あっ……くぅ……」


 それでも、俺は自分自身の手綱たづなを決して離さなかった。

 代わりに、洋梨の上で膨らんだ桜色の蕾に吸いついた。

 慈悲深い大天使様はもだえながら、俺の頭を抱えている。


「ああ、俺、このおっぱいのためなら死ねるぅ」

「うちで死なれたら迷惑だから、よそ行ってくれる?」

「うわ。ひっでぇな。もー、絶ッ対死なねー!」


 しかえしに大天使様を甘ったるい声で鳴かせた。

 攻守を入れ替え、くんずほぐれつのじゃれ合い。

 しまいには絡み合ったまま、寝落ちする有り様。


 忘れられない夏休みが――こうして、始まった。

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