27 ねこのまちのおしょうがつ

 お正月のマタタビタウンは、なかなか賑わっていました。そうたくんは寝不足でフラフラしながら、なにか楽しいことはないかなと街を見渡します。

 なんで寝不足なのかというと、大晦日、人間は夜更かしして一年を終えるので、それに付き合っていたら寝不足になってしまったのです。人間たちはたぶんまだ寝ています。

「あけましておめでとう」

 ふくくんが声をかけてきました。

「あけましておめでとう」

 聡太くんがそう返事をすると、向こうからぴのくんもやってきました。

「あけましておめでとう!」

 3人でハイタッチしました。

「なにしようかな。初詣?」

「ああ、街のはずれに十二支入れなかったぞ神社の分社があるよ。甘酒も配ってるって」

 というわけで神社に向かいます。

 神社で、みんなお腹のホヨホヨからお財布を取り出し、賽銭箱にちゃりんと投げ込みます。

(ことしも、たのしい一年でありますように)

 聡太くんはそうお願いしました。


 キジトラの巫女さんが甘酒をふるまっていました。どんな味がするのか興味があったので、3人もそれをもらいました。

 ホカホカの甘酒は、ちょっとぬるっとしていいて、しょうじきあまりおいしいとは思いませんでしたが、ほっかほかで、寒くてちぢこまった体が伸びるような気がしました。


 ふくくんが難しい顔をしているので、

「どうしたの?」と聡太くんは尋ねました。

「いや、ついこの間サンタさんからプレゼントもらったでしょ。でもクリスマスはキリスト教で、神社は神道だから、ふたつの神様にお願いして、バチがあたらないかなって」

 たしかにそうなのですが、そうたくんは去年人間がよく言っていた、

「難しいことは難しいから苦手だなあ」というセリフを返しました。


 神社を出ると、マタタビデパートにのぼり旗が出ていました。初売り大セールと書いてあります。

「おもちゃの福袋もあるんだって!」とぴのくんが目ざとく見つけます。3人はデパートに入りますが、店内はすさまじい混雑で、しっぽや足を踏んだり踏まれたりしました。

 痛いなあ、と思いながらおもちゃ売り場に到着しました。ニャンテンドースイッチソフトの福袋や、プラモデルの福袋があって、そうたくんたちと同じくらいの年ごろの子猫が買って行ったり、もっと小さい子猫がダダをこねたりしていました。

「どうする? なにかひとつ買ってシェアする?」

「ニャンテンドースイッチかあ……持ってないんだよなあ」

「ぼくも」

「ぼくもだ……」

 みんなでため息をつきました。福袋は早々に諦めましたが、せっかくのお正月です、なにか買い物をしたくて仕方がありません。

 デパートを出て、そうたくんはふと思い出して、

「神社にもどっておみくじ引かない?」と提案しました。それはいいね、とみんなで神社に向かいます。


 神社で、おみくじの箱をがらがらして、茶トラの神官さんに出た数字の引き出しを開けてもらいます。受け取ったおみくじを見ると、

「大吉 人間運 人間に大いに甘やかされるでしょう おやつ運 ちゅーるをもらえるでしょう お昼寝運 人間といっぱいお昼寝ができるでしょう」

 と書いてありました。聡太くんはそれをニコニコしながら、境内の木の枝に結びました。ふたりもいい結果だったようです。


 そろそろ人間が起きてきてお餅を焼く時間です。3人は解散して人間のおうちに帰りました。

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