8 ねこのえいがかん

 そうたくんはまた、マタタビタウンにやってきました。きょうは何をして遊ぼうかな、と考えながら、街を歩いていきます。

 ふと、街のすみっこに、映画館があるのが目に入りました。近寄ってみると、「インディ・ニャーンズ クリスタル・マグロの王国」や、「ニャーフバリ シメサバの凱旋」、「チキンなき戦い キジトラ死闘編」などの映画がかかっているようです。

 見てみるともうすぐ「シン・ニャジラ」という怪獣特撮映画が上映されるようです。ちょうどぴのくんとふくくんもやってきたので、3人、子供料金で観ることにしました。


 そうたくんはポップかつおぶしとニャウンテンデューを買い、席に座りました。ふかふかです。

 ぴのくんはポップかつおぶしにたっぷりお魚の出汁をかけてもらったようです。ふくくんはポップかつおぶしにニャカ・コーラという映画館定番チョイスです。


「パンフレット買ったけど観る?」

 ぴのくんがお腹のホヨホヨから「シン・ニャジラ」のパンフレットを取り出しました。

「やめとく。ネタバレしか載ってない」と、ふくくんはいらな〜いのポーズをしました。


 そうたくんはパンフレットをチラッとみせてもらいました。どうやら巨大な怪獣が、マタタビタウンに上陸し、街を壊しまくるお話のようです。ちょっと怖いと思いましたが、それでもすごく楽しみです。

 特撮映画なのに、映画館は意外と大人の猫も入っています。だんだんワクワクしているうちに、ブザーが鳴って暗くなりました。


 映画が始まるのだと思ったら、なにやら他の映画の予告編が長々と続きます。それから映画の撮影や録音をすると捕まります、という注意が流れました。

 それが終わってやっと映画本編です。巨大な怪獣がビームを放って、猫国会議事堂がぶっ飛びました。たくさんの政治家が科学者と協力して、怪獣をやっつける映画でした。

 最後の、無人の電車に爆薬を積んで、動けなくなった怪獣に突進させるシーンは、本当にかっこよくて、死んだ怪獣のしっぽが猫の形をしているのは、なんとなく不穏でドキドキしました。

 エンドロールを最後まで観て、3人は席から立ち上がりました。3人はとても満足しました。

 大人の猫たちは監督がどうだとか台詞回しがどうだとか話しています。どうやら細かい部分がいろいろ、大人猫が感心するほどよくできているようです。3人からすれば暴れる怪獣と戦う、すごくたのしい映画だったので、細かいところを論じるよりたのしかったね、という話のほうが先になりました。


 ポップかつおぶしと飲み物でお腹はすっかりふくれていたと思ったのですが、3人は思いの外おなかが減っていました。

 近くの「マクドニャルド」に入ります。ナゲットを注文して、席につきます。3人はあらためてパンフレットを広げました。

 さっき見たストーリーが頭の中を駆け巡ります。面白かったね、と3人はニコニコして、ナゲットを食べました。

「ねえ、こんどはシン・ニャルトラマン観に行こうよ。面白いらしいよ」と、ぴのくんは目をキラキラさせました。ぴのくんは大人しくて女の子みたいなのに、ヒーローや特撮が大好きなのでした。

 そして、3人はまた遊ぼうと約束して、おうちに帰りました。

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