28 ねこのまちにふったゆき
そうたくんは人間のお家を抜け出して、マタタビタウンに向かいました。いつものようにふくくんとぴのくんと合流して、なにをして遊ぶか相談します。
マタタビタウンはきのうの夜大雪だったようで、いたるところに新雪が積もっています。それに足跡をつけながら、
「これでなにか作れないかな」とそうたくんは首をかしげました。
「かまくらっていうのを本で見たよ。雪を山積みにして中をくり抜いて、中に入ってお餅を焼いて食べるんだって」
ふくくんがそう提案します。
「お餅はないけどそれは楽しそうだね」
ぴのくんが提案に乗ります。そうたくんもそれがおもしろそうだと思ったので、3人はかまくらを作ってみることにしました。
まず手袋をします。肉球が霜焼けになるからです。
スコップで雪を運んできて、どんどん重ねて山にします。ときどき上からジョウロで水をかけます。そうすると雪はカチコチに固まります。
だんだん雪山は大きくなってきました。ですがまだ中をくり抜いて入るには小さいです。
もっとたくさん雪を集めなきゃ、と雪をあちこちから運んできます。ちょうどいいことに、近くの空き地が雪捨て場になっていて、トラックに乗った猫たちが遠くの雪を運んできます。
その雪を拝借してどんどん大きな雪山を作ります。
「こんなものかなあ」と、ぴのくんが言います。
「うん、そろそろくり抜いていいかも」ふくくんがうなずきます。
「よおし。がんばるぞ」そうたくんが気合いをいれて、雪山をくり抜くことにしました。
水をかけて固めた雪はガチガチです。雪かき用のプラスチックのスコップでは太刀打ちできません。鉄のスコップの出番です。
どんどん中をくりぬいて、気がつけば立派なかまくらができていました。
「いい国作ろう鎌倉幕府。いまはいい箱作ろう鎌倉幕府だっけか」
ふくくんが難しいことを言いますが、そうたくんは鎌倉幕府と言われて、去年人間が夢中でかじりついていたテレビを思い出しました。そうたくんはテレビに興味はありませんでしたが、いまの人間のお家にやってきたその日に、まさに鎌倉幕府のやつを人間が観ていました。
「ここをねこねこ幕府とする」
そうたくんがそう言うと、ぴのくんが拍手しましたが、手袋をつけているのでぽふぽふと鳴っただけでした。
中に入ってみます。いつ崩れるかちょっと分かりませんが、天井がうっすら透けてとてもきれいです。
とてもじゃないけれどここでお餅をやいたらタダじゃ済まないと思ったので、3人は早々とかまくら改めねこねこ幕府をでて、さっさと壊してしまうことにしました。もしそうたくんたちより小さい子猫が入って、天井が崩れたら大変だからです。
ねこねこ幕府はあっさりとあっけなく崩れ去りました。なんというか諸行無常です。
でも楽しかったので嬉しくなりました。そうたくんは友達ふたりと別れて人間のお家に帰りました。帰ったら人間がゆでたササミをくれました。
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