6 おかねもちねこのおやしき
そうたくんはまた、マタタビタウンに向かいます。どんな面白いことがあるかワクワクしながらマタタビタウンに到着すると、ぴのくんとふくくんが空き地でキャッチボールをして遊んでいました。
「いいなあ。ぼくもまぜてよ」
「3人いれば三角ベースができるんじゃないっけ?」
ふくくんがそう提案して、三角ベースを始めることにしました。バットとグローブはお腹のホヨホヨに入っていました。
そうたくんは大きく振りかぶって、ボールをあさっての方向に投げました。ぴのくんがそれを打ち損じて、ふくくんがそれを取るのに失敗し、ボールは空き地の隣に建っているおおきなお屋敷の窓をガシャンと派手に割りました。
「どうしよう。こわいおじさんがいたらいやだ」
ぴのくんが青ざめています。
「でもちゃんとあやまらないと。どうせすぐバレちゃうんだし」
ふくくんがそう言ってため息をつきました。
またそうたくんを隊長にして、3人はお屋敷のインターフォンを鳴らしました。お手伝いさんらしい三毛猫のお姉さんが出て、3人を中に通してくれました。
お屋敷には素晴らしい彫刻や絵画が飾られていて、一目でお金持ちのお屋敷だと分かります。3人はキョロキョロしながら奥に進みます。
3人が割ってしまった窓のところには、なにやら彫刻がありました。その彫刻は羽の生えた猫のようでしたが、首がありません。ボールで壊してしまったのでしょうか。3人はゾッとしました。
奥にあるリビングに、このお屋敷の主人であるおじさん猫がいました。体が大きくて、しっぽがモサモサしています。
3人はこわくなってしっぽを膨らませました。
「野球で窓ガラスを割ってしまいました。ごめんなさい」
そうたくんたちがそう謝ると、おじさん猫はワッハッハと笑いました。
「元気でよろしい。私は窓ガラスの一枚くらい気にしないよ。まあ、座りなさい」
座ると、三毛猫のお手伝いさんがササミケーキを持ってきました。
おいしそうですが、彫刻をこわしてしまった話をするのが先です。
「窓の近くの彫刻の首がなくなっていました。たぶんそれもぼくたちのせいです」
「彫刻、というのは、猫の背中に羽が生えて、首がないやつかな?」
「そうです……えっ、もともと首がないんですか?!」
「そうだよ。あれはニャモトラケのミケという彫刻の複製だ。つまり偽物だから仮に壊したって大したことじゃないし、そもそも壊していない」
おじさん猫は自分のぶんのササミケーキを食べています。3人も恐る恐るケーキを食べます。とてもおいしいケーキです。
「ただ券をあげるから、美術館に行ってみなさい。もっと素晴らしい芸術品があるよ」と、おじさん猫は引き出しを開けて、3人に美術館のただ券をくれました。
「おじさんはなんのお仕事をしているんですか?」とそうたくんは尋ねました。おじさんより早く、ぴのくんが、
「このあいだの将棋崩し大会に来ていた、プロ将棋崩し棋士のごろた先生だよ」
と答えました。
「ああ、きみたちはあの将棋崩し大会に来ていたのか。きみは途中で帰ってしまったのかな?」
「はい。負けたのが悔しくて、先生のお顔をみる前に屋上を出てしまいました」
「そういう、負けたら悔しい、という気持ちを大事にすれば、きっと強くなれるよ」
そうたくんはなんとなく嬉しくなりました。ごろた先生は3人に、窓ガラスは気にしなくていいと言い、そろそろ夕方で人間が心配するから、と帰るよう言いました。
3人はお腹のホヨホヨに美術館のただ券をしまい、それぞれおうちに帰りました。
そうたくんはおうちに帰って、ちょうど帰ってきた人間からキャットフードをもらい、美術館ってどんなところかな、と思いながら寝ました。
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