18 ねこのふるほんやさん
そうたくんはまたマタタビタウンにやってきました。るんたるんたと歩いていると、古本屋が目に入りました。
「あ、そうたくん。古本屋さんにいくの?」
ぴのくんがそう声をかけてきました。ふくくんもいます。
「うん、なんだか面白そうで」
というわけで3人は、その「スコティッシュフォール堂」という古本屋に入っていきました。
店の奥で、腰の曲がったスコティッシュフォールドのおじいさんが新聞を読みながら店番をしていました。3人はスコティッシュフォールドのひとを見るのが初めてだったので、折れた耳をまじまじと見てしまいました。おじいさんににらまれて、慌てて本棚に目を移します。
「これ、すごく古い本だけど、きっと価値があるんだろうなあ」
ふくくんが本を取り出します。ふくくんの引っ張り出した本は、「将棋崩し技巧」と書かれた、ずいぶんと古そうな本です。開いてみると、将棋崩しの例題がたくさん載っていました。見ているだけで頭が痛くなる感じがします。
「あ、妖怪の本だ」
ぴのくんが目ざとく見つけた妖怪の本を、そうたくんもふくくんも覗き込みます。子どもだから妖怪や怪談が好きなのです。
その本は「にゃずきしげる」という漫画家の書いたもので、おどろおどろしい妖怪がいっぱい載っています。3人は夢中でそれを見ました。ちなみに文章は読んでいません。子どもだからです。
値段をみるとたったの100ニャンでした。ぴのくんはご機嫌でそれをレジに持っていきます。腰の曲がったおじいさんは老眼鏡をかけて、しばらく値段を確認してから100ニャン硬貨を受け取り、いまどき珍しい紫の印刷のレシートを渡してきました。
そうたくんもなにか面白い本はないか探します。「8月のニャーン」という漫画を見つけました。立ち読みしてみると、プロ将棋崩し棋士の若猫の成長物語のようでしたが、ちょっと登場人物が多くて難しそうです。
そうたくんは「8月のニャーン」を棚に戻して、子どもでも読める本にしようときょときょとします。
ふと顔を上げると、「子猫でもわかる 人間のかじりかた」という本が目に入りました。思わず手にとって開きます。人間をどうかじれば面白いかが載っているようです。値段は100ニャンでした。さっそくレジに持っていきます。
ふくくんも、「子猫のための将棋崩し入門」という本を買いました。みんなで店を出ます。ちょうど夕方のようです。店番をしていたスコティッシュフォールドのおじいさんが出てきて、店の前の1冊30ニャンのワゴンをしまい、シャッターを下ろしました。
マタタビタウンはきれいな夕焼けでオレンジ色に輝いていました。人間がそろそろ帰ってきます。そうたくんたちはそこで解散して、秋の夜長に読書を楽しむことにしました。
人間のお家に帰ってきて、そうたくんはさっそく、人間に気づかれないようにかじりかたの本を読みました。人間をさっそくかじってみようとしましたが、かじる前に鈴の入ったボールを渡されて、気がつけばヘトヘトになるまで遊んでいました。そのままぱったりと寝て、そうたくんは人間をかじる夢を見ました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます