26 ねこのおまわりさんとサンタさん

 真夜中のマタタビタウンには静かに雪が降っています。そうたくんは、人間がみんな眠った隙をついて、マタタビタウンに遊びに来ました。

 ふくくんとぴのくんとも会う約束をしていて、真夜中に3人で集合しました。目的はひとつ、サンタクロースを探すことです。

「サンタさんからなにかもらえるならなにがいい?」

 そうたくんがそう言うと、ふくくんは、

「本かなあ。にゃわじゃわけんじの『銀河鉄道のサヨリ』とか」と答えました。ぴのくんは、「新しいオモチャがほしいなあ。『機動戦士ニャンダム』のプラモデルとか」と答えました。

「ぼくはスケボーが欲しいな。早くサンタさん探そう」

 真夜中のマタタビタウンは、あちこちでイルミネーションがチカチカ光っています。とても綺麗ですが、見ているとなんとなく気分が悪くなったので目をそらします。深呼吸したら、気分がよくなりました。


 空を見上げると、雪が降っているので曇っています。これじゃあサンタクロースを探すのは難しそうです。

 でも、雪を見上げると、まるで空に登っていくような気持ちになって、思わず3人はそこに立ち尽くしました。


「きみたち、何してるの?」


 唐突に声をかけられてビックリしてそちらを見ると、メインクーンのお巡りさんがいました。3人の顔を覗き込んで、

「まだ子供だよね、親御さんは?」

 と訊いてきました。

「いや、その、サンタさんを探しに人間のおうちを抜け出してきたんです」

「うーん、そうかあー。でも、子供が夜中に出歩くのは危ないから、警察署まで来てもらえるかな」

 というわけで、3人は見事に補導されてしまいました。しょんぼりしながら警察署にむかいます。

 警察署はとても忙しそうです。警察の制服を着た猫たちは、みんな書類を確認したりハンコを押したりカツ丼を注文したりしています。

「こんな夜遅くまで働いているんですか」と、そうたくんが尋ねます。

「昼間は寝てるからね」

 そこは猫なのでした。


 おいしそうなドーナツが出てきました。3人はそれを食べながら、お巡りさんのお説教を聞きました。

「危ないから、子供だけで夜出歩いちゃだめだよ。サンタクロースはいい子にしかプレゼントをくれないんだからね」

「やっぱりサンタさんはいるんですね?!」

 ふくくんが食いつきます。

「いるよ。人間の世界だとサンタさんは嘘だけど、猫には欲しいものをくれるサンタさんがいるんだ」

 そう言ってお巡りさんは窓の外を指さします。


「メリー・クリスマス!」

 そう言って、サンタさん――まっ白くてフワフワの、赤い服を着た猫が、トナカイのソリで飛んできました。

「サンタさんだー!!!!」

 3人は窓のところに集まりました。サンタさんは、窓を開けるように言います。3人が窓を開けると、ほいほいとプレゼントを配り、

「ヨホホホー」

 と言ってサンタさんは去っていきました。


 朝になりました。3人は警察署から、人間のおうちに帰ることにしました。

 人間のおうちで、人間が起きてくる前に、そうたくんはプレゼントを開けました。中にはピカピカのスケボーが入っていました。

 それをお腹のホヨホヨにしまって、聡太くんは人間を起こしにいきました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る