14 ねこのかきごおりやさん
そうたくんはきょうもマタタビタウンに向かいました。なにか楽しいことがあるといいな、と思うと足取りが軽くなってるんたるんたしてしまいます。
街はお祭りのあとなのにとてもきれいでした。空には大きな入道雲が浮かんでいます。夏なんだな、とそうたくんは思いました。
太陽がじりじりと道を照らしています。そうたくんはハヒーと声を上げました。人間のおうちのエアコンや扇風機が恋しいです。
顔を上げると、「べんがる氷店」という看板と、波の上に「氷」の字が踊っている旗を見つけました。かき氷やさんです!
ぴのくんとふくくんが、お店の中にいました。そうたくんはお店にフラフラと入っていきます。
「いらっしゃい」
野生的な毛並みのおばちゃんが、メニューを渡してきました。
・かつおだし味
・ササミのゆで汁味
・すいかの汁味
トッピングにはゆでササミ、かつおぶし、砂肝フレークなんかがあるようです。そうたくんは長考してから、かつおだし味に砂肝フレークを注文しました。
ぴのくんはササミの茹で汁味にかつおぶし、ふくくんはすいかの汁味にゆでササミで食べているようです。
「来るのが遅いよ〜。ここはすごくおいしいんだよ、かき氷の機械が昔からのやつだから氷がふわふわなんだ」
ふくくんはすいかの汁で赤くなっているかき氷をしゃくしゃく食べながらそういいました。ぴのくんもササミのゆで汁のかかったかき氷をニコニコして食べています。
「おいしいよ、頭がキーンってするよ」
おばちゃんの旦那さんと思しき、やっぱりワイルドな毛並みのおじさんが、かき氷機に氷をセットして、機械のハンドルを回すと、まるで雪みたいに――そうたくんは春生まれなので雪を見たことはないのですが――ふわふわの氷が、きれいなガラスの器に積もっていきます。
それがあんまり美しいので、そうたくんはそれをじいっと見ました。おいしそうです。
かつおだしと砂肝がかけられて、そうたくんの前に出されました。金属のスプーンでシャクリとすくって口に運びます。
口の中がひんやりしました。
もう一口、だしのたくさんかかったところを食べます。おいしいです。
さらにもう一口食べます。頭がキーンとなりました。目をパチパチして、一休みしてからもう一口食べます。
かき氷はとてもおいしくて、体がひんやりしました。でもまた外に出るのはいやだなあ。そう思っているとなにやら薄暗くなって風が吹き始めました。
「夕立だ」
ふくくんが空を見上げます。ぱつ、と道路に雨粒が当たったと思うと、雨が激しく降ってきました。
外はさっきまでのカンカン照りが嘘みたいな雨です。雷が鳴って、ぴのくんが耳を塞ぎました。
どどーん、と雷が響きます。そうたくんはこんなに近くで雷が鳴るのを初めて聞きました。怖くないふりをしているふくくんのしっぽの毛が逆立っているのが面白いと思いましたが、そうたくんのしっぽの毛も逆立っていました。
夕立が止むと、大きな虹が出ました。涼しくなったので、それぞれおうちに帰りました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます