2 こねこさまランチ

 きょうもそうたくんは人間がいないすきに、物置のタンスに潜り込みました。明かりのほうにずんずん進むと、また街に出ました。

 街を見渡すと、やっぱりでっかいデパートがありました。そのマタタビデパートに入って、そうたくんは屋上に向かいました。


 きょうは将棋崩し大会の日です。デパートの屋上はそうたくんくらいの子猫でいっぱいでした。

 そうたくんは参加の受付をしてもらって、相手の向かいに座りました。

「よろしくおねがいします」とそうたくんが言うと、相手の白黒の子猫も「よろしくおねがいします」と言いました。


 空気が緊迫します。そうたくんが先手です。

 肉球をそっと、ただ散らばっている駒に伸ばします。音が鳴るまで取り放題のルールなので、どんどん駒をとります。

 大きなかたまりが残りました。爪がひっかかり、カチリと音を立ててしまいました。

 しかし相手もこのかたまりを崩さなくてはなりません。相手は慎重に、いちばん得点の大きい玉をとりましたが、飛車に肉球を伸ばしたら崩れて音がしました。

 しかし飛車は銀に絶妙なバランスで乗っています。聡太くんは恐る恐る手を伸ばして、飛車を取ろうとしました。しかし、ガチャリと飛車は銀から落ちてしまいました。

 痛恨のミスです。相手は飛車と銀をとって、さらに金もとりました。あとはかたまりしかありません。

 結局、そうたくんは負けてしまいました。悔しくて、プロ将棋崩し棋士を見ることもなく、やけ食いをしようと7階の食堂に入りました。


 こねこさまランチと砂肝ソフトクリームを注文して、こねこさまランチを泣きながら食べました。悔しくて悔しくて、ずっと泣きながらこねこさまランチを食べたので、砂肝ソフトクリームが運ばれてくるころには疲れてウトウトしていました。

 はっと目を覚ますと、そうたくんはまだ食堂にいました。砂肝ソフトクリームはだいぶ溶けています。そうたくんは砂肝ソフトクリームをぺちゃぺちゃ舐めて、代金をマジックテープの財布から払い、来た場所から人間のおうちに帰りました。

 人間のおうちでキャットフードを食べて、そうたくんはぐっすり寝たのでした。

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