24 ねこのやきいもやさん

 マタタビタウンはすっかり冬です。

 雪が降って冷たい風が吹いて、そうたくんはぶるりと震えました。

 ぴのくんとふくくんも、肉球をこすったり息をかけたりしながら、通りの向こうからやってきました。

「なにしてあそぶ?」


「こんなにさむくちゃ将棋崩しはできないなあ」

 ふくくんがやれやれという顔をします。


「あっ、あれなんだろう?! いってみようよ!」

 ぴのくんがなにかを見つけました。それはなにやらいい匂いのする煙を上げながら、

「いしや〜きいも〜、おいも〜」と、そうスピーカーで客引きをしています。


 焼き芋屋さんです!


 そうたくんはあわててお腹のホヨホヨからお財布を取り出しました。ぴのくんとふくくんもおなじくお財布を取り出します。

 3人は焼き芋屋さんにできた行列に並びました。キジ白のおじさんが、ひょいひょいとアツアツの芋を屋台から取り出し、新聞紙にくるんで売っています。思いのほかお値段がしますが、この本当に石焼きの焼き芋なら間違いなくおいしいはずです。


 3人も焼き芋を買います。それを、近くの公園で食べることにしました。

 ホクホクのホカホカです。頬張りすぎると飲み込みかたがわからないくらいホクホクです。

「おいしいねえ、あちちち」

 そうたくんはハフハフと芋を食べます。人間はこんなにおいしいものを食べていたのか、とずるいなあと思います。

「すっごく繊維質だ」

 ふくくんが芋を観察してそう言います。

「みて、べろを火傷しちゃった」

 ぴのくんが舌を見せてきました。


 3人で焼き芋をやっつけて、さてこんどはなにをしよう、となりました。

 しかし全員すっかりお腹がくちくなっていて、なにかして遊ぶ気分ではありません。

 でもまだ時間はゆっくりあります。人間のおうちに帰るまでまだしばらくあります。3人は、最近の人間の話をすることにしました。


「このあいだ、アジフライっていうのを盗んで食べたよ。おいしかった〜」

 そうたくんがそう自慢すると、ふたりは「すごーい!」と声をあげました。

「アジフライっておいしそうだよねえ。ちゅーるとかよりそっちがいいなあ」

 ふくくんが食いしん坊の顔でそう言います。ぴのくんはヨダレをごっくんと飲み込みました。

「あとチーズの銀紙は飲み込むと吐いちゃうから気をつけてね」

「そうたくんはそんなの食べたんだ。ぼくは輪ゴムを飲んで吐いたよ」

 ふくくんもなぞの自慢をしました。

「ぼくはなかなかケージから出してもらえないからなあ……」

 ぴのくんがため息をつきます。

 子猫だって悩みます。それは仕方がないことです。

 そんな話をしてから、一同はちょっと早めに解散しました。人間のお家に着くと、人間がキャットフードをくれました。

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