11 ねこのがっこう

 そうたくんはまた、マタタビタウンを訪れました。きょうはなにをして遊ぼうかな。るんたるんたと街を歩きます。

 マタタビタウンは本当にいろいろな猫がいます。毛がふさふさの猫もいるし、逆に毛の生えていない猫もたまに見かけます。

 そうたくんはいろいろな猫が歩いている街を見渡して、自分も立派な猫になりたいなあと思うのでした。


「あっ、そうたくんだ」

 むこうからぴのくんの声がしました。ふくくんもいます。2人ともランドセルを背負っています。

「ここって学校もあるの?」

 そうたくんの質問にふくくんがうなずきます。

「だれでも入れるし行きたいときだけいけばいい決まりなんだよ」

 それなら行ってみたいとそうたくんは思いました。そのとき急に、お腹のホヨホヨが重たくなりました。ランドセルが入っていました。


 猫の学校は、小学校から大学院まで、行きたいときに自分の成長にちょうどいいところに行きます。そうたくんはふくくんやぴのくんと同じ小学一年生の教室に入りました。

 目が回るほど色とりどりの子猫が、おぎょうぎよく机に向かっています。先生は黒板に「竹」という漢字を書いていました。


「このように、人間には竹というものが木みたいに見えています。このなかに人間の見た竹を知っているひとは?」


 ハイ、と手が上がりました。利発そうなアメリカン・ショートヘアの女の子です。

「わたしの飼い主は竹の山を世話している人です。竹でかごを編んでいます。逃げ出したときに竹を見ました」

 教室から「おおー」と声が上がりました。そうたくんは竹をおはしやスプーンにしたものしか知りません。

 いろんな猫がいるんだなあ。そうたくんは感心しました。


 次に先生は黒板に「鳥」と書きました。ちょっと画数が多いなあとそうたくんは思いましたが、教室は大盛り上がりです。

「はい、みなさん鳥は大好きですね。これもこういう形が変化してできた文字です」

 先生が黒板に「鳥」という字のなりたちを書きました。

「このように、鳥という字は鳥の形をしています。鳥を見たことがある人はたくさんいますね。じゃあそこのきみ、鳥がどんなものか説明できますか」

 そうたくんが指されました。そうたくんは立ち上がって、

「ええと。空を飛んで、いろんな声で鳴く生き物です。なんだかおいしそうだなあって思います」

 と、鳥のことを説明しました。

「素晴らしい。おいしそう、というのが大事です。みなさんはチキンは好きですか?」

 教室からわあわあと、「すきー!」「だいすきー!」「チキンすきー!」と声が上がります。

「チキンは、ニワトリというおいしい鳥の肉です。きょうの給食を食べながら、ニワトリはどんな鳥か想像してみましょう」


 そこでチャイムが鳴りました。給食の時間です。当番の生徒が食器や食べ物を運んできました。みんなで協力して、給食をそれぞれ自分の机に用意します。

 今ひとつおいしくなさそうなチキンのサラダと、お魚の団子の入ったスープ、揚げパンのセットです。しょうがないのでぱくぱく食べます。やっぱりおいしくありません。とてもじゃないけれど、チキンからニワトリの姿は想像できませんでした。


 給食を食べ終わると、みんなバラバラと帰り始めました。小学一年生の授業は午前だけです。

「学校ってなんだかきゅうくつなところだね」

 そうたくんは素直にそう言いました。

「うん……ぼくも勉強はきらいじゃないけど、給食がまずい。まるで野戦病院だ」

 ふくくんが顔をしかめました。

「やっぱり将棋崩しが楽しいよ」

 ぴのくんがあくび混じりにそう言います。


 3人は学校を出て、空き地で将棋崩しをして遊んでからそれぞれお家に帰りました。

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