第23話 いつもとほんの少し違うだけなのに

ミーンミーン

蝉の声が聞こえそれが目覚ましがわりになり目が覚める。

「…ん〜」

固まった体を伸ばしほぐして時計を見る。

   午後の15時

 昨日の夜は夜更かしをして確か…9時まで起きてたってか?

「ん…?15時?」

目を擦りもう一度時計を見る。

  時計の針は15に止まっている

「やっば‼︎」

俺は、急いで、一階へと急ぎ風呂に入る。

 今日は、結衣と夏祭りに行こうと前から約束していた日だった。

今回は現地集合が良いと結衣が言うので、祭りの近くの神社が待ち合わせ場所なのだ。

家が隣だから一緒に行けば良いのでは?と言ったが、それでもと言うので仕方なくそうなった。

 集合時間は17時30分

現地まで若干の距離がある為、移動時間を考慮して最低でも30分ぐらいは、かかるだろう。

 残り2時間それまでに間に合うかどうか。

風呂に入りドライヤーをかけ髪を乾かし櫛で髪の毛をセットする。

「ん〜…今回はこれで良いかなぁー…」

鏡と睨めっこをしながら、髪型を決める。

 センター分け?シンプルなマッシュ?

 ウルフ?

「やはり…いつも通りで行くか?」

 いつものように、髪の毛を適当に下ろして行くか…

「いやいやせっかくだから、少しぐらい変えてみたいな。」

俺は、髪型を決めワックスでセットした。

「服は…これで良いか。」

準備が整い一階のリビングで椅子に座り待っていると父親が話してきた。

「優也…お前せっかく夏祭りなのに、フツーな服でいいのか?浴衣とか…」

「俺…浴衣なんて持ってないよ親父。」

「あるわよ。」

「…?」

奥から母親が出てきて話してきた。

「でも着たことないし。」

「大丈夫よ!母に任せて‼︎」

目をキラキラにしながら言う母に俺は全てを任せた。

 


15分ぐらいで着付けが終わった。

 母が全て教えてくれながらやってくれたおかげで、時間があまり掛からなかった。母親様様だ。 

 「おぉ…凄いな本当に俺か?」

鏡を見て自分の姿に驚く俺だったが、一つ疑問をぶつけた。

「どうして、浴衣なんて持ってたんだ?それにサイズも少し大きいぐらいで来年も着れそうな感じだし。」

すると母親は

「自分の子だもの準備は、全部してるわ産まれた時からずっとね。」

「まぁ、俺も少しアドバイスをしたけどな」

「貴方…いつもアドバイスくれる時、遠回しに言うから困るのよ…まぁそこが好きになったところだけども。」

 「仲いいんだな。」

夫婦仲を見せつけられた俺は、これくらいしか言う言葉が見当たらなかった。

「まぁ、頑張れよ…」

父は、顔を少し下を向き励ましてくれた。

「あぁ、ありがとう。じゃあ行ってきます。」

「気おつけていってらっしゃい。」

俺は扉をいつもより少しだけ優しく閉じた。

「優也…あの感じだと知らないみたいだな。ただ記憶がなくなるわけじゃ無いんだぞ?」

「でも大丈夫よ、きっといつか言うときは来るもの。今はもう少しだけ待ってあげましょう。」

「そうだな…」




慣れない下駄を履きながら歩く為かいつもより歩くスピードが遅かった。

 集合時間から、10分も遅れて待ち合わせ場所の神社へ到着した。

 「!」

鳥居の柱付近で待つ結衣の姿が見えた

 「結衣!」

「…⁉︎ゆ、ゆーくん」

「ごめん…遅て」

顔を下に向けて黙ったままだった…やっぱり怒ってるよな。

「怒ってるよな…やっぱり…」

「ち、違うの!」

「?」

「ゆーくんが凄くカッコ良すぎて…心臓の

ドキドキ止まらないの…」

「…!」

帰ってきたら返事は、俺が予想の斜め上だった。

 お互いに沈黙の時間が何秒か続いた。


 我慢できなくなった俺はドキドキしながら話しかけた。

「とりあえず顔あげてくれない?」

 「………」

「あ、あの〜結衣?顔あげてくれないと、結衣の顔が見れないんだけど。」

 彼女は、恥ずかしいのかゆっくりと顔を上げた。

「……」

顔を上げた彼女は、ピンク色になって恥ずかしがっているが分かった。

 彼女のピンク色になっている顔と浴衣姿を見たのだが…

「…ッ!」

「…凄く可愛いしその髪型も似合ってるよ」

天使をも越えた別次元の可愛さだった。

 そもそも、浴衣姿に結衣が似合わないわけがないのだがそこに、ゆっくりと顔を上げる仕草と恥ずかしがっている顔と浴衣という普段なら絶対に見れない、この組み合わせがいいのだ。 

 さらに神社の柱で待っているというtheラブコメ展開!

こんなイベント滅多に起きない激レアイベントだ‼︎ しかも心臓のドキドキ止まらないとかさっき言ってたけど、ナチュラルにそんな言葉を言うなんて何?俺のこと殺しにきてる?って

思ってしまう。

 更に更に髪型‼︎ いつものロングでわなく、ポニーテル!浴衣に合う髪型1位!(個人の感想です)そこを選んでくるとは…少し高い位置で髪を結んでいてそれが味を出している…


 「お前なぁ…そうゆうオタクぽいところ直せよ?」


「!」

俺は、周囲を見渡す…親友の声がしたのだが…

親友の姿は見えなかった。気のせいなのか?

「ゆーくん…」

「どうしたのボーッとしてるけど…」

「あぁ…結衣が可愛すぎて脳内で解説をしてた。」

「何それ⁉︎てかゆーくんってそんなキャラだっけ?」

「普段は絶対に起こらないんだけど…今日はほら1年に1回の夏祭りだろ?だから気持ちが昂ってる。」

「そ、そうなんだね」

 何?ゆーくんカッコよすぎじゃ無い?

いつも髪型とか気にしてないのに急にセンター分け?しかも凄く似合っててるとか反則なんですけど〜

 浴衣も少し淡い青色‼︎ センター分けに浴衣姿のゆーくんとか今後一生見れないの見ちゃったんだけど…いいの?これ私で?


 「アンタね…山田君の事になると急にオタクみたいになるわよね…はぁ…」


「!」

確かに凛ちゃんの声が聞こえたと思ったんだけど…気のせい?見渡してもいないし…


「結衣?」

「!」

「どうした?さっきからずっと呼びかかてるんだけど」

「ゆーくんがカッコ良すぎて私も脳内で解説してた」

「お、お前なぁ…」

 俺は少し恥ずかしくなって顔が赤色に染まった。

「とりあえず…歩こうか。」

「うん…」

 俺は彼女に手を差し伸べた。

 私は彼氏から差し伸べられた手を握った。


「人多いな…」

「うん…」

会話が途切れてしまう…その光景は、

 出来立てのカップルのようだった。

 ほんの少しだけ握った手を離さないように

強く握った。

 いつもと異なる点は、服装が少しと違うだけ…違うだけなのに…

   いつものデートと違った。

一歩ずつ下駄で確実に進んでいく…

    ドクドクドク

 俺は、自分の心臓の音が聞こえ明らかに流れが速くなっているのが分かった。

    ドクンドクン

 私は、自分の心臓が速くなっているのが分かった…その音はだんだん大きくなっていく

  

  少し落ち着いてくれないと結衣に緊張してるのが気づかれちまう。

  このままじゃ心臓の鼓動がゆーくんに聞こえちゃうよ。


ただ手を握って歩いてるだけのはずなのに…

              


どうして俺は…

どうして私は…

     こんなにも緊張してるんだろう…



  



〜あとがき〜

2ヶ月ぶりの投稿となってしまい申し訳ありませんでした。

 この作品を見てる皆様これからも応援よろしくお願いします。

 

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