第11話 また明日という待ち遠しさ

〜放課後〜

「なぁ、修斗…ありがとう。」

「急にどうした〜?礼を言うなんてお前らしくないな。」

そんなに珍しかったのか、クスッと笑っていた。

「まぁ、修斗のおかげでデートも誘えたから一応礼をと思ってな。」

「そうか、よかったじゃんか…。」

「あぁ、じゃあ俺、あま…結衣と一緒に帰るから…じゃあまた月曜日。」

「またな…楽しませろよ……。」

「もちろん。」

 バタン

彼は、少し走りながら帰っていた。

俺は、アイツがいなくなったのを確認して…

「なぁ、優也。俺が一番距離近かったんだぜ…中学の時天乃さんと俺が一番…。」

「やべ…」

 もう泣かないって決めたのに……涙が止まらねぇや。

情けねぇ……ん?

「そういえば、中学の時の天乃さんって今みたいな感じ、じゃなかったよな?………あの噂は、本当って事なのか?」

 確か、浅田さんだっけ?常に天乃さんと一緒にいたよな?聞いてみるか…。


「あ、ごめん遅れちゃった。」

「ゆーくん遅いよ〜女の子を待たせるなんて…。」

「あぁ、悪かった。コンビニのスイーツ買ってあげるから。」

「ふふん♪」

はぁ〜甘い物好きで助かった。次からは、気おつけよう。

「なぁ、ゆ、結衣…。」

「そういえばさ、下の名前で呼ぶのちょっと慣れたよね。」

「あぁ、少しだけだけど…明日…遊園地に行かないか?」

「遊園地?いいよ‼︎楽しそうじゃん。」

「時間は…10時ぐらいでいいか?」

「わかった。10時ね。」

「それで、集合は…言うまでもないな。」

家が隣だから、外で待っていれば良いだけの話なのだ。

「そういえば、今日私の家に泊まらない?」

「あぁ、いいよ。」

「ん?……は?ちょっと待てなんで急に⁉︎」

「その、ゆーくんのご両親と私の親、旅行に行ってるんだよね。ってこの話聞いてないの?」

 あの、バカ親…教えてくれてもいいじゃねぇーか。

「流石に泊まる事は出来ないけど、せめて晩御飯は、一緒に食べよう。」

「うん!」


 俺は、初めて結衣の家に入った…。

「そこのソファーに座ってて。」

「あぁ、すまない。」

言われるがままに座った俺は、キョロキョロと周りを見渡した。

とても綺麗で、余計な物が一切置いてない…それに、シンプルな家具達だ。

シンプルで綺麗だから、結衣の部屋が気になってしまった。流石に、許可なく覗くなんて事はしないが…いや考えるのはやめよう。好奇心が勝ってしまう。

「ゆーくん、何か食べ物で嫌いなのある?」

「いや、基本的にはなんでも食べれる。俺も手伝うよ。」

「本当?じゃあ、この野菜達を切ってくれる?」

「わかった。」

正直楽な仕事だった。俺の家は、父母共に帰ってくるのが遅い。なので俺は、基本的に自炊をしている…その為か料理の腕が人並みよりあるぐらいだ。

「わぁ〜切るの上手⁉︎料理出来るの?」

「まぁな、これでも基本的に自炊をしてるからな。」

「そっか〜。」

その瞬間だった、包丁を持って野菜を切っている最中に、耳元で囁く声が聞こえた。

「今日、新しいゆーくんを知っちゃった。料理出来るのってすっごくカッコイイよ。」

「きゅ、急に耳元で囁くな、包丁持ってるのに危ないだろ…それに……急に言われると心臓に悪い。」

「ふふ、照れてる。」

「う、うるさい。」

 本当に、心臓に悪い。もう少しで止まりそうだった。 

 それに比べて彼女は、少し顔を赤くなっていたけど、やってやった感を出していて『ふっふ〜』と上機嫌だ。こんな彼女、他の男に見せたくない。

「そろそろ出来てきたな。」

「うん!」

「あそこにあるお皿取ってくれる?」

「これか…よし。」

「ありがとう…なんか夫婦みたいだね。」

「…」




はぁ、はぁ、危なかった。危うく死にかける所だった。いきなり言うのは反則だろ…

「……いきなりそんな事言うのは、反則だろ。」

「ごめんね。あまりに、心地いい空間だから口に出ちゃってた。」

そんな彼女は、天使と言うより小悪魔に近い感じで、目を瞑りながらニコッと笑っていた。

「じゃあ、晩御飯も出来たみたいだし。いただきますか。」

「そうだね。」

『いただきます。』

今回は、シンプルに野菜炒めと味噌汁、白米といった、栄養満点なご飯だ。

「この野菜炒め凄く、美味しい。」

「よかった〜」

味は、薄くなく濃くもない中間な味付けになっているが、口に入れた瞬間優しさが溢れてくる。彼女が心を込めて作ったからだろうか?優しく、いい火加減で焼けた野菜達がとても美味しく、こんな料理なんて初めて食べた。

『ご馳走様でした。』

俺達は片付けを済ませて、俺は家に帰った。

「じゃあ、明日」

「うん!また明日」

ドアがゆっくりと閉まり鍵を閉めてから私は

そっと呟く。

「ゆーくん…もう半年もないんだよ…」


俺は家に帰り、明日の準備をしていた。

「にしても、結衣の料理美味しかったな…」

余韻に浸っていた。「また、明日」いつもなら何も感じない普通の言葉が今は、

「早く会いたい…。」

また明日という待ち遠しさに、俺は

「あの時帰らなければもっと長く、もっと楽しい時間を二人で一緒に過ごせたのかな…」


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