第19話 正しい選択肢

昨日彼女の家で寝てしまった僕は、欲望に打ち勝ちなんとか一夜を過ごすことに成功した。

「おはよ、ゆーくん。」

?ほっぺたに柔らかい感触を感じる…。

目をゆっくりと開けると、俺のほっぺに彼女が人差し指で突っついた。

「…あぁ、おはよう。」

時間は、7時ちょうど、いつもと変わらない起床時間だ。

それにしても…今日も泊めてもらうわけにはいかないから、どこかのタイミングで帰るとしよう。

それに俺の心臓が持つかもわからない。

「ゆーくん。」

「な、なんだ…」

彼女に話しかけられた俺は、眠い目を擦りながら答えた。

「うんん…やっぱりなんでもない。」

「そうか。」

朝だから結衣も頭が回っていないのだろう。

寝室を出て、リビングへと俺達は向かった。

朝ご飯を食べ、結衣に勉強を教えたり夏休み明けに向けて勉強したりしていたら、あっという間に時間は、午後18時になっていた。


「っと、もうこんな時間か…」

「うん、そうだね…もうこんな時間だね。」

「どうした、結衣今日なんか変だぞ。」

俺は、朝から疑問に思っていた事を口にした。動きに落ち着きがなかったり、話を聞いてなかったりと、少し変だった。

「もしかして熱でもあるのか?」

「い、いや熱はないから…ただ」

「ただ?」

「ゆーくんに聞かないといけないことがあったからさ。」

「聞かなきゃ行けないこと…」

雰囲気が変わり、少し緊張感のある空気になっていた。

「うん…なんで、ゆーくんって私に告白したんだろうって…」

「…」

一瞬迷った、今ここで正直に話すかそれとも、嘘をつくか。

『嘘をつく』恋人に嘘なんかついていいのだろうか…時には嘘をつかなければならないと言う人もいるが、嘘は嘘だ。きっといつか嘘をつかれた本人は気づく。嘘をつくのは簡単だ。しかし、今ここで正直に話せば今の関係が終わってしまうかもしれない。そう考えると不安になって、怖くなってしまう。

俺は、俺は、、

「前に話したような気がするけど…。」

俺は、逃げた。嘘をつくのも本当の事を言うのも嫌だった、だから逃げてしまった。先延ばししているだけで何も良いことがない。そんな選択肢をしてしまった。

「そ、そうだっけ…。」

「あぁ。」

「そっか…ごめんね。2度も聞いちゃって。」

「い、いや大丈夫だ。じゃあ俺は、もう帰るよ。」

「う、うん…バイバイ」

そう言う彼女の表情は、どこか悲しそうな顔をしていた。


俺は、一人家で後悔していた。自分が取った選択肢を反省していた。その時だった。

ブルルル

携帯電話から着信音が鳴った。

「…!親父?」

電話番号を見てびっくりしたが、一応出ることにした。

「親父どうしたんだよ…急に電話なんかして。話すことなんてないって前に言っただろ。」

「いや、ただお前が干からびてないか心配になってな。」

「干からびるわけないだろ‼︎」

「そうか」

親父はクスッと笑いながら答えた。

「お前、何かやらかしたのか?」

「なんで、わかるんだよ。」

「まぁ一応俺の息子だからな、もしよかったら、話を聞かせてくれ。」

「…」 

 一瞬迷った親父とは、ここ最近まともに会話をしてこなかった、俺が親父の事が嫌いだからだ。だから、親父が優しく手を差し出してくれたのがどこか嬉しかった。もしかしたら今の気持ちを解決してくれるかも知れない…そう考えた俺は、親父に全てを話すことにした。

 結衣に罰ゲームで告白して付き合ったこと、デートしたりしたこと。そして今日のことも。俺が体験したこと全部話した。

親父は、ただ静かに俺の話を聞いてくれた。

「そうか…そんな事が起きていたんだな。にしても結衣嬢さんと付き合ったのか。頑張ったな。」

「うん。」

「まぁ俺が、偉そうに言えた事じゃね〜けどよ。」

親父は、どこか照れ臭そうにしながら話しているのが、電話越しでも伝わってきた。

「選択肢を間違える事はこれから先沢山あると思う。間違える事は悪いことじゃない、むしろ間違え続けるんだ。そうやって人は成長していく。だから下を向くな、前を向け。そうすれば、今やらなきゃいけない事が見えてくる。わかったか?」

「案外真面目な事言うんだな。」

「バッカ野郎俺だって真面目な時は真面目だぜ。」

「初めて知った。」

「今日初めて見せたからな。じゃあな切るぞ。」

「うん。親父ありがとう。」

「またな。」

電話は、ここで終わった。


「にしても、俺の息子に彼女が出来るとは嬉しいもんだな。」

「貴方、どうしたの?泣いて」

「優也が気付かないうちに大人になっていることを知ったんだ。」


「下を向くな、前を向けか…」

俺は、親父の言っていた事を気がつけば声に出していた。


選択肢…人生において複雑で無限にある数の中からたった1つしか選べない。結果を知ったから戻って選び直す事は出来ない。だけど、今選んだ選択肢を少しだけ変える方法が一つだけある。

気がつけば俺の足は動き、下を向いていた顔は前を向き俺は家を出た。一歩を踏み出す勇気をくれた人に感謝をしながら。


〜あとがき〜

お久しぶりです。投稿期間が空いてしまい楽しみしていた方には申し訳ないです。もっと早く出せる様に努力します。

あと、こちらの罰告をフォローしてくださっている人数が41人と大変ありがとうございます。これからも頑張りますのでよろしくお願いします‼︎

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