第22.5話 新人と日記
チリリリッッ
目覚まし時計が甲高く音を鳴らしながら時間を知らせる。
カチッ
「もうそんな時間か…」
俺は、重たい瞼を擦り目を開ける。
時刻は、午前7時
今日は土曜日普段なら学校があるが、今日は学校側も休みが欲しいのか分からないが休校なのだ。
「さて…どうするかなぁ〜」
起きたのは良いものの、特にこれと言ってやる事が無い。二度寝をして気持ちよく起きるか?せっかく起きたのだ、勉強でもして次のテストに備えるか?
そんなことを考えていると
プルルル
「…?」
携帯の電話が鳴った。
番号を見るとバイト先の店長からだった、出ないわけにもいかず電話に急いで出た。
「はい…山田です、おはようございます。」
「おはよう。突然で悪いんだけど、山田君今日シフト急遽入れるかな?」
特に何も無いからな…入れるなら入った方がお金も稼げるしそっちにしようかな。
「はい。今日入れます。今からですか?」
「今からでも大丈夫ならお願いしようかな、土曜日なのにごめんね?急に」
「いえ大丈夫です。では、今から行きます。」
ツーツーツ
電話はそこで終わった。
「さて…急いで準備しますか!」
俺は、急いで準備をして家を出てバイト先へと向かった。
「おはようございます。」
「…⁉︎山田君。おはよう。本当にありがとう〜」
『緒方ゆき』左の胸に貼ってある名札を見る。
ここの店長の名前だ。女の人なのだが、所々男ぽっい即面を見せる。俺が凄く尊敬している人だ、俺が働き初めの頃からよくしてもらってる。今じゃ冗談を言ったりする仲だ。
「にしてもそんなに忙しいんですか?オーダーが溜まってるように見えなかったですけど。」
「あぁ、そこまで忙しいわけじゃ無いけど後30分程で新人君が来るんだ、私が教えた方が良いが、料理を作ってたりすると教える時間が中々確保出来なくて、そこで山田君に教えてほしい。」
腕時計を見ると11時30分だった。確かにお昼ご飯を食べにくる人で沢山来るだろうから店長が色々と教えるのは難しい。
「その新人はホールで働く感じですか?」
「あぁ、ホールで働いてもらおうと思って新人君が来たら君に伝える。」
「わかりました。」
「助かる」
制服着に着替え、ホールへと向かい仕事を始める。
ホールの仕事は、メニューの注文、料理を持って行ったり、食べ終わって帰ったお客様の卓上の片付け消毒、受付、お会計。などと色々やっている。
まずは、ホール全体を見て食べ終わっている食器があるか、注文したいお客様がいるかを確認する。
注文する用に各テーブルにボタンが置いてあるのだが、偶に押さないで呼ぶ人もいる為だ。
どうやら、食べ終わって空の食器がかなり多くある為それを回収しに行く。
「食べ終わった食器をお片づけしてもよろしいですか?」
この言葉を言い、食器を回収して厨房へと戻す。この繰り返しだ。
そんな事をしていると12時になっていた。
厨房に食器を渡しに行くと店長から
「新人君今着替えていると思うから、山田君よろしくお願いします。」
「はい。わかりました。」
手を洗い水分をペーパーで拭き取り事務所へと急いで向かった。
事務所にはもう着替え終わった新人君が待っていた。
「待たせてすみません。山田です。」
「今日からお世話になります。椎名です。」
椎名と名乗る人は、男?女?どちらとも取れる中性的な見た目をしていた。今時色々な人がいるのだから不思議なことでは無いが、それでも気になって質問をしてしまう、
「女の子?」
「いえ、男です…」
「そうでしたか…失言でした。」
男ーー?ウッソだろお前ーと言いたくなるほど見た目が女の子ぽっいのだ。
もしネットに動画があがっていたら、100%大炎上していただろう‼︎怖い…怖いよネットの世界…
そう、間違えましたすみませんじゃ今の時代特に性別は、許されない程の出来事なのだ…
今度からは、慎重に考えて発言するようにしよう…
「初めてですか?バイトとかしたりするのって?」
「はい。初めてです。」
「そっか。椎名さんは、俺と同じホールで働いてもらうみたいだから、色々と教えていきます。」
「はい!」
俺たちは、事務所からホールへと向かい、皿の片付け注文の取り方を教えて椎名がやっている所を見守り批評する。
「うん。かなり上手い。次は料理の持ち運びと、テーブルの片付け、会計だよ少しやる事多いから大変だよ。」
「はい。まだまだ大丈夫です。」
そして、持ち運び、片付け、会計全てをこなした椎名と、教え見守っていた俺は、昼から夜の8時まで仕事を休憩時間もとりながら行っていた。
今日の仕事も終わり、二人で着替えて帰ろうとした俺だったが、椎名が何かをペンで書いていた。
「何を書いているんだ?椎名?」
「これは、日記を書いてます。」
「日記?どうしてだ?」
「僕凄く忘れっぽくて何かやってもすぐ忘れちゃうんですよ。
それで、誰かを傷つけたりして必死に伝えても伝わらなくて馬鹿にされていじめられたり。
病院に行って必死に訴えても真面目に見よようとしてくれなくて、毎回適当にあしらわれてしまって、学校に行かない時もあったり
そんな時に、日記を書いておけばいつか見た時に、思い出せるだろって父親が言ってくれて、それからずっと書いてるんですよね。」
「そう…だったのか」
頭の中で懐かしい記憶がフラッシュバックした。
「違う!!俺はだだ…」
「違くない!お前が悪いんだ‼︎まったくめんどくさい事をしやがって、俺の教員生活にヒビが入ったらどうするんだこのガギ!」
「やめて…痛い…」
「一つ言っておくが、お前の話を聴く人は誰一人としていない。誰もお前の事なんて信用してないんだよ…クラスメイトもみんな。
なんだ?そんな顔をして、知らなかったのか?ハハハこれだからお前みたいなガキは…」
「痛い…痛い…………」
「山…山田…山田さん?」
「⁉︎あぁ…」
椎名の呼びかけで我に戻った。
少し悪い夢を見ていたようだ。
「山田さんも日記とかどうですか?」
「日記…日記か…」
俺もいつか、結衣と過ごした日を忘れたりしまうのだろうか…?人間だから、どんなに忘れない!と思っていても、忘れてしまう事は絶対にある。
日記…俺も書いてみようかな。
「そういえば、敬語使わなくて良いよ?多分同い年でしょ?」
「えっと高校1年ですけど、先輩も高校1年ですか?」
「あぁ。」
「じゃあ、お言葉に甘えて…山田先輩…よ、よろしく…」
「お、おう」
照れ隠しなのか、少し顔をニコッとしながらで言う彼を見て俺は、
『やはり男には見えない』
と心の中でそっと呟くのだった…
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