第22話 夏の醍醐味の終わりは呆気ない

聞き馴染みのある声がした俺は、後ろを振り返った。

「ここでもイチャイチャしてる〜‼︎」

「家だけにしとけって前に言わなかったか?」

一歩また一歩二人で手を繋ぎながら歩いてきた親友に俺は驚いた。

「お、お前らも来てたのか?」

「おう!」

「凛ちゃん⁉︎」

「こんにちはかな?時間的には」

クスッと笑いながら結衣に挨拶をした。


女子トークで盛り上がっているのを横目に見ながら俺は、修斗と話していた。

「たまたまだったのか…てっきり後をつけてきたのかと思った。」

「そんなことするわけないだろ?」

「にしても…浅田さんとよく一緒に来たな。少し前までおどおどしてたのに…。」

あ〜と少し髪を掻きながら苦笑いをして

「まぁ色々とな。」

「ふーん」

(今度じっくりと聞かせてもらうとしよう。)

などと、会話を挟んだ俺は提案をした。

「せっかくなら、4人で動かないか?」

俺の提案に3人は

首を縦に振った。


そんなわけで俺含め4人で行動した俺達だったが、正直ありがたかった。

 何かあった時に、先ほどの様に結衣1人がポツンと立って待っていることが防ぎ声を掛けにくくできるからだ。

「あれ…乗ってみたいです。」

と歩きながら指を刺した結衣の方向を見ると…

 最大二人乗りできる浮き輪で滑るスライダーだった。

修斗と浅田さんはいいよーとすぐさまokの返事を出したので俺も

「じゃあ行こうか。」

優しく結衣の耳元で囁いた。

「うん‼︎」

俺達は列に並びそれぞれ話しながら順番を待っていた。


「そろそろだな…大丈夫か結衣?」

「うん…高い所少し怖いけどゆーくんがいるから大丈夫。」

「そうか…」

俺は照れながら返事をした。

「そういや、ペアとかどうする?今のままでいか?」

「まぁ俺はそっちの方がいいけど結衣と浅田さんは?」

「私は、ゆーくんとがいいな。」

「アツアツなお二人だこと。」

「コラ…凛あまりからかうなよ。」

「ごめんな?二人とも照れ屋さんだから少し恥ずかしいんだよ。」

「なッ…ちょっ…。」

修斗と、浅田さんのやり取りを見た俺と結衣は…

『夫婦みたい』

と同じことを言っていた。

『二人がそれを言うなッ!」

と二人から同時にツッコミをされてしまった。

ぷと思わず俺が吹いてしまった。

それを仕切りに残りの3人も笑っていた。


次のお客様どうぞお掛けになってください〜

スタッフさんがそう言い、先にいた修斗&浅田さんペアが先に座っていた。

修斗が後ろで前に浅田さんがいた。

「んじゃ…先行ってくるわ。」

 後ろを向き俺の方を見ながら言った次の瞬間スタッフさんが後ろから優しく浮き輪を押し2人は、流れていった。

キャー

叫び声が微かに聞こえ楽しんでいるのか?と考えていると…

次のお客様お掛けになってください。

またスタッフさんの声が聞こえ俺達は浮き輪に座った。

 もちろん後ろは俺で前に結衣だ。

「しっかり持ち手握ってろよ?そうすれば大丈夫だから。」

俺は、浮き輪の横についている持ち手を握る様にと彼女に伝えた。

「うん…ありがとう」

照れているのか、それともこんなことをするのは初めてなのか、俺には考えてもわからないが小さい声でボソッと言っていた。

 

では、後ろから軽く押していきますね。

 スタッフさんが声を掛けゆっくりと後ろから浮き輪を押して、俺達も流れに乗って滑った。

 押された浮き輪は水の流れによって止まることなく進んでいた。

「結衣〜大丈夫か〜?」

トンネルの中へと入り、暗くて見えなかったが俺の声が反射してトンネルの中で響いていた。

「うん!楽しいねゆーくん」

結衣の声もまた反射して響いていた。

一瞬振り返ってこちらを見た様な気がした。

 俺たちは、流れに乗り左右に揺れながらスライダーを楽しんだ。


「おう!お前ら滑ってる時もラブラブだったなぁ。」

「そうだったか?てか…一体どこから見てたんだよ…。」

「あそこからだよ」

指を刺した方向を見るとそこには、浅田さんもいた。

どうやら出てすぐのところで待って見ていたそうだ。

「次はどうするか…。」

歩きながら色々見ていると浅田さんと親友が口を揃えて言ってきた。

『ジェットコースター!』

「確かに、遊園地とかも少しあるもんなここ。結衣は?」

「私も、行きたい。」

「よし…じゃあ決まりだな。俺も少し行きたかったし。」

 俺達は一旦着替えにまた、更衣室へと向かい洋服に着替えて来た。


「にしても遊園地か…久しぶりだな。」


 小学生以来だろうか…家族で一緒に遊びに行った記憶が微かに残っている。


「ここのジェットコースター結構怖いらしいぜ」

「そんなの冗談だろ?プールがメインのところなのに、遊園地にそこまで力を入れると思わないぞ?」

「ゆーくん…。フラグ立ってるけど大丈夫?」

「いやいや、そこまで怖く無いって。絶対に…」


数分後…

「ゆーくん?大丈夫そう?凄い叫んでたけど。」

「今まで見た事無いぞ?てかそんなに叫べるんだ…ギャアーって」

 出口に向かいながら歩いているが…足取りがおぼつかないぐらいフラフラしながら俺は、出口へと向かっていった。


 ジェットコースターに乗った俺たちだったが、予想以上に加速が速く、勢いを利用した一回転が連続して2回あるとか聞いてない…

ゆっくりと回転しながら走るとか聞いてない…


俺は、人目を気にせず叫んでいた。

「はぁ…はぁ…こんなに凄いとは…思ってなかった…」

「フラグ立てちゃうから…ゆーくん。」

「あんたの知らない一面を知ったわ。あんなに叫べるなんて…」

「おう!俺もだ。俺からしたら、普段物静かなお前が叫んでいるのは面白かったけどな

もう一回行っとくか?」

「バカ…いかねぇーよ。」

 

「ゆーくんあれ乗りたい。」

俺は、息を整えながら結衣が指を刺した方向に顔を上げた。

「空中…ブランコ…?」

「うん!」

ジェットコースター乗った後に乗るのは、と言いたかったが、結衣の顔を見てると断れなくなり、息を整える暇もなく結構乗ることになった。

 

空中ブランコの作りは簡単だ。

一人乗りの椅子に上にでかい円状の機械の上からぶら下がっている鎖2本で支え宙を飛ぶと言ったものだ。

 鎖2本だけで支えるとか怖すぎでしょ…


「それでは、ままなく動き出します。」

スタッフさんのアナウンスを聞いた俺は、

前にいる結衣に話しかけた。

「そろそろだな。これは初めてか?」

「うん。少し怖い。」

緊張しているのか、前を向いたまま返してきた。

「珍しいな…そこまで緊張してる姿初めて見たかも。」

「表に出さないだけで心の中ではいつもドキドキしてるよ…」

俺は顔を赤らめ、返す言葉も無くなっていた。

ゴトン

大きな起動音と共に動き出した空中ブランコは、円状に回りながらゆっくりと宙へと浮いていった。

そして、限界高度まで達すると回転を少し早め今度は程よい風を感じながら、プールと遊園地全体を見渡せる景色を回りながら見ていた。


やがて回転力を弱め、ゆっくりと宙から地へと向かって下がっていく。

「シートベルトを外して出口へと向かいください。またのご利用お待ちしております。」

スタッフさんのアナウンスの声でシートベルトを外し、俺と結衣は出口へと向かった。


「んで、どうだった?空中ブランコって奴は。」

「なかなか面白かったよ。景色も良かった。」

「凛がクレープ食べたいって言うから、クレープ屋行ってもいいか?」

俺と結衣は首を縦に振り、修斗と浅田さんは二人でクレープを買いに行った。

俺達は、先ほどまで二人が座っていたベンチに座り休憩をとっていた。

「にしても、あの二人意外だったよな。」

「凛ちゃんは人見知りだから、てっきり彼氏とか作らないと思ってた。」

「やっぱり…結衣もあの二人付き合ってると思う?」

「うん。」

「俺達よりもラブラブに見える」

「本人達からしたらそうでも無いと思うよ?ほら、私達も意識してないけどよくイチャイチャするな〜とか言われるじゃん」

笑いながら話す彼女の表情は、何故だか少し寂しそうに見えた。

「確かにそうだな。」

「他人から見たらイチャイチャしすぎてる様に見えるんだよきっと、私達本人からしたら普通なのに。」

彼女はいきなり、深呼吸を一回してからもう一度話してきた。


 「じゃあ…私達もあの二人に負けないぐらいイチャイチャ…する?」

俺の顔が一瞬にして赤くなる。

「ッッッ⁉︎バカ…TPOぐらいは弁えろよ。」

耳元で優しく吹きかける様に話しながらサラッとえげつない事を言うこの子…怖い…。

「じゃあ…家ならいいの?」

言われっぱなしは性に合わない少し大胆に出てやる。

「言葉の揚げ足を取るな…。でも…家ならもっとしたいな…。」

俺も結衣の耳元で、虫の鳴き声に負けるぐらいな声量でそっと囁いた。

 彼女は、顔を手で覆い表情が見えなくなっていた。

まぁ…少しぐらいは反撃できたかな。

「待たせたな。」

二人で一緒に歩いてこちらへと向かってきた。

「あぁ…。」

「どうしたんだ?天乃さん顔隠して。」

「ゆいちゃんに、何かした?まさか恥ずかしい事でも…」

殺気オーラ全開で一歩こちらへと近づいてくる浅田さん。

「いやいや…何もしてない。流石に公共の場だぞ?ただ単に普通の会話をしていただけだ。」

「ホント…?」

「本当だ!」

「ゆいちゃん何かあったの?」

「うんん、何も無いただ少しびっくりして。」

「まぁ…ゆいちゃんが何も無いって言うならいいけど。」

なんとか殺気オーラは鎮まった。

「もうこんな時間なのか…」

腕時計で時間を見ると18時30分となっていた。

「修斗と浅田さんはこのあとどうするんだ?俺達は、帰ろうと思ってるけど。」

「んーそうだなもう少し残るよ」

「そうか。じゃあここでお別れだな。」

「おう!じゃあまた始業式の時会おうぜ。天乃さんも。」

「はい。」

「じゃあなー」

「あ…ちょっと優也いいか?」

「…?」

すると修斗は、耳元でボソッと呟いた。

「天乃さんとは、嘘ひとつもない関係か?」

「あぁ一つもないが。どうして急に?」

「いや…わりぃ。やっぱりさっきの話忘れてくれ。」

「そうか…じゃあまたな。」

「おう!」

話をしていた親友の顔は、悲しそうな表情をしていた。


親友と別れた俺たちは荷物を手に取り、家に帰って行った。

特に二人とも門限はないが、あまり遅すぎるのもなぁ〜と事前に話しておいたので、19時前ぐらいに帰るとしようか。と決めていたのだ。

「にしても楽しかったな。また行きたいな。」

「うん…」

彼女の表情は、少し不満がある様な顔をしていた。

「どうした?不満でもあるって顔してるけど。」

「偶には、外に出かけるのもいいけどやっぱり家で二人過ごしてる方がいいなぁーって。

ほら人混みとか多かったでしょ?だから二人だけの時間があまり無いなぁ〜って。」

「だからさっき言っただろ?家でもっとってなんならことあと…今日俺の家親いないから」

また顔を赤らめる彼女

「やっぱりさっきのなし!」

「あはは…冗談だって」

「もう…今日のゆーくん性格少し悪い…」

「いつも俺がやられてる事を返したまでだよ。」


夏というのもあって19時近くなのにまだ明るく本格的な『夏』の到来を感じる。

街灯の光も相まってまだ少し明るい道を俺達は、手を繋いでゆっくりと家へと帰っていった。


…にしても結衣の寂しそうな表情といい、親友のさっきの表情何か関係がありそうだ…

 俺は今日感じた違和感を心の中にそっと忘れないように、しまっておくのだった。


〜あとがき〜

お久しぶりです。久しぶりの投稿となってしまい申し訳ありません‼︎

12月に入り残り今年もわずかとなりました。

皆さんは、やり残した事ありますか?


   彼女が欲しい!!!!!

これが私の今年のやり残した事ですかね…到底残り日数でやり切れるとは思えない目標。あまりにも高すぎる目標。

取り乱しましたが…冗談です笑笑。

まぁ…一つの目標でもあるんですけどね笑。

残り数十日…2022年を最後ぐらいは楽しんで2023年を一緒に迎えましょう‼︎

 それでは、またお会いしましょう〜


 

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