第21話 プールにトラブルはつきもの⁉︎

 偽りの恋から本物の恋がスタートしてから2日が経った。

 今日は、結衣と近くのプールに遊びに行く日である。

「準備出来たの〜?」

 母さんの声が下から聞こえてくる。

 その言葉を聞いた俺は、腕時計で現時刻を確認する。

「もうそんな時間か…」

 急ぎ気味で階段を降りる。

 足音で察したのか母親がリビングから顔を出していた。

「もう行くの?」

「あぁ。」

「気をつけるのよ?男らしいところ見せてきなさい!」

 ベヂィン

「⁉︎」

 その瞬間母親が俺の背中を強く叩いた。

「わかってるよ…じゃあ行ってきます。」

「えぇ、行ってらっしゃい。」

 バタンと扉を閉め俺は、彼女の家へと向かった。



 結衣の家の前で待っていると

ガチャと、ドアを開けてこちらへ向かってくる彼女。その姿は、水着でもないのにスラッとした体型が見える白のワンピースに麦わらの帽子と言った、いかにも夏の服装といった感じだ。

 しかし彼女が着ると可愛さよりも、美しいが勝る。

不思議なことに、ただ単純に美しいより儚さがある。

 きっと1年に数回しか着れない限定的な服装だからか、心臓の鼓動がいつもより速くなった。

「どうしたのじっと見つめて?もしかして…あんまりだった?」

「い、いやそうじゃなくて…」

「そうじゃなくて?」

「いつもより可愛いなって思って。」

「いつもは、可愛くないってこと?」

「いやいや、いつもの方も可愛いけど、ほら…ワンピースとかって夏ぐらいしか着る機会あんまりないだろ?だから見惚れてた。」

「そっか。ごめんね意地悪な質問しちゃって。」

彼女は、笑いながら謝った。

 (はぁ〜やってしまった。言葉選びが駄目だったな…今度修斗に質問してみるか…)

「こんな所で立ってても暑いだけだし行こうか。」

俺は、彼女に手を差し伸べた。

「うん。」

彼女は、言い終わると同時に俺の手を握り歩き始めた。

 夏の輝かしい太陽が俺達のやりとりを聴き微笑んだかの様に輝きを一層増した。

  雲一つもない青く広々とした空を俺は、じっと見つめていた。



「着いたな。」

「うん!人が多いね…。」

「夏休みだし、仕方ないな…。」

プールと言ったが、この近くじゃ有名な所だ。スライダーやら遊園地がある大きいプールで流れるプールが一番の人気なんだとか…。

 人の多さに若干引き気味の俺なのだが、せっかく来たんだ楽しまないと損だろう。

「着替えに行くけど、この場所で待ち合わせな?」

 俺は、更衣室の近くにある中央部に建っている支柱に指を刺した。

見るからにスマホをいじりながら、誰かを待っている人でいっぱいだった。だけど多分俺の方が着替えるの早いと思うから心配ないだろう。

「うん‼︎待っててね?ドキドキさせてあげるから。」

「お、おう…。」

笑顔で言う彼女の顔は太陽の光に当たりいつもより輝きを増していた。

(か、かわいい…。これにプラス水着姿…理性持つの俺⁇)

などと考えていながら更衣室にそれぞれ向かった。


 更衣室に着いた俺は、荷物をカゴに置き着替え始めた。

ジロジロと周りからの視線がこちらへと向く。

「………」

(いくら何でも見られすぎじゃない⁉︎)

自分から言ってしまうが、筋肉はある方だと思う。

結衣と付き合うまでは、暇すぎで筋トレをしていたのだが…気づいたら人並み以上な筋肉質になっていた。今は、軽い筋トレ程度で済ませている。

 俺は、ささっと着替えてフード付きでチャックがついて開け閉めの調整ができるラッシュガードを着て周囲の視線を和らげた。


 やはり…というか俺の方が早かったからか、待ち合わせ場所に結衣は居なかった。

いや、居ない方が安心するかもしれない…これほど人が多いとナンパ目的でくる人も当然いる。

「お、おいあの子凄くないか?」

「…ん?」

支柱に体を預けながら待っていると周囲から声が聞こえ始めた。何故だか分からないが結衣のことだろうなとすぐにわかった。

 少しキョロキョロしながら辺りを見回していたので、気づいた俺が手を振って知らせる。

手を振っている俺を見つけた結衣が、小走りでこちらへと向かってくる。

「ご、ごめん…お待たせ。どうかな?」

俺は、数秒黙ってしまった。

 世間一般的に言ったらビキニ?という奴なのだろうか?胸と下半身のみを隠している格好だ。

色は、派手な色でなく白色…それにヒラヒラが付いていて少し大人っぽいが可愛さもある両方を兼ね備えている。

何より肌が白い…白すぎて逆に怖い。

 体型もくびれのライン等が見えていて、モデルさんよりも体型が綺麗だ。 

 「あ…いや、すごくいいと思う…少しドキトキしてる。」

「本当⁉︎やった〜悩んで選んだ甲斐あった〜」

ぴょんぴょん跳ねながら喜んでいる彼女。

「そ、そろそろ行こうか。」

「そうだね‼︎楽しもうね?」

もう一度彼女の手を繋ぎ歩き始めた。


やはりというか、周囲の視線が物凄く熱い。

カップルと来ている男子が結衣の姿を見ていて、彼女に頭をひっぱ叩かれていた。

 「これ…着とけ。」

 「う…うん。」

俺は、着ていたラッシュガードを彼女に被せチャックを胸元まで締めた。

 すると周りにいた男は、はぁ…とため息をつき残念そうにしていた。

(これで少しは、マシになるはず…)

 俺としては、他の男に結衣の身体をジロジロと見られているのは不愉快だった。

だからこそ自分の着ていたラッシュガードを彼女に着させ、少しでも周囲視線を軽くしようとした。


 「ここでいいか?テント。」

 「そうだね!外より室内の方がいいね。」

何やかんやあったが、テントを建てて自分達の拠点を作った。二人にしては少し大きめだがまぁ大丈夫だろう。

「そういえば最初はどこ行く?」

「うーんと…」

彼女は数秒悩んだ挙句

「流れるプールかな!」

「そうか…なんかいつもより10倍テンション高いな。」

クスッと笑いながら俺は言う。

「だってせっかくのプールだよ?しかも彼氏と来てるんだしテンション上がる以外ないでしょ!」

「そうだな。いつもよりはっちゃけてもバチは当たらないよな。」

「そうそう‼︎ほら行こ?」

「あぁ。行こう!」

 貴重品をロッカーに預けて、流れるプールへと足早で向かった。

「あ〜そういえば浮き輪持ってくるの忘れちゃった。」

「あーそれなら大丈夫だぞ。ここ浮き輪無料で貸し出しててプールサイドとかに置いてあるはずだから。」

「わ⁉︎本当だ…。何で知ってるの?」

「俺も久しぶりにここに来るから、昨日調べてたんだよ。そしたら結構変わっててびっくりした。」

「そうなんだ…。ありがとう。」

少し下に俯きながらぼそっと言葉を発していた。


「うお…冷たッ。」

予想以上に冷たかったので思わず俺は、声を漏らしてしまった。

「結構冷たい?」

「いや…一瞬だけ冷たかったけど今はもう大丈夫だ。よし…もう行けるぞ?」

「うん!」

俺の言葉を合図に彼女は手に持っていた浮き輪を俺に渡した。

 浮き輪は流れに沿って流れようとする。

そこを俺が、紐を握り流れないようにして、そこに結衣が上から乗ろうとする。

 キャッと冷たいのか声を出しながら、ゆっくりと入っていった。

「大丈夫そうだな、手を離すぞ?」

紐から手を離そうと思った瞬間

「も、もう少しだけ手を離さないで欲しいな…」

「そ、そうか…わかった。」

俺は紐をギュッと握る力を強くした。

俺は、紐を握りながら平泳ぎのような形で軽く泳いでいた。

「ゆーくんって泳げるんだね。」

「一応…四泳法ぐらいは泳げる。」

「四泳法…?何それ?」

「クロール、平泳ぎ、背泳ぎ、バタフライの4つの泳ぎ方の事だな。正直、平泳ぎさえ覚えとけば、海とかプールで最悪遠くに流されても、溺れる心配はない。平泳ぎが一番体力を使わずに泳げるし、簡単だから。」

「そうなんだ⁉︎水泳とか習ってたの?」

俺達は流れに体と浮き輪を預けて、話しながらゆっくりと回っていた。

「まぁ…小さい頃に少しだけ。」

「また、知らないゆーくんの事知っちゃった。」

くしゃっと笑いながらこちらを見る結衣。

「ば…バカ急にそんなこと言うとか…反則だろ。」

「え〜ゆーくんの方が反則だよ。こんなにカッコよくなってそれに、その体…。」

顔が赤く照りながら、ボソッと俺と結衣しか聞こえない声量で話した。

「よかった…まぁこれでも少し頑張った方だけどな。」

太陽の光を浴びながらゆっくりと流れに沿って、体が流れていく…。季節が変わる様に。ゆっくりとされど気がつけばあっという間に1周していた。

 「どうする?1周したけど少し水分補給しないか?ちょうど喉も乾いてきたし。」

「そうだね…私もちょうど喉乾いてきたから上がろうか。」

 プールサイドへ上がるための梯子が設置されていたので、人がいないのを確認して俺達は、プールサイドへと上がった。


「何がいい?俺は、サイダーかな。結衣は?」

「私は〜…うーん…麦茶で。」

「そうか…一緒に行くか?すぐそこに自販機があるけど」

「ううん。大丈夫ここで待ってるよ。」

「お、おう。」

(珍しいな、いつもなら一緒に行くんだけど…。)

プールに女子1人嫌な予感しかしないが彼女の意見を尊重し俺は、一人で買いに行った。


俺は、急いで買って帰ったが…

「ねぇねぇ、ちょっとぐらい俺達と遊ぼうよ。」

「す、すみません。人を待っているので。」

「お堅いなぁ〜」

あぁ、やはり…大学生ぽい男3人が結衣のことを囲んでいた。

ラッシュガードで上半身を隠してあるとは言えそれでも、抜群のスタイルが離れていても分かってしまう。

(何とかしてこの場をやり過ごさないとな……ん⁉︎アレを使えば!)

「ごめん。待たせた…。」

俺は、3人にぶつかりながら結衣の間に入った。

「って…誰ですか?」

「あァ?お前こそ誰だよ!」

「俺は、こいつの彼女ですけど。」

と言った瞬間3人笑い始めた。

「ハハッ…こいつが?このヒョロガr」

瞬間腹筋を固めて鍛え上げた筋肉を奴らに見せつけた。

3人は、一瞬言葉を失った。

うるさくなくなった瞬間俺は、畳み掛けた。

「あーの…どうしたんですか?急に笑って…それにアレ…」

と言い俺は、左斜め上にある物に指を刺した。

監視カメラだ。

「結衣…触られたりしなかったか?」

「いや…肩とか色々…」

「防犯カメラに映っているだろうなぁ〜体触ってる所。警察に通報して確認してもらおうか。」

少し演技を入れた。

下手な演技だったが、奴さん達の顔がどんどん青白くなっていった。

「す、、すみませんでした‼︎」

テンプレな謝罪言葉を3人のうちの1人が言い、次の瞬間3人が一目散に走り去ってしまった。

「ふぅ〜。大丈夫か?結衣。」

「う、うん…ありがと。」

俺は、買いに行った飲み物を結衣に渡した。

「あのさ…監視カメラの位置知ってたの?」

「いや…たまたまだよ。どうする?通報しとくか?」

「ううん。大丈夫。」

「そうか…。」

「凄く…かっこよかった…。」

顔を赤くしながら今度は、俺の目を見ながら話した。

(かわいすぎだろ…こんなの心臓に悪い通り越して心肺停止になるぞ⁉︎)

「と、とりあえず…一度テントに戻ろうか。」

彼女は下に俯きながら、俺の手を握った。

一歩また一歩と、ゆっくりされど気がつけばテントに着いていた。


「少し休憩するか?」

「うん‼︎」

軽くタオルで体を拭きテントに座りゴクリと一口サイダーを飲んだ。夏と言えばな、飲み物だ。

結衣の方は、麦茶を飲みふぅ…と息を整えていた。

「ねぇ…ゆーくん。」

「…?」

サイダーを飲みながら、彼女の方へ顔をチラッと向いた。

「サイダー…の、飲みたいな。」

俺は、急いで一口飲み彼女に渡した。

すると、彼女は今度先程飲んでいた麦茶を俺に渡してきた。

「あぁ…ありがとう。」

互いに飲み物を渡して飲み始めた。

「美味しいね、これ。」

「そりゃあ、サイダーだからな美味しいに決まってる。」

彼女は、一瞬顔を膨らませ俺のことを睨んでくるが俺にはさっぱりわからなかった。

「そうじゃなくて、ゆーくんと同じものを共有してるんだよ?」

「…?」

「ゆーくんと同じもの共有してらから、より一層美味しいの。」

「そ、そうなのか?」

「うん。ゆーくんも私が渡した奴飲んでみな?」

「じゃあ、いただきます。」

 ゴクっと一口麦茶を飲んだ。さっぱりした味で喉の中がスッキリする……⁉︎

俺は、結衣が言っていた意味を理解した。

 その麦茶は、いつも飲む麦茶より美味しく感じた。

「確かに、いつものより美味しい。」

「でしょ?不思議だね‼︎」

結衣は、クスクスと笑った。

俺も不思議さに笑った。


そうして周りに人がいるから、二人きりとは言えないものの俺達二人の時間を楽しんだ。

 時間も昼過ぎ頃になり、次はどこに行こうかと俺が考えていると、聞き覚えのある声が聞こえてきた。



〜あとがき〜

お久しぶりです汗……。

前回EX2の投稿日が10月1日。

第21話の投稿日が11月の5日…。

約1ヶ月ぶりです…。

    すいませんでした‼️‼️

季節が変わるのは、お早いですね笑。体調に気をつけてお過ごしください。

 不定期投稿な僕ですが、楽しみにしている方々ありがとうございます。

 フォロー50人突破しました。pvは3600とそんなに!?ってぐらい見てくれています。

ありがとうございます‼️

次の投稿がいつになるか分かりませんが、

    よろしくお願いします‼︎

 

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