第8話 彼氏らしく
あの事件から1週間後
「優也この後時間あるか?」
声を掛けてきたのは親友でもない。担任の先生だった。
名前は岡田蔵元 皆んなからは岡田っちなどと言われている。
「悪いな、急に呼んで。」
「いや、大丈夫です。」
「これを職員室まで運ぶんだが、手伝ってくれないか?」
「まぁいいですよ。」
幸い今日は、天乃さんと一緒に帰る約束をしていない。
俺はノートを両手で持ちながら、ゆっくり歩き始めた。
「それにしても、お前に彼女が出来るとはな。」
「先生も知っているんですね…」
「あぁ、教師達の中でも話題になってるぞ、まぁ俺は少し安心したよ。」
「なんで安心したんですか?」
「お前に彼女が出来ると思ってなかったからな。」
「俺も、頑張ればこれくらい出来ます。先生は俺の事なんだと思ってるんですか?」
「そりゃあ、内気で常に一人でいて、誰とも関わらないオーラ出してる奴としか見てないぞ。」
ぐうの音も出ない…。岡田先生は「それでも…」と言葉を続けた。
「それでも、彼女を守る為に拳を振るうのっていいと思うぞ。もちろん他人に暴力をするのは、いけない事だが…少しは漢を見せたんじゃないのか? それに今は、理解者が少なくてもそのうち皆んな気づいて増えてくるさ。」
「そんなもんなんですか?」
「あぁ、そんなもんだ。と着いたな。」
「そうですね。」
俺は両手に持っていたノートを先生の机にゆっくり置いた。
「悪かったな、手伝ってもらって。」
「いえ、大丈夫です。では、さようなら。」
帰ろうと歩き始めようとした瞬間。
「そういえば、一つ言い忘れてたんだが。」
「なんですか?」
「格好のつけ方間違えんなよ。」
その言葉を聞き俺は学校を後にした。
「格好のつけ方間違えんなよ。か…」
俺は自室で先生が言っていた意味を考えていた。
プルルル
携帯から着信音が鳴っている………相手は修斗のようだ。
「もしもし。」
「おう、悪いな急に電話かけて…。」
少し重い空気が電話越しでも伝わってくる。
「大丈夫だ…やっぱり俺が暴力を振るったことか?」
「あぁ、その事なんだが…」
親友はいつものふざけた感じのトーンではなく、低めのトーンで話した。
「俺は…お前のことすげぇカッコいい奴だと思う。」
「急になんだよ…」
俺の顔が少し熱くなっていくのがわかった。
「好きな奴のために拳を振るう。それすげぇカッコいい事だと思うぞ。」
「そうなのか…?」
あの事件以降、俺は彼女と距離を置いてしまっていた。
他人に暴力を振るってしまった。しかも彼女がいる目の前で…
「なぁ、お前ってさ、いつも上から目線で話してくるよな。」
「…。」
「上から目線やめた方がいいと思うぜ、せめて彼女の前だけでもな。」
「それはわかっているけど……。」
俺は人と関わるのがあまり得意ではない、だから人との関わり方がわからないのだ。
「人関わった事がないから、接し方がわからないとかそんな感じか。」
あぁ、コイツは一体どこまで俺の事を知っているのだろう。
「よく…わかったな…。」
「わかるよ…それぐらい。」
「え?」
なぜか少し怒っている。そんな声だった。
「とにかく、天乃さんの彼氏らしく自分に自信を持て。言いたかったのはそれだけだ。じゃあなまた明日。」
「う、うんまた明日。」
電話が切れた。
「彼氏らしく…か」
瞬間、浅田さんの言葉を思い出した。
「どうしたら彼氏らしくなるかわからない?
髪を短くしたり、口調を変えたりしてみたらどうかしら。」
髪を短くしたり、口調を変えてみたりか…
「格好のつけ方間違えんなよ。」
先生の言葉の意味が少しだけ分かった気がした。
俺はベッドの上で寝ながら、じっと天井を見つめて考えるのだった。
〜あとがき〜
約1週間ぶりの投稿になってしまいました。
すいません。理由は、少し学業の方が忙しくなりまして、1週間ぐらい空いてしまったという事です。
ですが、今日で落ち着いたので、不定期投稿をまた始めていきたいなぁ〜なんて思ってます。
一つ忘れてたんですけど、この1週間の間にPVが1000を突破しました‼︎(圧倒的感謝) 色々と感想を言いたいところですが、長くなりそうなので、また今度という事で。
皆さん読んでくださって本当にありがとうございます。不慣れですがこれからも頑張っていくのでよろしくお願いします‼︎
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