第17話 俺と結衣の違い
結衣と、遊園地に行った日以降バイトと勉強しかやってこなかった男がいるらしい…
「ゆーくんって本当に勉強ばかりだよね、友達と遊びに行かないの?」
「と、とと友達がいない場合どうすれば…」
「あー、そっかー忘れてたよごめんね。」
両方の両親が旅行している為結衣の家にお邪魔して俺は、勉強をしていた。
「大体結衣も、友達とかと遊んだりしてないじゃんか。」
「ゆーくんと一緒にいたいもん…」
小声で喋っているのかなかなか聞き取れない。
「なんて言ったんだ?」
「もう…バカ…大体私の方から家に来ない?って誘った時点で察しがつくでしょ‼︎」
顔を膨らませながら怒っている様だが…怒っている仕草が可愛かった。
「あぁ、悪かったからそんなに怒らないでくれ。」
プイっと顔を横に向けていた。
俺はその光景にデジャブを感じていた。
「そ、そういえば…結衣は、勉強とか大丈夫なのか?」
俺は、慌てて話題を変えることにした。俺の問いかけに対し彼女は、今にも泣きそうな顔で抱きついてきた。
「ゆ〜くんそれが…」
「え?どうしてだ?結衣は、いつもテストでいい順位とっているじゃないか。」
「今やってる範囲は、わかるんだけど…中学の範囲が全くもってわからないんだよ〜。」
「え、えぇ〜よくここまで来れたな…」
正直意外だった。高校の範囲というのは中学で学んだ事を基礎にしており、高校の授業を置いていかれないようにする為には、中学で学んだ事をしっかり生かさなければいかないのだ。
「ま、まぁ夏休みだし、時間はあるから今からでもやっていこう。」
「本当?ありがとう〜」
こうして俺は、毎日結衣の勉強を教えることとなった。 (面倒だけど、なにも予定がないより少しはね…)
「ここの問題は、公式を使うんだよ。」
「それは、わかってるけど公式使っても答えが出ないよ⁉︎」
「ん?計算が間違ってるぞ?」
「え⁉︎どこ?」
「ほら…ここ」
俺が間違っている箇所を人差し指で指摘した瞬間…
「ねぇ…ゆーくん…私もっとゆーくんのこと知りたいな。」
「は、はぁ?なに言って…!?」
俺の人差し指を彼女は、両手で握り始めた。
すると彼女は、俺の耳元で優しくそっと囁き始めた。
「ゆーくんの指って細くて今にも折れそうだけど…ちゃんと生きてるんだ〜って感じるよ。」
「な、なんだそれ?」
「ゆーくんの心ってどうなの?」
そう言った瞬間結衣は、俺の胸に顔をうずめてきた。
「そんなの…して…何がわかるんだよ…。」
「人の心の温かさ…ゆーくんは、凄く冷たい…。」
「そうかよ…。」
「だから私が温かさせてあげるね?」
「…」
『誰かと関わった事がないから、誰かとの関わり方を知らないだけ。』
不意に親友が言った言葉が浮かんできた。
俺は、誰かと関わるのが嫌いだ…またあの時みたいになるのが怖い…だから………距離を置いた。それが良いと思った、だけど…いつの間にか冷たい人間になっていた。今から戻そうにも、もう手遅れじゃないか……。
「ゆーくん。」
「…」
「今度は君の番だよ?」
「一体何をすれば?」
「仕方ないな〜もう今回だけだよ?」
「…!」
その瞬間彼女の優しくて細い手が俺の頭を抱えながら、結衣の胸に気づけば顔がうずめられていた。
「ね?人の心の温かさわかるでしょ。」
「…本当だ。」
今にも消えそうなか細い声で素直な気持ちを伝えた。
「結衣の、心は温かいな…俺よりも…違くて…」
これが…人の温かさ…俺は、今初めてそれを知った。優しいけど力強く感じる温かさ。
これが……。
「…」
「なぁ…俺は…冷たい人間だ。」
「知ってる。」
優しく微笑みながら彼女は、答えた。
「…結衣は…どうして…こんなにも……」
限界だった。彼女の甘い匂いと、優しい声色で話しかけて、更には彼女の、温もりに包み込まれ…俺は、気がつけば寝ていた。
「ふふ、最後まで言ってないのに寝ちゃった…本当に素直じゃないんだから。」
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