第16話 親友だからこそ言えない事がある

終業式の日4人でご飯を食べた時、浅田さんとコンタクトを取ることに成功した。高田修斗

 

日付7月22日

 「悪いな…こんな所で話があるとか言って。」

「だ、大丈夫です。それより話って何ですか?」

初めて浅田さんと話す為ぎこちない会話になってしまう。

「それが…天乃さん関係の話になるんだけど。大丈夫かな。」

「…」

「いや駄目ならいいんだ。」

 やはりというか、想像していた事が起きてしまった。今回の相談については、断られる確率が高いと思ったからだ。

「そ、その…その前に一ついいですか?」

「え?あ、いいよ。」

「貴方は、何故私に相談をしてきたのですが。目的を知りたいです。」

意外な質問だ。浅田さんは、天乃さんの事を大切にしてるだからきっと…試すような質問をしているのだろう。 

 答えなんてここにくる前から決まっている…。

「親友の優也の為…どうしても聞かなきゃいけないことがある。これじゃ駄目か?」

 彼女の方を見ると、少し驚いたような顔をしていた。

「貴方も、私と同じなのですね。」

「それで質問というのは?」

「去年の天乃さんは、人と関わるのが得意ではなくほとんどの人と話してなかった。でも、高校1年から急に人と話したりし始めた。

あまりにもおかしくないか?話すのが苦手だった人がたった1年でここまで話せるようになるのか?1年間で何があったのか教えてほしい。」

すると彼女は、そうですね…と少し間を置いてから話し始めた。

「最初は、天乃さんの事が好きでは、ありませんでした。」

「そ、そうなのか。意外だ。」

「よく言われます。」

クスッと笑った。

「ですが…彼女の怯えてる姿や、努力する姿を見て、自分の考えが愚かだと思ったのです。彼女は、人より何倍も努力しているのだと。」

「で、でも…」

彼女は、涙をポロポロと流し始めた。

「ど、どうした?」

咄嗟に呼びかけるが彼女は、泣きながらも話を続けた。

「天乃っちは…天乃っちは…」

嗚咽を出しながら泣き言葉は、途切れ途切れになり、それでも続けて話した。

「天乃っちは…今の天乃っちは、もうすぐ消えるんだよ…」

「な、なんだよそれ‼︎」

バンと机を叩き声を荒げてしまった為周囲のお客さんからの視線がこちらに集まったがそんな事を気にしている場合じゃない。

「なんで…消えるんだよ。」

「天乃っちは、1年ごとに新しい人格が出来るの。」

「新しい人格が、出来る前の記憶はどうなるんだよ…」

言いづらいのか、重い口をゆっくりと開けた。

「忘れる…全部綺麗に忘れるの。」

「な、なんだよ…それ……。」

浅田さんは、ずっと泣いていた。

「優也は…知ってる訳……ないよな。」

そう問いかけると、彼女は首を縦に振った。

 浅田さんは、何度も天乃さんが消える瞬間を見てきた、という訳なのか…? そう考えた瞬間…

「もう…一人で背負わなくていいんだ。」

彼女が座ってる隣に行き彼女を抱きしめていた。

「何度も見てきたの…消える瞬間と生まれ変わる瞬間…私にはなにも出来なくて。」

「あぁ、辛いよな。」

 クソ…俺はその痛みを知らない…だから、肝心なときに『辛いよな』などという無責任で知ったような言葉しか言えない…。改めて自分の無力さを感じた。


それから何時間経ったのだろうか?

気づけば俺達は店を出て近くの公園でベンチに座っていた。

「だいぶ落ち着いたか?」

「えぇ、ごめんなさい。情けない姿を見せてしまって。」

「いや…いいんだ。それより敬語やめてくれないか?」

「そ、そういうなら。それで質問の答えだけど、きっと人格や記憶が消えたから。」

「そう…そうだったのか。」

質問の答えを天乃さんの秘密を知った俺は、思っている事を伝えた。

「解決法とかないのか?」

「ない訳じゃないわ。ただ…私の推測が混じっているけどいい?」

「あぁ、聞かせてくれ!」

「天乃っちは、全部の記憶がなくなる訳じゃないの。」

「具体的には?」

「天乃っちのお母様やお父様、私、優也

この四人の名前だけは覚えているみたいなの。」

「それでも名前“だけ”なんだな。」

「えぇ、この四人はなんで覚えているのかわからないけど、強くて深い関わりや、彼女にとって忘れられない【思い出】があるからだと私は考えているわ。」

「じゃ、じゃあその事を優也に伝えれば…」

「ダメよ…さっきも言ったけど、あくまで私の推測。確実に治ると言えないわ。」

 俺は、全身の力が抜けるような感覚に陥った。

「そもそも優也君に伝えては駄目よ。」

「ど、どうして。」

「あんなに幸せそうな顔をしているのに言える訳ないじゃない…」


 「親友としてお互いに、隠し事は無しだからな。」

中学の時優也の方から言われた言葉が、

今俺の脳裏によぎった。

「優也…親友だからこそ言えない事があるんだよ…」

俺は、空に向かって呟きながら気がつけば泣いていた。


 〜あとがき〜

まず2000pv突破しました⁉︎

たくさんの方に私の作品を閲覧してもらい嬉しい限りです。フォローしてくださっている方もありがとうございます。正直ここまで多くの方に見てもらえると思っていなかったので、感無量としか言えないです。最初は、500pvぐらい行けばいいな〜なんて思っていたのですが…ここまで来たとは、今でも夢なんじゃないのか?と思っています。

 これからも頑張りますので応援や指摘コメントなどをしてもらえると嬉しいです。

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