第15話 カウントダウンと葛藤
私、天乃結衣、一つ秘密がある。それも大きな秘密が。
「ゆーくん………」
あと何回、同じ景色を見て、笑ったり、泣いたり、怒ったり、”今”の私は出来るのだろうか。
カチカチカチ
時計の進む針に、感情などなくただ針を進めている。人々から与えられた役割を今現在
そして未来でも、その役割は変わらずただ時間を人々に告げる。それが、時計の持つ生まれた意味。
なのに、私は…生まれた意味なんてない。考えても全部忘れてしまう。”違う”私が、今とは違う思いを持って1年間という短い時間を生きる。目標も達成できないまま…中途半端なまま全部さっぱり消えてしまう。
私の秘密は…1年で記憶や人格全てが消えてしまう。
1月1日に今年の全部の記憶、人格が消え、新しい今とは違う私が出来る。
私が、この秘密を知ったのは…日記に全て書いてあった。小学5年生の時に母から突然日記を渡されここに毎日書くようにと言われてきた。
日記には、口調も考え方も価値観もバラバラな、文章だった。1月1日から口調や書き方に変化が起こっていた為私は、自分で考え今の答えに至った。
今の私が、知ったのは2年の人に腕を掴まれた時。
「噂通りだった、という訳だ。」
その一言が気になり、凛ちゃんに聞いてみても誤魔化され、母親にも同じ様に誤魔化されてしまった。だから私は、何冊もある日記帳を全て探した。小さな段ボールに入っていたそれは、どこか開けてはいけないようなオーラを出していた。
「ダメだ!開けたら。」
聞き馴染みのある声までも聞こえた。
「ごめんね。でも私は、もう逃げたくないの知りたいの真実を。」
そう言い、段ボールを開け過去の日記を全て読んだ。
あの時、私が逃げていたら今も知らずに過ごして突然消えてしまっていただろう。
真実を知りたいという気持ちに従って良かったと心から思っている。
だけど、私が知った所で
「ゆーくんにも伝えないと……」
本当に伝えていいのだろうか…きっと今教えてしまえば、彼は、絶望してしまうかもしれない…今の関係が崩れてしまいそうでとても怖い。
今の時間は、23時59分
日付は、7月の21日
1日1日と、段々少なくなっている。そろそろ決めないと。
私は、数秒悩んだあと結論を出した。
今は伝えなくてもいい。伝えて苦しむなら伝えない方がマシだ。
天乃結衣。今はただ、全力で過ごそう1日という短い時間を。私は、そう心の中で決め明日へ向けて寝た。
現時刻0時0分
それにより残り時間が動く。
ガチャと大きく音を出しながら。
記憶、人格消去まで残り5ヶ月と9日
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます