第24.5話Part2  夏恋花火

 昨日浅田さんから誘いのメールが来てウキウキな俺はあまり寝れなかった。

以前プールにも一緒に行った事はある。

その時は勢いで下の名前で呼び捨てにしてしまい、若干気まずい…本人は気づいてない感じだから多分大丈夫だと信じたい。


時計を見る。

「うぉ、もうそんな時間か急がねぇーと」

集合時間まで1時間を切っていた。

ワックスを手につけ髪の毛につける。

全体を立たせてワックスを馴染ませつつ今度は、立たせた髪を振り下ろす。

 コツは、全部を振り下さずに良い感じにしつつ調整をする事。少し束になっている所があったら分ける。最後に髪を固めれば…完成

「よし、出来たな。」

幸い服は早めに着ていたので、後は家を出るだけだった。

 服装は、下は白色の短パン。

上は水色寄りの明るい色のフード付きの半袖

 「莉音〜似合ってるか?」

リビングで携帯をいじっている妹に見てもらう。

「あーそっか今日行くもんね…良いんじゃ無い?」

「そうか、ありがとう。やはり莉音に聞くのが一番だな。」

くしゃっと笑いながら言う。

「キモッ…」

「冷たいなぁ〜」



「スゥーはぁ…」

もう一度洗面台に行き鏡の前で深呼吸をして緊張を落ち着かせる。

正直デートとかは、あんまり経験したことはない。だが、行くのなら最大限楽しもう。

「よしッ!」

パチィン

 覚悟を決め頬を手で叩き気合を入れて家を後にした。



道中祭りに行く人で一杯だった。

集合場所は家から近くの公園だった為20分程早めに着いた。

 携帯の電源を入れないで、反射する自分の顔を見て変じゃ無いか確認する。

「はぁ〜…こんなにドキドキするもんなのかよ…」

独り言を言った直後

 手を振りながらこちらに向かっている女の子を見つけた。

「おいおい…マジかよ…」

下駄特有の音を鳴らしながら向かってくる。

「ごめんね、高田くん待った?」

「俺も今来たところ。」

「そっか…なら良かった。」


「ねぇ…どう?似合ってる?」

そう言い体を回転させ全体を見せる。

「その浴衣凄く似合っていて可愛いよ。」

 赤色を下地にプラスして、青、黄、白、と様々な色を使っていて大人のような印象を受ける。

「そ、そう…」

少し顔が赤くなっていた。

「じゃあ…行こうか浅田さん。」

「うん」

俺と浅田さんは、祭り会場へと歩いて行った。



「屋台いっぱいあるねどれにするか迷う〜」

「どれで迷ってるんだ?」

「え〜と…カキ氷とわたあめ!」

「そうか…ならどっちも買おうぜ。俺わたあめ買うからさ。」

「え?良いの?」

「夏祭りと言えば、かき氷とわたあめは買わねぇーと行った気しねぇーから。ほら行くぞ〜」


俺は、少し躊躇いながらも手を差し出す。

すると浅田さんは、差し出した手を握った。

 浅田さんの手は小さくて少し力を入れただけで折れそうなぐらい細かった。その為か、俺はそっと手を握り屋台へと歩き始めた。


「空いてたね。」

「結構ラッキーだったな、ゆっくり食べながら歩いていこうぜ。」

「うん。」

浅田さんはかき氷を一口食べた。

「美味しい〜やっぱり夏はかき氷だよね?」

「そうだな。そういえばスプーンでわたあめ食えるんじゃね?」

「え?あ…いいの?」

「おう…」

すると浅田さんは、わたあめを食べた。

「うん。こっちも美味しい…」

「そっか。こっちは溶けないからいくらでも食べてどーぞ」

「あ…ありがと…」

「あ…あのさ高田くん…これ…」

「え?お、おう…頂きます…」

顔を赤らめた浅田さんがスプーンに乗っているかき氷を差し出してきた。

 俺も動揺しながらもかき氷を食べた。

「美味しい…です。」


そうして、食べながら歩く浅田さんのスピードに合わせつつ祭り会場を歩いて屋台を見ていた。

 「ん。全部食べ終わったな。」

「うん。」

食べ終わったゴミをゴミ箱に捨てまた歩き出そうとした時だった。

「あれ…したい。」

「型抜きか、良いね行こうか。」

 

型抜き…ピンクの色をした長方形の形をしたやつに、薄く彫ってある型に沿って爪楊枝で少しずつ削っていく遊びだ。

 割れずに綺麗に取れたら、お金が貰えたり、お菓子が貰えたらと屋台によって異なる。


「この屋台は、切り取ったらお金が貰えるのか…どうする?難しいのにする?それとも簡単な奴にする?」

「じゃあ、難しい奴やってみたい。」

「難しい奴な、りょーかい」

当たり前だが、難しければ成功した時の貰える分は多くなる。

「すいません〜じゃあこの、傘の形を二つお願いします。」

「はいよ!これ爪楊枝と傘ね〜頑張って‼︎」

「ありがとうございます。」

 空いている席に座りお互いに型抜きを始めた。

「じゃあやりますか…ってもう集中してる。」

 俺の隣で集中する浅田さんの表情は今まで見た事が無かった。が…可愛いなコンチクショー

まぁそんな事は置いといて俺も少し本気出すか〜


 まずは、爪楊枝で角を切っていく。第一ステップが何気に難しく折れたりすることもザラだ。

角を切ったら、今度は薄く型に沿ってなぞっていく。意味は、堀を深めて取れやすくする為だ。

薄く沿ったら少し力を入れ、部分的に穴を開けていく。後はこれの繰り返し。


そうして10分ぐらい経ち、綺麗な傘の形をした型抜きを成功させた。

 一方浅田さんは、あともう少しと言うところまで来ていた。

爪楊枝に入れる力がほんの少し強くなる緊張しているのだろう。

一つ一つ丁寧にやっていき…そして遂に

「出来た〜やったやった〜見て見て〜」

「凄く綺麗だよ。俺よりも上手いんじゃねーのか?」

出来た喜びではしゃぐ浅田さんの顔は、とても可愛く俺の心臓の鼓動が早くなった。


「すいません〜出来たんですけど」

「おぉ〜二人とも上手いねー。はいこれ成功報酬ね。」

そう言い1000円ずつお互いにゲットした。

 正直これで1000円ならいくらでも取れそうな気がする…

携帯を取り出し、時間を確認する。

「やば…もうちょっとで花火始まる。」

「え?本当?急がないと!」

「あぁ、大丈夫。良いところ知ってるしここから近いから。」

「そうなの?」

「うん。じゃあ行こうか」


そう言い浅田さんの手を取り歩き始めた。


 ここ最近浅田さんとずっといる事が多かった。きっかけは、天乃さんの秘密を話した事それ以来二人で遊んだりすることも多かった。

その都度色んな浅田さんを見つけてきた。

びっくりしてる顔、怒ってる顔、泣いてる顔、嬉しい顔、照れている顔。でもこれらは、全部ほんの一部。

 「もっと知りたい…」

「え…?」

もっと浅田さん事を知りたいと思い始めたのはいつからだろうか…

ちょっぴり素っ気ないけど、素直で気がつけば側にいる。

 小さい時からずっと一緒に居たような懐かしい感じがする。そんな事は無いんだけど、そんな感覚がある。

二人で初めて話し始めた時からだったのかもしれない…友達の事を考えて泣いているあの時の顔は、きっとこれからも忘れはしないだろう。

 

もっともっと知りたい…浅田さんのことを 

    ここで終わりたく無い…


「着いたよ」

「ここって河川敷?」

「そうだ。ここなら邪魔が入らず近くで観れるからそれに川の流れる音も聞こえて好きな場所なんだよここ。」

「…」

なんとも言えない間が生じる。

 あと少しで花火大会が始まる…

心臓の鼓動が一気に早くなった。怖くて言うのをやっぱり辞めようかと思ったりもした…

けど、伝えないとこの想いを…ここで伝えなかったら一生後悔する気がする。

俺は覚悟を決めて息を大きく吸った…


「好きです。俺と付き合ってください…」

言い終わった直後だった…

パァン

 暗い夜の空に天高く舞う物体が破裂音と共に鮮やかな色と空を明るくする光が見え落下して散っていく…

それを皮切りに一斉に花火が上がり始まった。

「はい…私もずっと好きでした。」

花火が沢山上がって綺麗な模様を夜空に浮かんでいた。

「ハハ…良かった…告白って結構緊張するもんなんだな…」

「したこと無かったの?」

「まぁ…うん。」

「そうなんだ。」

「えっと…俺達ってもう恋人同士って事なんだよな?」

「そうだね…そう言う事になるね…」

芝生に座り花火を見る。

 いつもなら少し空いていた空間がこれからは、そんな空間も無くなり近くで互いの顔を見る事が出来る。


 俺は、彼女の右手にそっと触れた。

すると彼女も察したのか自然と手を繋いだ。

繋いだ手はお互いに熱かった。

俺は、繋いだ手を離さないようにギュッと力を少しだけ入れた…………

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