第25話 新学期

「優也起きなさい。新学期早々遅刻するわよ。」

「……うん。」

俺は、布団にくるまりその場から動こうとしなかった…いや動きたくなかったんだ…

 昨日…

一際天高く舞う花火があった。

そして音が鳴ると同時に俺は結衣の唇に…

 そこからの記憶は覚えていない。

「はぁ…学校行くのやだなぁ…」

恋人同士とは言え許可もなくキスを勝手にしてしまい、自責の念に駆られている高校1年生だ…

 とは言いつつも学校には行くしかないので

「結衣に謝るしか無いよなぁ〜…」

うじうじしていていても、もう行く時間なので準備をして家を後にした。


 学校に着き席に座る時結衣の顔がチラッと見えたのだが、やはりと言うかいつもより元気がなかった…

「よっ!優也久しぶりだな…」

「そうだな、修斗はどうだったこの夏休み」

「あ〜そうだな…色んなことがあってさ、大変だったけど楽しかったよ。」

「そうか…良かったじゃん。」

「なんか元気なく無い?」

「あぁ…少し相談したいことがあってな…実は…」

 俺は修斗に、起きた事とやってしまった事を話した。

「おぉ、そう来たか…優也が悪いと思ってるなら謝ったほうがいいと思うぞ?」

「だよなぁ〜…でもありがとう決心ついたわ」

「あのさ…優也…俺…」

「ごめん行ってくる!」

「あ!ちょ…相変わらず動くの速いなぁ〜」


自分のクラスで席に座ってじっとしている

結衣に恐る恐る話しかけた。

「なぁ結衣…昨日はごめん。勝手に許可もなく…そ、その…き、キスして。」

「プッ…ハハ」

「え?え?なんかおかしい事言った?」

 結衣がその場で笑っていた。

「そんなの気にしてたの?」

「まぁ…」

「私全然気にしてないよ?むしろ嬉しかった。」

「そ、そうなのか?それなら良いんだが…」

 「ゆーくんが凄い真剣な顔してるから何事なのかなぁ〜?って思ってたら、昨日の事だったなんて。」

「…」

「それに顔真っ赤だよ?」

「そ、そりゃあ…結構緊張したから」

「やっぱり可愛い」

「う、ウッセェ」

「それよりも高田君の話聞いた?」

「修斗がなんかあったのか?」

「うんうん。言って話聞いてみな?」

「お、おう」


何とか一件落着?か分からないが彼女は気にしてないと知り少しホッとした。

 俺は修斗の方へと戻った。

「んで?どうだった?」

「本人は気にしてなかったと…俺の深読みだったらしい…元気無さそうな顔してたんだけどなぁ〜」

「…」

修斗が顔を下に向けていた。

「修斗大丈夫か?」

「え?あぁ大丈夫。」

「さっき結衣が修斗の話を聞いた方がいいって言われたんだけど…」

「あぁ、本当はもっと早く伝えようと思ったんだけど実は…」

 

修斗から昨日の祭りで起きた出来事を聞いた。


「えええぇぇぇ⁉︎本当?その話!」

「バカ…声デケェーよ」

「痛⁉︎暴力反対〜」

教科書で頭を叩かれた…

「だから…凛と俺付き合ったって言ってるのに何で信じないんだよ…はぁ〜」

「いや、急すぎて…でもまぁ良かったじゃん!てかお前から告白したの初めてじゃね?」

「だから、すげぇ緊張した…心臓破裂するぐらいドックンドックン鳴ってこんな気持ちなのかって思い知ったよ。」

「いい経験になったじゃん!」

くしゃっと笑いながら言った。


「そういえば…もう9月だよな…」

「それがどうかしたのか?」

突然暗い顔をしながら言う修斗に聞き返してしまった。

「もう時間ないんだなぁって思って…ほら行事多いじゃん?修学旅行…は来年だけど、文化祭再来週なんだろ?そう考えたら一年ってあっという間だなって思って。」

「確かにそう聞くと早く感じる。」

一年後もその先もずっと結衣と付き合っているのだろうか…


始業式も終わりHRの時間となり話題はやはり文化祭だった。なんせ今年が初めてだからか、周囲の人達は皆気合いが入っていた。


「では、文化祭の出し物を考えるので皆さん何か案があれば出してください。」

HR委員長が教壇の前に立ち進めていた。


その時…夏休みに結衣と文化祭の出し物について話していた記憶が沸々と蘇っていた。

「結衣〜文化祭の出し物どうしよう〜何かやって欲しい物とかある?」

「やって欲しい物…飲食関係とか?」

「だよなぁ〜食べ物とかシンプルで楽そうだけど、具体的に何が良いとかある?」

「ん〜…パンケーキとか?」

「パンケーキか、いいなそれ」

「じゃあ俺のクラスでパンケーキやっても良いか?」

「うん。良いよ?」


過去の話を思い出した俺は手を挙げ委員長に伝えた。

「委員長、パンケーキとかどうだ?」

「パンケーキですか…確かにいい案ですね。」

「パンケーキだけだとつまらないからカフェ的な物とかは?」

「ふむふむ」

「カフェ……ならメイド喫茶だ!」

「…お、お前なぁ…」

クラスメイトの一人がバカな発言もしつつも

話はトントン拍子で決まっていき最終的には

『メイド風な喫茶店(全員コスプレ)』

と言うカオスな内容になってしまった…


「はぁ〜どうしてこうなるのか…」

「ゆーくんのメイド姿見れるのちょっと楽しみ!」

 「絶対やらねぇーからな?」

「えー見てみたかったのに…」


「なぁ優也メイド“風”喫茶なんだろ?だったら執事って言うのもありなんじゃね?」

「なるほど確かに…いいアイデア!こういう時だけは頭いいよな」

「お前は、いつも一言余計なんだよ!ぐりぐりな刑だこのヤロ〜」

「イデデデ…ちょっ頭痛い…結衣助けて〜」

「無理です!」

「じゃあ浅田さん助けて〜」

「山田さんごめんなさい!」

「酷い⁉︎誰もフォローしてくれない〜」


そうして1分以上頭をぐりぐりされてしまった…

「絶対俺の頭削れた…」

「ゆーくんが悪いなぁ〜こればっかりは」

隣で浅田さんも、うんうんと首を縦に振っていた。

「そういえば、結衣のクラスの出し物とかって決まった?」

「私のクラスはコンセプトカフェ系で今話が進んでるけど、どうなるかはまだ決まってないかなぁ〜」

「なるほどー怖いなぁそれで変なのがモチーフだったら。」


 「凛のクラスは決まったのか?」

「うーんと確か…縁日系だったと思う」

「なるほど…って!もしかして浴衣着るの?絶対ダメだからな?」

「別に気ないわよ……それに、アンタ以外の男に見せて何が楽しいのよ…」

「だよなぁ〜」


 どうやら修斗達の方も出し物の話で盛り上がっているようだった。


 「じゃあみんな集合〜手出して。」

「何するのよ?」

「円陣だよ」

修斗が笑顔でそう言いながら手を出していて、俺達も手を出し輪の形になった。


「じゃあお互いの出し物が上手くいくようにように祈って…頑張るぞ〜!」

「せーの」

【お〜〜〜】



一斉に手を上へ上げそれぞれの想いを乗せた円陣を組んだ。

 「楽しみにしてる結衣。」

「うん。期待して良いよ?その代わり私も期待してるから。」

「おう!」


「おい優也〜飯行くぞ飯〜腹減った〜」

修斗が、俺の肩に手を乗せて言ってきた。

「ハハ…良いよ俺もちょうどお腹空いてきたし。」

互いに肩を組み、笑いながら歩いていく。

「本当…あの二人仲良いわよね。」

「うん。本当そう。」


「結衣達も〜早くー」

「今行く〜ほら凛ちゃんも行くよ!」

私は、強引に凛ちゃんの手を引っ張り連行した。

「まったくアンタは…でも悪くないわね!」



あぁ、こうやって、友達とバカ笑いして、彼女とも一緒に歩きながら過ごす…

 こんな日がいつまでも続けば良いのに…



俺はこの時初めて味わった【青春】って言う甘くも酸っぱくもない、サッパリとした特別な味を、、、、

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

罰ゲームで告白して幼馴染と付き合うことになった ruy_sino @ruy_sino

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ