第20話 何もなかった (?)

「あー、疲れたぁ〜」


【(真っ白に燃え尽きたジョージスタンプ)】


 机に突っ伏して真っ白に燃え尽きている片柳。わざわざLINEでスタンプまで送ってきた。


 という俺も疲れた……。 

 

 片柳がポテチとチョコレートが入った皿を持ってきた時には大丈夫か、と心配になったが意外にも集中していた。これは相当赤点を取りなくないと見た。


 時計を見ると、6時過ぎ。


「結構居座ってしまったようだな……」


 外を見ると暗くなり始めていた。


「片柳。今日の勉強会はこれで終わりにするが寝る前にちょっとは復習しとけよ。この調子で頑張ろうぜ」

「うーん……」


 返事に元気がないが今日は珍しく集中していたし、大丈夫だろう。この調子が続けば赤点は取ることはない。


 教材を直し始めたところで、片柳は俺が帰ると察したようで。


「修吾くん夜ご飯食べていきなよ!」

「それは悪いって」


 正直言うとすごくお腹が減っていて、今すぐ何が食べたいが、片柳の両親が帰ってきて気まずい感じになるといけないし……。

 

「今日はお母さんたち、帰ってこないし遠慮はいらないよ〜」


 俺の心を読み取ったような答えを出してきた。


「いや、居なくてもだな……その」

「?」

「男女が夜遅くまで2人っきりでいるのはいくら友達とはいえ……ダメじゃん?」


 俺だけ意識していたみたいで恥ずかしいがポツポツと述べる。


 片柳は驚いたように固まったと思えば、


「ぷはっはっはっ!」


 笑い出した。


「え、ちょ……俺面白いこと言ったか?」

「ううん。ごめんごめん。修吾くん、意外と乙女な考え方してるなーと思って」

「乙女? いや、普通考えるだろ」

「そうかなー。私は遅くまで家で遊んだり、手料理食べるくらいならまだ友達の範囲内だと思うけどな〜」

「じゃあ友達の範囲外ってなんだよ」


 女の子はというか、片柳はラインが違うかもしれない。


「ん〜、それは……」

「それは……?」

「内緒っ! 教えてあげなーい」

「えー」

 

 何故かはぐらかされた。

 友達の範囲外……友達以上のライン……んー、考えても分からん。てか、個人差あるだろ。


「とにかく、夜ご飯は食べていこっ。修吾くんたくさん私に教えてくれたんだし、絶対お腹空いてるでしょ」


 そんなことない、と誤魔化そうしたがここでタイミング良く俺の腹の虫が鳴る。


 片柳は身体は正直だよ、とニヤニヤした視線を送ってきた。


 夜ご飯を食べたらすぐ帰ればいいか。

 伊織の夜ご飯は……まあアイツもお腹が減れば冷蔵庫を漁って何か食べるだろう。高校生だし、冷凍チャーハンなりで食べることはできる。


「じゃあお言葉に甘えて……夜ご飯ご馳走になります」

「まっかせてよ! 今日はせつちゃん特製の牛すじカレーだから」

「おお!」


 片柳の料理の腕は何回か食べたことあるし、絶品に違いない。


 片柳はほんと、いい友達だなー。






「んんぅ……?」


 ……なんか身体が気怠いな。


 そんな違和感を感じながら目を覚ました。

 部屋は真っ暗。目を擦ればだんだんと暗闇に慣れてきて状況が分かり……。


「片柳……?」


 すやすやと気持ち良さそうに、俺の腕枕で片柳は眠っていた。


「……寝ちまったのか?」


 夜ご飯を食べて、ちょっと眠くなってきたと言ったら、片柳が少し経ったら起こすから横になっていいよ、と言ってくれて……あー、やらかした。


「早く帰らないと……あー、なんか熱っ」


 身体が妙に熱い……。冷房は……消えてない。


 コップに残っていた麦茶を飲み干す。


「ごくごく……ぷはぁ……」


 放置していたため、氷は溶けて生ぬるい。冷えてないからか、喉の渇きもあまり治らない。


「帰りに飲み物買うか。さて、片柳の家から して、片柳にはなにかかけるものを……お、タオルケットがある」


 傍に置いてあったタオルケットを片柳にかける。 

 それから起こさないようにそっと家を出た。外は日中より涼しく


「あれ? ボタン3番目まで開けていただけ?」


 やけにスースーすると思ったら。まあ無意識に暑くて開けたのかも。


 第二ボタンまで閉めて駆け足で家に戻った。






「………ふふ」




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