第24話 「ボクは……嫌われた?」

「俺は……俺は昔のお前が好きだった」


 その瞬間、目の前が真っ黒になった。


 好きだった、ということは……

 

「俺は、俺はずっと伊織にとっていい兄でいたかった」


 ……待って。


「家事はほとんど全部押し付け、小遣いは比べ物にならないほど多く貰ってる……けど、我慢してきた」


 ち、違うの! それは……


「学校じゃ何がしたいのか分からないけど『好感度マイナス15の兄』と広めた。……けど我慢してきた」


 それは、お兄ちゃんの悪い噂を立てれば他の女が近づかなくて……


「あの、お兄ちゃんっ。これには……」

「はぁ〜〜〜〜〜〜〜〜」

「っ」


 大きなため息で声がかき消される。まるで、ボクの話を聞かないようにするために。

 

「俺はいつもお兄ちゃんだからって我慢してきた。いい兄でいようとした。でも……ダメだわ」

「だ、ダメ? お兄ちゃん何言ってるの……?」


 冷や汗が垂れる。


「俺はお前のいい兄にはなれない。伊織のやりたいこと、には答えれない。まさに『好感度マイナス15の兄』だな、はっはっ」


 笑ってる……。


「お兄ちゃん違うの! お兄ちゃんは好感度マイナス15の兄なんかじゃない! お兄ちゃんは、お兄ちゃんはボクのっ」

「ごめん」

「………え?」

「無理だ。俺はお前の兄失格だ」

「っ………」


 今でしてきたことが過ぎる。 

 身勝手な行動。そうだ。ボクは自分の恋を成就させるためにずっと、ずっと……お兄ちゃんを利用した。


 同時に片柳せつの声も流れてきて、


『どんなに自分が優れていようが、お兄ちゃんを大切に、立たせてあげるのも優しくて立派な王子様だと思わない?』


 もしかして、もしかして……ボクは……


「伊織。俺はお前から距離を置く。そうすれば……いや。それが俺たち兄妹の正しい距離だ」


『ふふっ、そんな王子様は嫌われちゃうよ〜』


 ———お兄ちゃんに嫌われた?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る