第22話 ……捕まえた

「……ただ、いまぁ……」

 

 自宅の扉を恐る恐る開ける俺。

 辺りはすっかり暗くなり、周りの家の明かりも少ない。


「って、さすがに寝てるよな……」


 この時間はお互い部屋に戻っての自由時間。リビングは真っ暗だし。


 リビングの明かりをつけ、ソファに座ってひと休みでも……


「っ、え……」

「……んー」


 ソファには伊織が寝ていた。

 お腹がいっぱいになって眠ったのか? 


「食器はどうせ出しっぱなしで……え、片付けられてる」


 意外でつい驚く。


 テーブルは綺麗なまま。洗い場も見てみたが、なにも置かれてない。

 食洗機が乾燥なっているということは、自分で片付けたのだろう。


「ま、まあ1人の時は誰もやってくれないから自分でやるよな」


 と、1人謎の納得をする。


「しかし、どうするかな……」


 ソファで眠ってある伊織に再び目を向ける。

 このままにしてると風邪を引くかもしれないしなぁ……。


『中途半端だと伊織ちゃんのペースに乗せられていつも通りの結果になるから、ちゃんとモチベーション合わせてきてね』


 片柳から言われた言葉。

 この夏、俺は伊織にギャフンと言わせる、分からせる予定だ。

 だから、少しづつ面倒を見てやることも優しくすることもやめていかないといけない。そうしないと、伊織のペースに乗せられてすぐにいつも通りに。冷たくされ、生意気で舐められたまま。


「ま、これが最後ということで……」


 部屋のベッドに連れてったところで翌日はお礼を言われるわけじゃないしな。


 伊織を起こさないように、そっと腕の中に身体を寄せる。そのまま持ち上げればお姫様だっこ状態。


「……っと。成長したなぁ」

 

 小学生の頃はおんぶだったが、高校生の今、体も大きくなったし、ある程度重みを感じるのは当たり前。でも、その重みを成長したなぁと感じるのは兄だからかもしれない。


 階段も静かに上がり、伊織の部屋につく。あとはベッドに寝かせるだけ。


「ふぅ、これでよし……」


 ベッドに寝かせてもなお、伊織は熟睡している様子。このまま部屋を出ようとした時だった。


「……捕まえた」

「え——っ、!?」


 腕が掴まれたと思えば、体が回り、気づけば天井を見上げる形に。そして、寝ていたはずの伊織の顔があった。

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