第27話 3番目とお出かけ
「はぁ、はぁ。お待たせ片柳! 待ったか?」
「全然待ってないよ、今来たところ」
集合場所に走って向かうと既に片柳が来ていた。
「そんなに急がなくても約束の時間の5分前だからまだ時間あるのに」
「そりゃ急ぐだろ……」
「? あ、もしかして私とのデ——」
「女の子を炎天下の中待たせるのは悪い」
午前中バイトがあり、俺の方が集合場所に到着するのが遅いとはいえ、少しでも早く着いて片柳と涼しい場所へ移動することが先に待たせている人への配慮だと思う。
というか最初から涼しい室内を集合場所にすれば良かった。
しかし、ここら辺は飲食店が多い。待ち合わせのためだけに使うのもなぁ。と結局駅前の噴水広場に待ち合わせするのがいいなと考えがまとまる。
「………。はいはい。そういうところも良いですよ〜」
「?」
片柳は表情はにこやかだが、なんだか拗ねてるようか感じがする。てか、さっき何を言いかけたのだろう。
「それじゃ早く涼しいところにでも移動しようぜ」
「そうだね〜。修吾くんバイトお疲れ様。昼ご飯は食べた?」
「いや食ってない。食ったら集合時間に遅れると思って」
「私も食べてないからまずは腹ごしらえと行きますか!」
「美味しかった〜〜」
何食べたい気分か聞いたところ、「お肉!」と即答だったのでステーキとハンバーグが食べられる店にきた。
案外ステーキってぺろっといけるもんだな。片柳はステーキとハンバーグ二つ食ってけど。あの細い身体の一体どこ栄養が……む、ね……。
と、片柳を見ていると今更気づく。
当たり前のことを言うが、今日は学校ではないので制服じゃない。私服だ。
「修吾くんどうしたの?」
「い、いやなんでもない……」
誤魔化したものの、実際はドキドキしていた。
部屋着の時とはまた違った雰囲気。いつものポニーテールを縛っているのシュシュではなく、ヘアアクセサリー。
服は、切れ目が入っていてその隙間から白い肌が見えるカットアウトトップス。そして全体に合うようなカジュアルサンダル。夏っぽさを感じつつも大人っぽさを演出している。
って、なに解説してるんだ俺。
「それにしても急に遊びに誘ってきた時はビックリしたぞ」
『修吾くん明日遊ばない?』
お誘いメッセージがきたのは昨日である。
「あはは、もっと早く連絡しようって思ってたんだけど気づいたら昨日になっててさ」
「ちょうど暇だったからいいんだけどな。今年の夏は割と暇かもしれん」
「それって、伊織ちゃんとの予定がないから?」
「っ」
伊織の名前が出てきてちょっと固まってしまった。
「……ふふ。最近家での王子様はどうなの〜?」
「静かだよ。あんまり話さないし。だけど……俺はやったことに悔いはない」
俺は伊織のことを分かろうとした、いい兄になろうとした。でも変わらずやりたい放題するなら、俺は……
「ふふ、いい顔してるね〜」
「なんか嬉しそうだな片柳」
「そう? でも修吾くんが決心したのは嬉しいかな」
決心……これで、伊織と昔のようないい関係が気づけるならなんでもしてやる。
「伊織ちゃんの件はまた今度にして……今日は思いっきり遊ぶよ! 私修吾くんと遊びに行くの、すっごい楽しみにしてだんだからっ」
そう言って片柳は満面の笑みを見せた。
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