第6話 初心ガール?

「ぐわぁぁぁ! チクショォォォ負けたぁぁ!」

「イェーイ! 逆転一位〜〜!! はい、修吾くん負け〜〜!」

「どんまい修吾。アイスダッシュなっ」


 勝ったからって嬉しそうに言いやがってっ!!


 片柳の家にて。

 俺たち3人はマリオカートで遊んでいた。片柳が言っていたお金を使わないとやらは、こうしてゲームをしたり遊ぶことだったとか。


「マジかよ。これからアイス買いに行くのだりぃ〜」

「最下位の人がそうするって修吾くんが決めたんじゃん。恨むなら自分を恨むんだねっ」

「だってゲームには賭け事があった方がもっと楽しいだろ」


 もう少し簡単な罰ゲームにすれば良かった。


「はぁー、しっかし久々にマリカやったけど意外と盛り上がるなぁ」

「でしょでしょ! 女の子同士だとこういうのってしないから修吾くんたちとできて良かったよ〜」

 

 片柳が満足げな顔で言う。


 そうだよな。その場の付き合いってのもあるし、片柳はどちらかというと体動かしたり、スポーツ観戦やゲームといった男に多い趣味を持っているからより……。


「修吾早くアイス買ってこいよ〜。あーつーい〜」

「くっそっ。ギリギリで勝ったくせに。拓人こんにゃろ〜」

「はいはい! 私も早くアイス食べたいな〜」

「もう一戦して負けた人が代金払おうぜ」


 と、3人でもう一度コントローラを握った時、スマホの着信が鳴った。俺のじゃないと思っていると拓人が立ち上がり、


「あ、姉貴から電話だわ。ちょっと言ってくる」

「いってら〜〜」


 拓人が部屋を出る。

 さて、俺も少し休憩……。


 ずいずい


「ん?」


 さっきまで人1人分くらい空いていた俺と片柳の距離。気づけば肩が触れそうな距離になっていた。


「近くね?」

「き、気のせいだよー。さっきからこの距離だったじゃーん」


 と言いつつ次は肩と肩が触れた。やはり片柳が近づいてきてる。

 

「2人っきりだよ」

「そうだな」


 拓人がいないし、自然とそうなる。

 

「……」

「……」

  

 片柳が何やらもじもじしているので、こちらも話しかけづらいのだが……。


「ど、どうした?」

「え、あ、いや……なんでもないよっ」


 顔を逸らされた。いつもの片柳なからニコニコでスキンシップが激しいというのに。


「ねぇ、修吾くん」

「ん?」

「修吾くんってさ、その、好き?」

「何が?」

「えーと……」


 また片柳がもじもじし始めて会話が止まる。ほんと、どうしたんだ。


「好きって今日のスイートポテトのことか? あれならめっちゃ好きだぞ。凄く美味しかったから」

「え! 本当!? ありがとう〜! 試行錯誤した甲斐があった……って違くて!」

「違うのか? じゃあなんだ」

 

 片柳を見つめると、頬が少し赤くなった。すぅ、はぁ、浅い深呼吸。


「その、ね。修吾くんがわた——」

「姉貴のやつ、ポテトくらいで弟をわざわざ買いに行かせるなよ〜」


 片柳が何か言おうとしたと同時に、ドアが開き、拓人が帰ってきた。


「お帰り拓人」

「ただい……あ、やっべ……」

「……」


 電話を終えた拓人が、何やら片柳がむすっとした表情で見ている。どうしたのだろうか。


「……あ、その俺、姉貴に買い物頼まれたしそろそろ帰るわ」

「まだ1時間しか——」

「じゃあな!!」


 拓人は荷物を纏めて急いで出て行ってしまった。 そんなにお姉さんが怖いのか。

 再び片柳と2人になる。


「じゃあ勉強でもするか」

「えー! なんでさぁー!!」


 片柳があからさまに嫌とばかり声を上げる。


「明日、再テストなんだろ。どーせ夜は疲れて勉強しなくなるんだから今やっといた方がいいだろ」


 教材もあるし、逃げる事はできない。


「遊ぶのはーー?」

「勉強が終わってから。ほら、やらないと俺も帰るぞ」

「えー……ちぇ。部屋に教材取りに行ってくるっ」




 しぶしぶリビングを出て……部屋に戻り、せつは1人こっそり呟く。何やら怪しげな笑みで。


「修吾くんと2人っきり……ふふ、ふふふ」

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