第4話 王子様と3番目
顔が良ければ全てよし。
ただしイケメンに限る。
人は見た目が9割。
外見というのは、初対面での最強の武器。顔や容姿が良いほど好印象を抱かれる。まぁ、顔だけで性格がダメならゴミだけど。
ボクはこの優れた容姿で徳を積んできた。その反面、嫉妬する人もいる。
そんは人たちには、スペックで黙らたせた。成績優秀、運動神経抜群、コミュニケーション能力……そして容姿。文句なしの完璧人。
もはや今じゃボクに陰口さえ叩く存在などいないだろう。
——そう、お兄ちゃん以外は。
生まれた時からずっと一緒で……好きにならずにはいられなかった。しかし、血の繋がった兄妹同士だからって諦めていた。
けれど……ボク自身を使えば方法なんて作れることに気づいた。
間違っても他の女との遊び、ましてやデート代なんかに使わせないように所有しているお金は一円残らず貢がせる。
学校では、『好感度マイナス15の兄』と広めることで、女の子からは距離を置かれ、彼女なんて作らせない。
兄妹から嫌でも容姿とスペックを比べるだろう。
全部ぜーんぶボクのせいで、お兄ちゃんは事がうまくいかない。だからお兄ちゃんはいつだってボクのことで頭がいっぱいだ。
それが好きという感情じゃないのが残念だが……いつか我慢の限界がきて、逆上したお兄ちゃんに襲われて、分からせられ既成事実を作る。
ふふ、ふふふ……あー、早くお兄ちゃんボクを襲ってくれないかなぁ。
洗い物を手伝わなくても、綺麗に完食しているため、怒るに怒れない様子のお兄ちゃん。
ボクが玄関で待っていたと勘違いして、一瞬喜んだお兄ちゃん。
学校で兄妹の差を見せつけられ、悔しそうな顔をするお兄ちゃん。
お兄ちゃんの一つ一つがボクを刺激し、もっともっと惚れさせる。
お兄ちゃん……好きだよ、大好き。だから早くボクのモノに……。
そんなことを考えていると、チャイム音が鳴った。
「……もう午前の授業が終わってしまったか」
お兄ちゃんのことを考えていると、時間があっという間だ。
お兄ちゃんの4限目は確か体育だっけ。バレーで、運動好きなお兄ちゃんならば全力でやるだろう。汗だくのお兄ちゃんを見に行こっ。
女の子たちにはイケメンスマイルではぐらかし、お兄ちゃんの教室を横切ることにする。
ちゃんと胸ポケットにスマホのカメラが外側に向くよう、入れて……よし、これで大丈夫。
2階に上がり教室を覗くも、お兄ちゃんの姿はない。
試合負けちゃって片づけなのかな。困るなぁ……こっちは限られた時間で最高のお兄ちゃんの姿を見にきてるというのに。まぁでも体操服姿を拝めるからいいか。
階段を降ろうとした時、見覚えのある人物とすれ違う。
ポニーテールをゆらゆらと揺らす、女子生徒。3番の美少女と呼ばれる、片柳せつだ。
この女は要注意人物。
お兄ちゃんの友達とかいうポジションにいるものの、あからさまに他の男よりスキンシップや話しかける数が多い。つまり、お兄ちゃんを狙っているメス。
コイツの立ち位置は厄介だ。
明るく、人懐っこい性格。人を魅了するオーラがある。人望がある。
3番目の美少女といえど、下手に仕掛けたらボクの方が多少の火傷を負うかもしれない。
片柳せつは、鼻歌交じりに階段を上がってくる。ボクは階段を降りる。
そしてすれ違う。
今はこの女のことなんてどうでもいいや。早くお兄ちゃんのところへ——
「今日の放課後、修吾が家に来るの楽しみだなぁ〜〜」
「っ」
は? お兄ちゃんが……?
振り向くも、片柳せつは階段を上がり切り、姿は遠のいた。
天然か、わざとか知らないけど……。
「3番目はボクをイラつかせるのが上手だね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます