第37話 追撃 1
「どこに行っていたのよ!!」
いきなりフィリア姫様が僕の姿を見るなり飛んで抱きしめて来た。
「ご、ごめんなさい。騒ぎに巻き込まれてしまっていつの間にか、知らない場所に行ってしまって」
ちょっと苦しい言い訳かな。
「もう! 今度からは私から離れないようにね!」
あれ? 姫様の方が飛び出したんじゃなかったかな?
「それでフィー嬢ちゃん、ロドエル殿下はどうなった?」
「その件は私からご説明いたします」
ドレイル様の質問に応えたのは姫様の側近のレイさんだった。
「先ずは皆様には隣の会議室にお移りいただき、今のプラハロンド王国の現状について説明をいたしたいと思います」
「そうか。ならば行くとしようかの」
グリアノール帝国の前皇帝ドレイル様が、先導して言ってくれたので他の諸国の方々も渋々ながらもそれに従うように移動し始めた。
「ありがとうございます、ドレイル様」
フィリア姫様もそれが分かっていたのか頭をさげお礼を言っていた。
「なに、その方が早く終わると思おうてな。それにプラハロンド国王にも問い質したい事があるしの」
「その国王陛下の事なのですが」
レイさんが言い難そうにしながら話し出した。
「今回のロドエル殿下の報告を受けた後、気分を悪くされ気を失われました。命に別状はございませんが、まともに応対できる状態ではございません」
「なんと、気の弱い男だとは思っておったがその程度とはの。やはり婿殿であって王家の血筋としては弱いか。では奥方は? あの方が王国の直系なのだからレリフェエール王妃が居れば問題なかろう?」
「はい、それは王妃様もご理解されているようでございます」
「そうか。ならそれでよかろう。嬢ちゃんも出席するのだぞ」
「はい、それはもちろん」
そう返事をするフィリア姫様だったが、僕の方に難しい視線を送ってきた。
「ノールちゃんごめんね、一緒に居てといいながら、この話し合いには一緒に居る訳にはいかないから・・・」
「分かってる。大丈夫だよ姫様。僕ここで姫様の事待ってるから」
「うん、ありがとう」
「フィリア様、それでしたら私がノール様についておりますので」
そう言って来たのはイチゴだった。
「そう? うん、お願いするわ」
「はい! 喜んで!」
「? 101515はどこか変わった? 何か表情が豊かになったというか・・・」
「さようですか? 私としては変わっているつもりはございませんが」
少し表情を押さえて返答するイチゴ。
わざと表情を押さえたみたい。
「そう? まあ良いわ。とにかくノールちゃんの事お願いね」
「はい」
深々と頭を下げるイチゴだけど、その下で口元がみっともなく緩んでいるのを僕は見ていた。
そんなに僕と居るのが良いのだろうか?
「それでは、皆様こちらにお越し願います」
レイさんの声に合わせ十数人の人達が動き出す。
しかしそれまで護衛に付いていた魔導人形の彼女達はその場に残り、別の従者が付き従っていた。
さすがに先程の事があって魔導人形を傍に置き続けるのは考えたのだろう。
そして全ての人達が隣の会議室に移動を終えると、この場所には魔導人形達と、一部の王国のメイドや官僚達が残っているだけだった。
そのメイドや官僚も直ぐに行動を起こし、次々にこの場を離れていく。
「ん? ねえイチゴ」
「はい、どうしましたお姉様」
「なんだか視線を感じるんだけど?」
「それは当然ですね」
「え? 何? どうして?」
「お姉様、周りをよくみてください」
イチゴが周囲に視線を回すようにそう言ってきたので、僕もならって見廻してみた。
「う! な、何?! 魔導人形の彼女たちが僕を見ている?」
ミ、ミネルヴァさん! これって!?
『はい。全てノール様の支配下に入っております』
うそ・・・何体居るんだっけ?
『おおよそ50体はおります』
はは、それも各国の主要人物を守るような魔導人形だよね?
『はい』
それって周辺各国の中枢に僕の言葉で動いてくれる彼女達が居るってことだよね?
『はい。世界征服いたしますか?』
・・・・・それはいいって・・・ミネルヴァさん僕にどうしてほしいのかな?
『ノール様の素晴らしさを全魔導人形だけでなく全人類に知らしめて欲しいだけです』
はは、まあそれは置いておいて・・・さて僕達はロドエル殿下を探して罪を償ってもらわないと姫様が困るもんね。
『はい。ではこの場にいる魔導人形に協力を願いましょう』
え?
『聞くがいい! この場に集まる魔導を有する人形よ!』
「?! な、何?!」
「え?」
「なんだ!?」
ミネルヴァさんが全方位に向けて声を発すると、周辺に居た魔導人形のお姉さん達がそれに過剰な反応を見せた。
『ここに居られるのは我ら魔導人形の祖であり、最高峰に居られるノール様です。これから全ての魔導人形の未来をこのお方が導いて下さいます。そのノール様が皆に協力を願っておられます。その願いに応えていただきたい。さすればノール様からお褒めの言葉を掛けていただけます』
・・・・・・・・・・・・・・・え? それだけ? 僕の褒め言葉だけ? それで彼女達が動いてくれるとでも・・・・
「「「「はい! ノールお姉様のため、この身を捧げ全てのお言葉にお応えいたします!」」」」
ちょ、ちょっと! なんで皆片膝をついて頭を下げるの!?
『ノール様が素晴らしいからです』
で、でもこれって物凄く恥ずかしいんですけど!!
『慣れてください』
「またそれ? そんなの簡単に慣れないよ!!」
僕の叫び空しく、皆はそれが掛け声だったかの様に一瞬でその姿を消した。
「でも、会議が終わるまでには帰って来てよ!」
『問題ありません。私が盗聴して終了の予想をし、伝えますので』
何から何までミネルヴァさんは凄かった。
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