第20話 襲撃 2
「姫様! 凄い!」
「そうでしょう。ここが王都の台所、生鮮食品から雑貨、家具、武器、なんでも揃うこの国最大の市場だからね」
形の良い胸をグンと持ち上げ得意気にする姫様。
でも、そう自慢するだけの事はある。色々な肌の色の人、目の色もすれ違う人の数だけ多種多様だ。
しかも人種も様々でヒューマンの他に・・・・あれは?
『ドワーフです』
それほど高くない背にガッシリとした筋肉・・・ん? その向こうに見えるのは・・・
『獣人、狼種族ですね。その直ぐ隣を歩いているのは猫種族に熊種族もいますね』
あの猫種族の耳はモフモフしたい。
あ! あの洗練された佇まいに希薄は美貌の持ち主は・・・
『エルフ族です。珍しい希少種族です』
本当に沢山の種族が一つの場所に居るなんて凄い。
「どう? ノール」
「はい! 凄いですね! こんなに色々な人、種族が居るのですね!」
「そうよ、このプラハロンド王国の都、王都プラハは南には開運都市と隣接し、大陸各地への陸路んお玄関口として発展してきたから、色々な国から人が集まるのよ」
さらに胸を反らし返る姫様。
そんなに胸を突きだしたら・・・・
「フィ、フィー、そ、そんなにだったのか」
「え?」
ほら、ガラン殿下が勘違いし始めだすよ。
「俺は、俺は嬉しいぞ! やっと俺の求愛に応えてくれて!! 遠慮無くその求めに応えよう!!」
と言うが早いか、姫様の胸目掛けてガラン殿下は自らの顔を突進させた。
「?!! ふん!!」
グアシイイイ!!!
見事に姫様の右肘がガラン殿下の顔に炸裂しめり込まさせていた。
その無駄の無い動きに僕は感動し、殿下の目からは涙が溢れだしていた。
「まったく油断も隙もないわね」
でも今のは姫様も挑発しているように見えたけどね。
「ノール、お腹空かない?」
「え、そ、そうですね」
実はお腹は空いてないんだよね。
『魔導人形は空気中の魔素を取り込みエネルギーへと変換しますので、本当は食事をしなくても問題ありません』
なのだそうだ。
でも、食事からでもエネルギーへと変換出来るらしいしから・・・
「はい、お腹空きました!」
「よし! じゃあ屋台で何か食べようか?」
「はい!」
「もちろんガランの奢りでね」
「え?」
「嫌とは言わせないわよ?」
姫様、顔、怖いです。
「わ、分かった!」
さっきまでのダメージから完全復活したガラン殿下。
「別に何もなくても奢るつもりだったんだけど」
ぼそりと呟くガラン殿下の言葉は姫様には聞こえてないようだ。
「ガラン殿下、大丈夫だよ。色々言っているけど本当に嫌いなら此処には絶対来ないから。だから諦めず地道に行こう」
「う、うう、ノール・・・君はなんて優しい女の子なんだ。よし! 頑張るからな! 見ていてくれ!」
「はい! ガラン殿下頑張って!」
「何を頑張るのです?」
姫様が僕とガラン殿下が話しているのに気づいたみたい。
「良いお店を頑張って探して来てと言っていたのです」
「あ? ああ! そうだな。旨そうな店を探してくる!! フィー、ノール、ちょっと待っててくれ!」
そう言い残し、ダッシュで雑踏の中へと消えて行ってしまったガラン殿下。
「あの馬鹿、もう少し落ち着いたら良い男なのに・・・」
姫様、物凄く小さな声で普通の人なら聞こえないのだろうけど、だけどごめんなさい。僕には聞こえているんです。
やっぱり姫様もまんざらじゃないのかも。
そんな事を思っていたらつい顔がほころんでいたようで、
「ノール? 何嬉しそうな顔をしているの?」
「え? ああ! いえ何でもありませんよ?」
「そう?」
これは聞き返さない方が良いよね?
『はい。黙っておかれた方が宜しいかと。それよりご報告があります』
報告? ですか?
『はい。先ほど探知していました周囲の魔導人形ですが、急に動き出しました』
動いた? ガラン殿下の魔導人形も?
『はい。それと他の魔導人形も同様に同じ様な動きをし始めています』
それはおかしくない?
ガラン殿下が動いたからあの2個体の魔導人形が動くのは分かるけど、他数体のっ魔導人形も同じように動き出すなんて・・・他の魔導人形はてっきり姫様に内緒で国王様か王妃様が手配した護衛の魔導人形だと思っていた。
なのに姫様を無視して殿下に合わせて動くなんて・・・・まさか
『はい。その可能性は高いと思われます』
ミネルヴァさんも僕と同じ考えのようだ。
「姫様、僕ちょっとガラン殿下の様子を見てくるね」
「ん? どうしたの?」
「え、いえ、あのガラン殿下に食べ物を探して来てもらうのが心配で」
「・・・・・・・・・そうよね、心配だわ」
「なので、僕がチェックをしに行こうかと」
「・・・・・・・・・なら、私が行くことにするわ」
「え、それは駄目ですよ! 姫様が単独行動だなんて」
「大丈夫よ。前も言ったかもしれないけど、私冒険者にも登録しているし、結構強いのよ。それにノールはこの街の事知らないでしょ?」
「う、うん」
ミネルヴァさんとか探索魔法とかあるから問題ないのだけど、それを言ってしまったら姫様に疑われてしまうかも。
それは今は避けたいな。
「分かりました。僕そこの街路樹下にあるベンチで待ってるね」
「お利口だ。じゃあちょっと見に行ってくるからちゃんと待っているんだよ」
「はい。気を付けて姫様」
「うん、ありがとう。じゃあ」
僕にウインクしながら颯爽と人混みの中に消えて行く姫様。
いちいち格好良いな・・・・と、それよりミネルヴァさん!
『魔導人形の動きはトレースしています』
ありがとう。
まずは一番近くの魔導人形を探ってみようか。
『はい』
シュン・・・・・・・
「あれ? お母さん。今ここに居たお姉さんが消えたよ?」
「何を言ってるの? 人が消える訳がないわよ」
「でも、でも本当に消えたんだよ!」
「ちょっと目を離した隙にこの人混みに紛れたんじゃないの?」
「・・・・・・・そうかなあ?」
「そうよ。さあ早く買い物してお家に帰りましょう」
「・・・うん・・・」
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