第31話 争乱 4
「どうかされましたか? ドレイル様。うかない顔をされておいでですが?」
ドレイル様に話かけて来られたのはブルタブル宰相だった。
「なんだ、ブルタブルか。息災にして居ったか?」
「は、なんとかここまでプラハロンドに仕え続ける事ができております」
「そうか。お主もなかなかに気苦労が絶えないだろう?」
「はぁ、そこはそれなりに・・・」
ねぇ、ミネルヴァさん。
『はい』
この背の高い人ブルタブル宰相だっけ? 最初に会った人だよね?
『はい』
ドレイル様と昔からのお知り合いなのかな?
「ジジ様は私のお爺様、先代のプラハロンド王と親友だったのよ。なんでも若い時に二人して城を出て10年間くらい冒険者活動をしていたとか」
僕が二人を見つめて考え事をしている風に見えたのだろう。
姫様が説明してくれた。
え~! けっこう破天荒な王様達だったのだ。
そう言われればドレイル様って見た目お爺ちゃんだけど、筋肉の付き方とか良さそうだし結構強そうだよね?
『推測、現時点でもガラン殿下、フィリア姫様より瞬間的真っ向勝負でしたらドレイル様の方が圧倒すると思われます』
つまりイチゴより強いかもしれないということか。
すげーおじいちゃんだな。
「で、その頃からブルタブル宰相はお爺様の側近として活躍していたらしいから、当然ジジ様とも長い付き合いみたいよ」
そうなんだ。
ちょっと怖そうな雰囲気があるから近づきたくない感じはあるけど、こうしてドレイル様と話しているのを見るとそうでもない気がする。
「しかし、ブルタブルがあまり有能なせいで、現国王はあまり目立たなくなっておるのではないか?」
「そんな事はございません。最終的な決裁は国王様にお願いしておりますれば」
「レリフェエール王妃の間違いではないか?」
「・・・・・・・はは、その様なことはございません。どちらかと言うとロドエル王太子殿下にご相談する事の方が多いと思います」
「ほう、ロドエルにのう」
ん? ドレイル様何か思うところがあるのだろうか?
何か引っ掛かるもの言いをされているよ。
「そのロドエルじゃが、最近好戦的な考え方をしておらんか?」
「そうですか?」
「このところ魔導人形の購入数が多くなっていると聞くがどうなのじゃ?」
「よくお調べになっておられますね」
「当然じゃ。帝国の情報網を舐めるでないぞ?」
雰囲気があまり良いとは思えない。
何か起こるのだろうか?
「ブルタブル宰相! 何ですかその魔導人形購入と言うのは! 私は何も聞いておりませんよ!」
二人の会話を黙って聞いていた姫様が、ブルタブル宰相に質問をあびせた。
姫様にとっては寝耳に水だったのだろう。
「それはお父様の承認を得られての事ですか?!」
姫様の剣幕は納まらない。
「何を怒っておられるのです? フィリア姫様は王族である事を嫌い、城を出ようとお考えのはず。そんな国の責務を果たされないようなお方に口出ししていただく必要はございません」
「何を勝手な! 私がこの城に残っているだけで王位継承争いの火種になると言っていたのはあなたではないですか!」
「そう・・・せっかく城を出られたというのに、何故生きて戻られたのか・・・・」
ん? 何を言っているの、この人。
まるで姫様に死んで欲しかったみたいな言い方を・・・
「あのまま森で魔導人形に殺されて下さればよろしかったのに・・・」
何だかブルタブル宰相の様子がおかしい。
「ブルタブル何を血迷った事を言い出しておる!!」
ドレイル様もブルタブル宰相の言葉に激怒している。
それは当たり前か。
自国の姫様に対して、家臣としてその身を置く者の物言いとしては有ってはならない言葉だったからだ。
「私はまともですよ? 私は正統にロドエル殿下を王位についていただきたいだけです。現国王は無能過ぎる。早くロドエル殿下に王位についていただかないとこのプラハロンド王国は他国からの侵略に対抗できなくなる・・・・」
何か思いつめた様な顔つきのブルタブル宰相。
「あやつ、何かに憑かれておるのか? まともではないぞ?」
ドレイル様が様子がおかしくなっているブルタブル宰相を怪訝そうに注視している。
「ガラン! 直ぐにここから出るぞ! ロイとマイを呼ぶのじゃ!」
突然、ドレイル様が怒鳴る様にガラン殿下に指示を出された。
その時だった。
「?!!!」
何!? 今の? 急に息苦しい感覚に襲われた!!
『警告! 魔法結界の発動を確認。魔導人形に対する制御抑制結界です!』
何? 魔法結界?
『はい。この結界に取り込まれた魔導人形のうち対抗処置が無い者は、行動に制限が掛けられ、魔導人形の性能差によっては思考制御を乗っ取られる可能性があります』
は? 何それ? じゃあ僕も誰かに操られるっていうの?!
『それは大丈夫です。ノール様ほどの高性能でしたら対抗できます。ただシングル程度ですと中には・・・』
「きゃあぁああ!!」
突然、会場の何処かからか女性の悲鳴が響き、その声に皆の視線が集中した。
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