第17話 王太子と皇太子2
ミネルヴァさん!! これって何?!
『ノール様の性能の一端です。これでも50パーセントしか性能が出ておりません』
いや、だから何でこの人止まって見えるの?
『このロドエル殿下のメイドは魔導人形です。額を見て下さい。少し小さめですがジュエルがあります』
あ、本当だ。青っぽい色の宝石みたいな物が埋め込まれたみたいに在った。
いや、それよりこの状況だよ!
『今、この魔導人形は毎秒20メートルでガラン殿下に向けて進んでいます。それをノール様は2000倍に思考と反応を加速させ認識しておりますので、ノール様にはこの魔導人形が毎秒0.01メートルで近づいている様に見えている為です。実際にはロドエル殿下とガラン殿下の間は20メートル程度しか間がありませんから、この人形の性能でしたら、0.5秒もかからない間にロドエル殿下へ一撃を放っているでしょう』
そう・・・なんだ。
意味は分かるけど・・・そう言えばジーっと見ていると僅かだけど近づいているみたい。
毎秒0.01メートルっていえば、1秒間に1センチしか動かないのか、それは止まって見えてもしかたないけど、よくそんな速度に反応できるなんてミネルヴァさん、さすがだね。
『いえ、ノール様の性能ですので私が凄い訳ではありません。ノール様が凄い性能の魔導人形なのです』
そう言われても実感が湧かないよ?
『少しずつ慣れて下さい』
う、うん。
それで、どうしようか?
『実際はガラン殿下に傷一つ付ける事は不可能です』
どうして?
『ガラン殿下の方をご覧下さい』
僕は改めてガラン殿下の方を振り向く。
その途中でフィリア姫様の表情も見えたけど、目を見開いて殆ど止まっている状態だった。
姫様には僕の動きが見えていないってことだろうな。
ん? ガラン殿下の前に・・・ああ、そうか。
『はい。ガラン殿下のメイドも魔導人形です。咄嗟の状況に対応しガラン殿下の前に立ち現時点で1個体が防御態勢、もう1個体が攻撃態勢に入っています。額のジュエルも一つですが、ロドエル殿下の人形よりも大きく性能が上だと推測できます』
つまり、ガラン殿下に危害は無いということだね。
『はい』
でも、これは問題だろう。
一国の王位継承権を持つ、しかも王太子に即位間近なロドエル殿下が、他国の皇太子殿下に危害を加えようと命令したのだから、ただじゃすまないよ?
『はい。それにこの状況で人形同士が激突すれば、フィリア姫様とノール様に重度な損傷を受ける可能性があります。ただノール様はこのように加速性能がございますから問題なく回避できますが』
姫様は大けがをするということだね。
『はい』
そうするとどうしたら良い?
僕としてはロドエル殿下が斬首になろうと、ガラン殿下が怪我しようがどうでもいいけど、姫様が怪我するのは嫌だし、このままだと王妃様も悲しむ結果になるだろうし・・・
『でしたら、魔導人形が動いていなかった状況にしてしまえばいかがですか?』
そんな事出来るの?
『たぶん』
たぶんってミネルヴァさんにしては曖昧だね?
『何ぶん、初めてのことですので』
なるほど。
で、どうしたら良いの?
『はい。ではノール様、双方の3個体の魔導人形に放つイメージで動くなと力強くイメージしてみて下さい』
そんな事で良いの?
『はい。問題ないはずです』
う~ん、よく分からないけど言われた通りにしてみようか。
僕は大きく息を吸い込んでから双方を横目で見るようなイメージをして、そして強く念じた。
動くな!!
お、何かが放射状に放たれた気がした。
『・・・・成功です。3個体の動作が完全に止まり、全ての意識がノール様へ向けられました』
これで良かったの?
『はい。3個体ともノール様の支配下に置かれました。命令すれば何にも優先して実行されます』
主人である、ガラン殿下やロドエル殿下よりも?
『はい』
こんなので良いの?
無茶苦茶じゃない?
『ノール様のお力です。ただシングルジュエル程度の魔導人形ですから成功しましたが、セカンドジュエルですと同じ効果があるかは不明です』
うん、それが当たり前だろうね。
『それより、だいぶん双方が近づいてしまっていますので対処を早くした方がよろしいかと』
おっと、そうだった。
じゃあ3人共、後ろに戻って待機状態になってください。
僕が先程と同じ様に頭の中で念じた。
それと同時にミネルヴァさん、僕が発動していた思考加速と反応加速を解除した。
「くっそ!! この無礼な輩に一撃を!!」
「お兄様!!」
「!!??」
「「「・・・・・え?」」」
三人の戸惑う変な顔が揃って見えた。
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