僕は最強の魔導人形のようです ~でも出来れば秘密にしてください~

ユウヒ シンジ

第1話 悪夢その1

おかしい・・・・・・


ヨッ・・・・・・・・


ハッ!・・・・・・・・ 


クッ!!・・・・・・・・


くっそぉおおお!! 動かない!

何度力を入れようとしても、自分の体が動く気配が全くない。


どうなっているんだ?


さっきから青空ばかり見ている。

仰向けで寝ているのか?

でもそれって外で寝ているってことだよね?

・・・一体何が?

僕は自分の記憶をたどり数分前の事を思い出す。

・・・たしか、会社からの帰り道、急に大きな音がして物凄い衝撃が・・・・

うまく思い出せないな。

僕はどうなってしまったんだ?

もう一度体を動かそうとしてみるけど視線の位置は変わらない。


くそっ!

せめて目だけでも・・・お! 動いた!


今まで見ていた青空が流れ、少しだけど横が見えた。


ん?

はっきりとは見えないけど・・・たくさんの頭・・・人だかりか。

それに時々赤い光がその人だかりの頭に当たって色が変わって見える。

でも、音はまるっきり聞こえない。

そうとうな人だかりで、蠢いているからそれなりの音とか喋り声が聞こえてもおかしくないのに・・・やっぱり僕の体に異常が起きているとしか思えない。

自分の今の状態は、もしかしたらとってもやばい状態なのでは・・・


ん?


急に視界が陰った。

視線を上に戻すと人の顔が僕の目の前に覆い被さってきているのが見えた。

オジサンだよな?

オレンジ色の服を着て、白いヘルメットを被っている?

この格好、何処かで見た事がある様な?

そんな事を考えていたら、いつの間にかそのオジサンの顔が、僕の顔の直ぐ近くにまで寄って来ているのに気付いた。


このオジサンえらく僕の顔に近づいて来るな?

そう、お互いの鼻の間が拳一個分も離れていない程。

ちょっと流石にオジサンのドアップは勘弁してほしいんですけど・・・


お!?


いきなり僕の顎をオジサンがクイッと軽く持ち上げ、さらに顔を近づけて来た。


ちょ、ちょっと待ってくれ!

この体制、ま、まさか、キ、キス?!

い、嫌だ! 知らないオジサンにファーストキスを奪われるのは嫌だ!!

25才にもなってキスの一つもしていないこの僕が初めてされるキスの相手がオジサンだなんて!


なんの冗談だよ!


僕は必死に拒もうと体を動かすのだけど・・・


くそー!! 体が全く動かない!


必死に動かそうと考えている間にもオジサンの顔が更に近づく。


おい、おい、おい!

ちょっと、ち、近い!


僕は必死に抵抗しようとするけど一向に体は動かない。

その間にもオジサンの唇が僕の唇に着実に向かってくる。


うっわ! だめぇ!! 勘弁してくれ!!!


僕は耐えきれずに目を閉じた。

あ、瞼は動いた?

それなら・・・・・・・・だ、駄目だ他の所は全く動かない。

それでも見えなければ・・・・

そ、そうだ!

オジサンだと思うから抵抗があるんだ!

そ、そうだよ! この人は、女性だ!

そしてオジサンに見えるのは男装趣味の女性だからだ。

なあ~だ、そうか女性か・・・そうだよね?

女性なら大丈夫! そうだ女性なんだ! だから大丈夫! うん! 怖くない。

よ、よし! これなら耐えれる!

いや! 耐えてみせる!

さあ! 来い!

僕は平気だぞ!

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あれ?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・一向に唇に触れる感触がない。


どうしたんだろう? 

あのオジサン、思い止まってくれたのだろうか?

僕は確かめる為に、恐る恐る瞼を開いてみる。

最初は、薄目で・・・・ん? 

なんだか暗いぞ?

確か青空が見えていたはずだから、昼間だった様な・・・

もう少し瞼を開く。

だんだんと視界が戻る。


ここは?

・・・・・・なんだか機械みたいなものが・・・ランプが光って・・点滅している。

ここは何処なんだ?

屋外・・・じゃないよな?

見慣れない機械や器具が並んでいる。

照明が少ないのだろうか?

結構薄暗い・・・・やっぱり何処かの部屋の中みたいだ。

おかしいな?

目をつむってそんなに時間が経ったとは思わないんだけど?

でも、これって移動しているよね?

つまり、それなりに時間が経っていると言うことだよね?

気を失っていたのかな?

その間に運ばれた?

じゃあ何処に?


僕はゆっくりと辺りを見回した。


ん?

何かのモニター?

ピコピコ鳴って何か波みたいな模様が写し出されている。

・・・・あ、これって心電図? いや、心拍モニターとかか?

でもテレビで見たものとは何か違うような・・・・?

あ、人がいる!

白衣かな? 

足首まである長く白い服を着込んだおじさん? がその機械みたいなものが集まるところで何やら色々と触ったり動かしたりして忙しそうにしている・・・あれってもしかしてお医者さん?

白衣着てるし・・・・つまりここは・・・病院か?!

そうか、僕は病院に運ばれたのか・・・

そうだ!!

あのオジサン! あれって救急隊員の人だ!


ごめんなさい! 


あれって救助活動だったんだ!

変態扱いしてごめんなさい!!

取り敢えず心の中で謝っておこう。

それより、今までの経緯からすると、僕は体が動かない程の重体で病院に運ばれたって考えるのが自然だ。

で、こうして意識が戻ったという事は、助かったのか?


「おぉ! ようやく目覚めたか!」


まだ頭の中が整理されていないで虚ろな状態だったのだろう。

いつの間にかさっき見た白衣のおじさん・・先生か、が僕のすぐ傍に来て大声で叫んでいた。


「ようやく、ようやく目覚めたか! 心配したぞ。他の妹機は既に稼働し活動を開始しておるのに、長姉であるナンバーゼロが一番最後に目覚める事になるとは、思わなかったぞ」


何を言っているんだ、このおじさん?

ナンバーゼロ?

僕の事を言っているのか?

僕にはちゃんとした名前も・・・・・あれ? よく思い出せない・・・あれ?

救急隊員のおじさんに人工呼吸・・・う、思い出したら気持ち悪くなってきた。


「ビー! ビー! ビー、機体ナンバーゼロの魔圧の急低下を確認。脳核にノイズが発生」


僕が気持ち悪くなったのと同時に、警報音みたいな音が流れた。

魔圧の急低下? ノイズ?

よく分からないな。


「た、大変だ! また稼働停止になるぞ!」


先生が急に慌てだした。

僕の足元にある色々なスイッチやキーボード? らしきものに何やら打ち込みしてモニターらしきものに映る文字を確認し始めていた。


なんだ? 僕の事なのか?

また意識でも失くしそうなのだろうか?

でも、僕自信はちょっと気持ち悪いだけで気を失うほどじゃないけどな?

だいたい、稼働停止って機械じゃないんだから。


「ふぅ~、数値が正常範囲に戻ったぞ。びっくりさせるんじゃないナンバーゼロ」


やっぱり・・・僕を見てナンバーゼロって言ってる。

もしかしたら身元を証明する物が無かったから取り敢えず番号で言っているのだろうか?

でも確か健康保険証とか持っていた様な?


僕は自分の名前を言おうとしたのだけど・・・


あれ? 僕の名前・・・何だっけ?

あれ? あれ? あれ~・・・・・・・・・・・・やっぱり思い出せない!?

僕は一体・・・たしかあの救急隊員のおじさんに・・・・うっ、気持ち悪・・


「ビー! ビー! ビー、機体名・・・」

「ナンバーゼロ!!」


ああ、もう話が進まない!!


僕は急いで気持ちを落ち着かせて記憶をたどる事に専念した。


・・・・・・・・・・・それでもやっぱり思い出せない。

自分が成人した男性だったという事くらいしか思い出せなかった。

後は、あの人工呼吸の時からしか・・・


「ビー! ビー! 」


もういいって!!

まったく・・・まあ記憶の事は一時的な混乱で思い出せないのかもしれないし、今焦ってもしょうがないんだけど・・・

とにかく一旦落ち着こう。


僕は気持ちを落ち着かせゆっくりともう一度辺りを注意深く観察した。


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