第2話 悪夢その2

ここ・・病院だと思ったけど・・・違うみたいだ。

どちらかと言うとマンガやアニメで見る何かの研究施設とかそんなイメージが近い。

それと、人はこのおじさん先生しかいない。

それによく見るとこのおじさん日本人じゃないみたい。

だって、金髪に目が緑色してるし肌も日本人より白い。

背の高いヒョロっとした感じだけど、彫りが深いし顔も整っている。


外国人? でも何で外国人の先生が僕を?

もの凄い違和感を感じる。

一体何だ? この違和感?


「ふふ、しかし見れば見るほど美しい! 天才魔導士であり、大賢者の称号を持つこのエストラーダ自身が一から作る上げた究極魔導人形シリーズの記念すべき1番目であり最終形態作品! 今までの技術の全てを注ぎ込んだ最高傑作に相応しく、美しい少女の姿に仕上がった。まさしく私の理想! 私の夢が具現化し、この世に舞い降りた天使!」


何だ? この先生?

僕を見上げながらおかしなことを言い始めたぞ?

この先生、頭おかしくないか?

自分の事、魔導士とか大賢者とか、おかしいだろ?

それに美少女? 

男の僕を見て美しいだの少女だの言っている時点で変態妄想狂確定じゃないか。


・・・・・嫌な予感がする。


このままここに居たら何されるか分かったもんじゃない!

なんとかしてこの病院というか施設というか、そこから逃げて警察に通報しなくちゃ。

幸い、怪我とかで動けないという事はないみたいだし、今この部屋には僕とこの変態だけの二人しか居ないようだし、隙をみてこの変態医師を何とかすれば逃げれるはず!

先ずは変態医師が僕から視線を外したら、ここから降り・・・ん? 降りる??

そうか、さっきから感じていた違和感ってこれだ!!

ここが病院で僕が担ぎ込まれたのなら、ベッドに寝ているはずなんだ!

それなら、この変態医師を見上げていなきゃいけないのに、逆に僕がこいつを見下ろしている。

僕はその違和感を確認するべく、自分の周りをもう一度確かめようと見回した。


なんだ? これ?

病院と言えばそう見えなくもないけど、なんだかガラスの様な透明な物で出来た筒状の物が幾つも有るし、それらに繋がる管や線が無数に見える。

その線の先には何やらおかしな計器類やボタンみたいな物も見えるし、何かの研究施設とか実験室と言った方が正解の様な場所だった。

一言で言って、不気味さ200パーセント、だ。

一体、ここは何処なんだ?

それにあのガラスの筒、人が入りそうなほど大きいけど・・・

ん? ちょっと待って?

このガラスの筒って僕の両横にもあるよな・・・あれ? もしかして僕ってこのガラスの筒の中にいないか?


僕は正面を凝視する。

部屋の金属質な壁が見える。

いや、その前にもっと近くに何かが在る。

・・・・そっと手を伸ばす。

直ぐに指に感触伝わる。

鼻の先30センチくらい先に透明なガラスだと思う物が確かに存在している。


やっぱり、そこに見える筒状の物と同じ物だ。

つまり僕はガラスの筒の中に居る?!


「おお! もうそんなに動けるのか?! しかもしなやかな自然な動きだ! まだ基本動作と思考制御の一部しか稼働していないと言うのに・・・やはり姉妹機の可動情報から得られた動作思考データーの蓄積がこの魔導人形の動作を最適化しているのだろう。うん、うん! 良いぞ! 良いぞ!! やはり私の作り出す魔導人形は常に世界の頂点であるべきなのだ!」


何がどうなっている!?

さっぱり分からない!

さっきはオジサンに唇を奪われかけたかと思ったら、今度は変な病院でガラスの筒に入れられて、変な医者にガン見されて訳の分からない事を言いまくられて、これじゃあまるでホルマリンにでも漬けられている動物サンプルみたいじゃないか・・・・・


・・・・サンプル?


もの凄く嫌な考えがまた頭を過ぎってしまった!

もう隙をみて逃げるとかそんな場合じゃない!


「ご、ぼ! ? ごぼ、ぼぼぼ?!」

「おお!? もう声帯を使って意思疎通を試みているのか? なんと素晴らしい成長速度だ!」


声が出ない?

変態医者に文句を言ってやろうと思ったのに声が出ない。

いや出せない状況にいるんだ。

何かに包まれていると言うか、体中に入り込んでいると言うかそれが邪魔をして声が出せれない。

何だこれ? 粘液性の高い水の中の様な?

でも息苦しくない。


「ナンバーゼロよ、今はその溶液が邪魔をして音は伝わらないぞ? もう少しすれば全ての基礎データーの入力が終わるのでそれまで待つんだ」


また訳の分からない事を言っている。

さっきからそのナンバーゼロって何だよ?

僕にはちゃんとした名前が・・・・・・・ってやっぱり無理か!


お、落ち着け~! 落ち着くんだ! 良く思い出せ! ちょっと気が動転してるだけだ。

そうだよ! 自分の名前を忘れるなんて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

お、思い出せない・・・


「それにしても見れば見る程美しい・・・自分で自分を褒めてあげたい。これほど完璧な美少女魔導人形を生み出す事が出来るとは!」


この変態、僕が色々悩んでいるのに、ニタニタした締まりのない笑みをこっちに向けながら訳の分からん事を言うな!

だいたい、その下から覗き込むような姿勢を止めろ! 

何だか恥ずかしいだろ!

・・・・と言いたいのにいくら声を出そうとしても、発声出来ない。

くそ!


「おお、何を怒っているのか分からんが、その顔もまた美しいぞ。うん体のラインも理想的だぞ。しかしこうして見るともう少し胸は小さい方が良かったか? つい妄想に色を附けすぎたか、でもまあ良い。まだ熟しきっていないまでも、しっかりと主張する胸は男のロマン! それにこの股間の出来は最高だな。今すぐ触って感触を確認してみたいぞ!」


こいつ僕の体をなんだと思ってやがるんだ! 

大体、男の僕に胸なんか・・・あれ? なんだこれ? 

この変態医者があまりに変なことを言うので、僕は首を折り自分の胸を確かめてみた。

うん、ある。

今までに見たことの無い物がそこにある。

なに? この双丘は?

僕の思考が止まった。

といっても一瞬だけ。

直ぐに次の事が頭に過った。


股間。


一瞬の動作だった。

自分がこれだけ早く動けるのかと再認識させられるほど一瞬で自分の股間に手を重ねていた。


「こら! 溶液の中でそんなに動いたら、機械に負担があるだろう! それに隠すな! 細部が見えないだろう!!」


何故か変態医者に怒られた。

なんでこいつに怒られなきゃいけない?

それに今はこいつにかまっていられない。

だって無いんだ! あったはずのそれが股間に無いんだ!

代わりに一筋の溝が・・・・

何てことだ!

僕はこの変態医者に気絶している間に性転換手術をされてしまったのか??!

くそ!

この変態、相変わらず下からそのにやけた顔で見上げやがって!


・・・・・・・・・・まてよ?


今、僕素肌に触ったよね?

胸も先端の乳首まで視認できたし、股間も直接触ったよね?

? どいうこと?


その答えは簡単だった。


そうだよ。素っ裸なんだ、僕・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・???!!!


「っがば、ごおぼお! ごぼ、がぁごおぼおおお!!」

「おお、何をそんなに慌てているんだい? ナンバーゼロよ。そうだ今度はお尻をこちらに向けて開いて見せてくれ。排泄機関の出口が上手く再現されているか確認しないと」


な、な! な?! 何! 平静にそんな事をぬかしやがる!!

今まで僕の体をその変態スコープで下からじっくり観察してやがったのか!

しかも、女の子の体になっている僕をだよ!?

だいたい、女の子の体の僕って何なんだよ!!

しかも何だか全体的に体が小さくなってないか?

ただの性転換手術で体を小さくする事なんてできるのか?

・・・・・・・・・駄目だ。

全然、思考が追いつかない・・・・おかしくなりそう・・・・・

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