第46話 妹? 2

「はぁ~」


姫様の大きな溜息。


「姫様、そんなに嫌ですか? 魔導人形を傍に置くのは?」

「ん~別に嫌ってるわけじゃないけど、無表情で無駄な話もしないで傍にずっと一緒に居るのが我慢ならないのよ」

「そうなの?」

「そうよ。だって見てごらんなさい。この魔導人形・・・たち・・・あれ?」

「とても表情豊かですよ?」

「そ、そうね・・・前からこんなに柔らかい表情をしていた?」


ようやくイチゴや他の魔導人形達の表情が変わっている事に気づかれたみたい。

何故か僕の支配下に居る魔導人形はその表情や仕草が急激に進化するようで、イチゴもそうだけど最初の見たイメージとはかなりかけ離れていた。


「ま、まあ、これくらい人間らしい表情が出来るのだったら・・・・でも話しかけても・・・」

「フィリア姫様、ノール様の可愛らしさはプラハロンド一です」


つかさず、イチゴを除いた5体の魔導人形の内、リーダー格の彼女が姫様に話しかけてきた。


「え? ええ、そうね・・・おかしいわね。今までこんな会話みたいな事はしなかったはずなのに・・・」


姫様が今まで見て来た魔導人形との違いが有り過ぎるのか、不思議だと思い始めた?


「・・まあ、そんな事はどうでも良いわ! あなた! よく分かってるじゃない! ノールちゃんの素晴らしさに気付くなんて魔導人形にしておくのは勿体ないわ!」

「はい! ノール様の素晴らしさを語れば、2晩は寝ずに話し込まないと語り尽くせません!」

「分かっているじゃない! あなた! 今晩徹底的にノールちゃんの素晴らしさについて語らいましょう!」

「喜んでお供いたします!」

「じゃあノールちゃん、そう言う事だから!」


何がそう言うことなんだ?


「ノールお姉様、任しておいて下さい! フィリア姫様に負けない様にノールお姉様の魅力を話してきます!」


おーい! どこに行くんだよ。


「バタン!」


「二人して出ていってしまった・・・」

「お姉様。今晩はお二人は徹夜で語り合うでしょうから、こちらにはお戻りになられませんでしょう」


イチゴがさらっとそんな事を言うのだけど・・・


「それって、僕の事を語り合うだけで一晩かけるってことだよね?」

「当たり前です。一晩でも足らないでしょう」


イチゴまでそんな事言っている。

まあ、あまり考えないことにしよっと。

それより・・


「ミネルヴァさん、僕が姫様の義妹になるのはまずくない?」

『・・・まずいでしょう、というより普通では考えられない展開です』

「そうだよね? どこの馬の骨とも判らない女の子をたまたま拾って、ちょっと気が合ってアクシデントに巻き込んでしまったからといって、養女はないよね?」

『そうですね。何か力か思惑が働いたと考えるべきでしょう』

「力か思惑・・・なんだと思う?」

『・・・・・分かりません。が、ノール様をここに押し留めておきたいのではないかと』


押し留める・・・ね。

つまり、いつでも僕の事を監視しておきたいということなのか・・・


『その可能性は高いと思います』


それってあれだよね。

僕が魔導人形で、今回のロドエル殿下の件の中心にいると知っているという事になるけど


『はい、そしてそれを知っているのは・・・』 

「ブルタブル宰相・・・でも、行方不明なんだよね?」

「はい。軍部の方でも行方を追っておりますが、未だに何の手掛かりもつかめていませんね」


僕の質問にイチゴが答えてくれた。

イチゴは、軍部でも中心的な役割を担っているので、その辺りの情報は王族よりも早く察知していた。


「ただ、ブルタブルが今回の黒幕だとして僕をここに軟禁したい理由が分からないし、そんな権限が行方不明の現在、執行可能かというと疑問が残るよね?」

『はい。そう考えると、この城にはブルタブルの協力者がいると思われます』


はあ、頭が痛いよ。


「イチゴ、当面はブルタブルの行方を捜してちょうだい」

「はい! 全力で探索いたします!」

「うん・・・・・・・・・・イチゴ?」

「はい!」

「どうしたの? 行って良いよ?」

「あ、いえ、その・・・・」

「どうしたの?」

「いえ、その、仕事が終わった後ですが今晩はフィリア姫様は戻られないと思いますので、夜、ご一緒させていただく訳にはいけませんか?」


そう言えば、フィリア姫様と、あの子が二晩掛けて僕の事を語り合うとか言って出て行ったけど、本当に帰って来ないつもりなの?

だとしたら、さすがに一人はちょっと寂しいかも・・・


「うん、良いよ。イチゴ今晩一緒に居てくれる?」

「は! はい!! 喜んで!!」

「あ、あのう、私達は・・・」


すると、一緒に来ていた他の魔導人形達も羨ましそうに尋ねてきた。


「お前達は、今晩、ノール姉様、フィリア姫様の寝所、私室周辺の警護です」

「ええ!?」

「ブーブー!」

「職権乱用です!」


イチゴに対して非難の嵐だった。


「上官命令です! 従わなければノール姉様警護の任を解きますよ?」


イチゴの笑みが怖い。


「それではノール姉様! イチゴ、軍務に戻ります! 夜は気を引き締めて、真新しい下着を着用してきますので宜しくお願いします!! 私が戻るまで部屋の警護をお願いね」


言いきったイチゴは、待機している魔導人形の彼女達に警護を委ねると、その勢いのまま部屋を飛び出して行った。


「それでは私達は部屋の周囲の警護に付きます。ノールお姉様には一体傍に付かせていただきます」


残った彼女達も一体を残して部屋の外に出て行った。


・・・・ミネルヴァさん、今、イチゴ、変な事言ってなかった?


『何か?』


いや、下着がどうとか?


『問題ないのでは?』


問題ないの?


『はい。楽しみですね』


・・・・・・・・・すごく不安なのは僕だけなのだろうか?

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